2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ流体システムによる赤血球変形能評価法の開発-病的赤血球の検出と診断-
Project/Area Number |
24700466
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
田地川 勉 関西大学, システム理工学部, 講師 (80351500)
|
Keywords | 赤血球変形能 / 粘弾性特性 / 形状回復時定数 / 糖尿病 / 力学的評価 |
Research Abstract |
本研究では,赤血球が毛細血管サイズのMCを通過したのちの形状回復過程に注目し,形状回復時定数の測定を行ってきた.本年度は糖尿病の中でも,特に重症度が高いにも関わらずその進行がモニタリングし難いと言われている糖尿病性腎症に注目し,糖尿病性腎症と赤血球変形能の関係を調べた.健常者12例,糖尿病患者85例から採血した.赤血球をPBSでHCT=1%に希釈し血球サンプルとして用いた. 測定した時定数の確率密度関数は,全症例で正規分布と比べ最頻値が平均値と比べ小さく,右裾に長い対数正規分布を示した.赤血球の直径も対数正規分布に従う事から,これは体内での加齢に伴う変形能の分布を表していると考えられた.このため形状回復時定数の平均値には幾何平均値を,時定数のばらつきの指標として変動係数を用いることで定量評価を行った. HbA1cと幾何平均値の間には有意な負の相関を認めたが,HbA1cと変動係数との相関は有意ではなかった.この結果よりHbA1cの増加により赤血球内部液体の粘度が増加(粘く)することや,糖尿病患者の赤血球膜のばね定数およびヤング率は健常な赤血球膜のそれよりも高く(硬く)なることが知られているが,血中グルコースによるヘモグロビン溶液の粘度増加よりも,血球膜の硬化の方が形状回復時定数に対して支配的である可能性が示唆された. また腎機能指標としてクレアチニン検査値より算出した推算糸球体濾過量(eGFR)を用い,末梢における微小循環能と変形能としての形状回復時定数の関係を調べた.その結果,eGFRと幾何平均値との相関は有意ではなかったが,変動係数の間には有意な正の相関を認めた.これは,腎不全病態では赤血球寿命が健常者の1/2~1/3に短縮するといわれていることから,赤血球寿命が短縮したことで,血液中で加齢の影響を受けた赤血球が減少したため,時定数のばらつきが小さくなったと考えられる.
|