2012 Fiscal Year Research-status Report
血液自身を潤滑液として非接触回転駆動する長期体外循環血液ポンプに関する研究開発
Project/Area Number |
24700468
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小阪 亮 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (10415680)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人工心臓 / 動圧軸受 / 数値流体解析 / 溶血 / 血液ポンプ / 多円弧軸受 |
Research Abstract |
本課題では、血液自身を潤滑液として非接触浮上回転する長期耐久性と血液適合性に優れた体外循環用動圧浮上遠心血液ポンプを研究開発している。本年度は、ラジアル動圧軸受の数値流体(CFD)解析と安定性評価試験を実施した。 1 動圧軸受のCFD解析ソフトウェアの開発とCFD解析:動圧軸受の発生力を求めるため、潤滑理論における2次元レイノルズ方程式を元にしたCFD解析用ソフトウェアを開発した。本ソフトウェアは、軸受出入口の圧力境界条件を入力することで、軸受内の圧力分布を得ることが出来る。そのため、圧力分布を積分することで、動圧軸受の発生力を得ることが出来る。本ソフトウェアを用いて、多円弧ラジアル動圧軸受を解析した。設計パラメータとして、円弧数と円弧の深さ、軸受隙間を選定した。CFD解析を実施した結果、インペラの安定回転を実現できる設計パラメータは、円弧数4、円弧の深さ100μm、軸受隙間100μmであることがわかった。 2 血液ポンプを用いたインペラの安定性評価試験:CFD解析結果の妥当性を評価するため、ラジアル動圧軸受の軸受隙間を変えた血液ポンプを製作し、インペラの安定性評価計試験を実施した。本試験では、2つのレーザー変位計を用いて、ポンプ内部のインペラの軌跡を非接触で計測した。本試験の結果、インペラの安定性回転を実現できる設計パラメータは、円弧数4、円弧の深さ100μm、軸受隙間90μmであることがわかった。本結果から、CFD解析の妥当性を確認することが出来た。 3 溶血試験: 円弧数4、円弧の深さ100μm、軸受隙間80、90、100μmの3種類の血液ポンプを用いて、牛血を用いた溶血試験を実施した。本試験の結果、軸受隙間90μmのモデルが最も溶血が少ないことがわかった。そのため、最も溶血を改善出来る軸受の設計パラメータの獲得と軸受安定性が溶血に影響を与えることを確認することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「動圧軸受の数値流体解析のソフトウェアの開発と動圧軸受の数値流体解析評価」を目的に、研究計画に従い、数値流体解析のソフトウェアの開発と開発したソフトウェアの妥当性について評価試験を実施した。その結果、インペラを安定させるための多円弧動圧軸受の形状について、数値流体解析で得られた形状と実機を用いて評価試験結果から得られた形状がほぼ同一となった。そのため、本研究で開発した数値流体解析ソフトウェアの開発と動圧軸受の解析評価は計画通りに実施することが出来た。 また、本ソフトウェアを用いて新規に考案した多円弧動圧軸受について、多円弧動圧軸受の最適化設計と、実機を用いて安定性の評価試験を実施した。その結果、多円弧動圧軸受の最適形状において、優れた血液適合性を実現できることがわかった。さらに、インペラの安定性と血液適合性の関係を定量的に明らかにすることが出来た。これらは、研究計画を超えて得られた知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降、スラスト動圧軸受に着目し、スラスト動圧軸受の数値流体解析を行うソフトウェアの開発と、スラスト動圧軸受の数値流体解析を実施する予定である。本ソフトウェアは、ラジアル動圧軸受の数値流体解析と同様に、軸受出入口の圧力境界条件を入力することで、軸受内の圧力分布を得ることが出来る。そのため、圧力分布を積分することで、動圧軸受の発生力を得ることが出来る。スラスト動圧軸受の最適形状は、最も軸受発生力が大きい形状と定義し、本ソフトウェアにて最適形状を求める。そして、本最適形状の妥当性を評価するため、実機により評価試験を実施する予定である。評価試験では、インペラの下面からレーザー変位計を照射し、軸受発生力を浮上距離より推定評価する。 さらに、インペラに作用するインペラ上面の流体力と動圧、磁気力と、インペラ下面の流体力と動圧、自重を釣り合わせ、インペラを最適浮上位置に浮上させることで血液適合性の改善を目指したポンプ形状を求める。本形状を得るため、数値流体解析により、インペラ上面の流体力と動圧、インペラ下面の流体力と動圧を求める。そして、磁気力と自重は実測することで求める。軸受隙間毎に求めた各作用力から、インペラの浮上位置である各作用力の総和がゼロとなる軸受隙間を求める。そして、インペラをポンプ中央で釣り合わせるため、釣り合い位置は、a)動圧を変えるために動圧軸受の軸受形状を調整、b) 磁気力を変えるためにロータ・ステータのスラスト方向の相対位置をスペーサで調整、あるいは、c) 流体力を変えるためにインペラの上下面の面積を変えることで調整する。評価試験として、実機を用いて定常流下でのインペラの浮上位置の計測試験を実施する。そして、拍動流下での浮上安定性の評価試験と、牛血を用いた溶血試験と抗血栓試験を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度にスラスト動圧軸受評価用のインペラを試作予定であったが、数値流体解析のソフトウェアの開発に予定よりも時間がかかったため、平成25年度にインペラを試作予定である。その際、スラスト動圧軸受のみの評価を可能とするように、スラスト動圧軸受を取り外し可能な形状とし、効率的にスラスト動圧軸受を比較評価する予定である。
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Research Products
(19 results)