2012 Fiscal Year Research-status Report
静水圧を利用したハイブリッドコアセルベートによる生体分子分離システムの創成
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24700483
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山元 和哉 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (40347084)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | インテリジェント材料 / コアセルベート / 高分子合成 |
Research Abstract |
特殊な反応場として静水圧条件下でのリビングラジカル重合の適用によるコアセルベート滴を形成する刺激応答性高分子の超高分子量化と、水溶性高分子種や自発的に発熱するナノ粒子との組み合わせによる“ハイブリッドコアセルベート”の構築を目的とした。 H24年度は、静水圧条件下(~10,000気圧)でのリビングラジカル重合の適用として原子移動ラジカル重合(ATRP)による、鎖長・組成比および配列を制御した刺激応答性高分子の調製を検討した。モノマーとしてアクリルアミド誘導体であるN-isopropylacrylamide(NIPAAm)と側鎖に水酸基を有するN-hydroxymethylacrylamide (HMAAm) を選択し、開始剤、触媒、リガンドを最適化することで、静水圧条件下でATRP による刺激応答性高分子を合成した。仕込み比と同程度の組成比を有するpoly(NIPAAm-co-HMAAm)が調製され、分子量は目標とした100万以上は達成できなかったものの、50万程度までの分子量制御が可能であった。得られた共重合体水溶液は下限臨界溶液温度(LCST)以上でコアセルベート滴が観察され、LCST 以下に冷却すると完全に消失する可逆的な挙動を示した。次に静水圧条件下でのコアセルベート内部への拡散効果を期待したsemi-IPNコアセルベートゲルの調製を検討した。水溶性高分子としてポリN-vinylacetamide(polyNVA)を用いてコアセルベート内への侵入(導入)を検討したが、内部への侵入は確認できなかった。そこで架橋したコアセルベートゲル存在下、NVAモノマー、開始剤を溶解させ、静水圧条件下でのNVAの重合を検討した。反応後の重量変化の結果より、コアセルベート滴内部へのpolyNVAの導入と考えられる質量増加が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H24年度は、静水圧条件下(~10,000気圧)での刺激応答性高分子の調製とコアセルベートの形成評価、およびsemi-IPNコアセルベートゲルの調製を検討した。まずモノマーとしてNIPAAmとHMAAm、開始剤にethyl 2-bromoisobutylate、触媒にCuBr 、リガンドにtris(2-dimethyl-aminoethyl)amineを用いて、6,000気圧下でのATRPによる刺激応答性高分子の調製を検討した。得られたpoly(NIPAAm-co-HMAAm)の組成比は仕込み比と同程度であり、共重合体水溶液は温度変化に対して鋭敏かつ可逆的な透過率変化を示した。LCST(透過率 50 %の温度)は共重合体中のHMAAm含有量の増加に伴い高温度側にシフトした。光学顕微鏡によりLCST 以上でコアセルベート滴が観察され、時間経過に伴うコアセルベート滴同士の融合化(粒径の増大)も観察された。また同程度のHMAAm含有量(ca. 10 mol%)である分子量(Mw)が異なる3種類の共重合体(Mw=10万, 16万, 52万)の調製も可能であり、LCSTおよび同一濃度(0.5 w/v%)のLCST以上におけるコアセルベート滴の粒径は、分子量に依存せず、ほぼ同程度であった。次に静水圧条件下でのコアセルベート内部への拡散効果を期待したsemi-IPNコアセルベートゲルの調製を検討した。水溶性高分子としてpolyNVAを用いて検討した結果、明確な内部への侵入は確認できなかった。そこで架橋したコアセルベートゲル存在下、NVA、開始剤を溶解させ、静水圧条件下でNVAの重合を行った。反応後の重量変化より、コアセルベート滴内部へのpolyNVAの導入と考えられる質量増加が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、高分子修飾された金属ナノ粒子とコアセルベートとの複合化、および生体分子-分離システムの構築を検討する。またH24年度の達成目標であった超高分子量化(100万程度)と現在、semi-IPNコアセルベートゲルの最適化も併せて検討する。 まず酸化鉄および金ナノ粒子の表面に刺激応答性高分子を固定化し、H24年度に調製した刺激応答性高分子とのハイブリッドコアセルベートの形成を検討する。ナノ粒子表面には、水中での分散安定性の向上とコアセルベートとの複合化を考慮した高分子を、既に報告している共有結合法およびLbL法等により修飾化する。粒径および分散安定性は、動的光散乱装置で評価し、固定化量や形態観察等は、熱重量分析法や透過型電子顕微鏡により評価する。さらに交流磁場などのエネルギー照射によりナノ粒子の自発的な発熱を利用した誘導加熱によるコアセルベートの形態変化等を評価する。次に、生体分子の熱によるダメージの低減を考慮したハイブリッドコアセルベートによる生体分子-分離システムの構築を検討する。低分子および酵素などのモデル物質の分離・濃縮能や、活性等を評価する。液(水溶液)-液(高分子濃厚液;コアセルベート)間におけるモデル物質の分配挙動を評価し、濃縮されたモデル物質の安定性および活性等の知見を材料化にフィードバックすることで、ハイブリッドコアセルベートによる生体分子-分離システムの構築を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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