2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700484
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
廣田 慶司 東京理科大学, 薬学部, 助教 (50516359)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 投与装置 / 人工呼吸器 / 経気道投与 / 粉末微粒子 |
Research Abstract |
本研究において平成24年度に達成する目標は、マウスのような1回呼吸量がわずか0.2 mLの小動物に対して、エアロゾル化微粒子製剤を吸入させることができるよう、「鉄の肺」を製作することであった。本装置により、マウスの胸腔部を任意の圧力差で減圧させることができるため、肺の膨張を促すことができ、それに従った薬剤の吸入をさせることができる。まず、マウスの胸腔部を完全に収納し、かつ密閉度の高い容器をアクリル材により作製した。さらに、呼吸のようにパルス上の圧力差を発生させることができるように、周期的に圧力差を生じることのできる電子制御回路を設計し、製作した。鉄の肺へ収めたマウスは、麻酔下において呼吸数は低下していたが、1分間に100回程度の呼吸を10分間以上安定して繰り返していた。また、このときに鉄の肺へ発生させた圧力差は10 cmH2Oであったが、麻酔からの覚醒率は100%であったことから、肺に負担の少ない呼吸を鉄の肺により再現できていたと考えられる。 本装置の設計にあたって、ヒトの意識的な呼吸制御方法である深呼吸や息こらえを再現することを目標としていた。これらを達成するために、鉄の肺へ生じさせる圧力差を大きく、または圧力差を持続させることのできる電子制御回路を製作した。その結果、20 cmH2O程度の圧力差による呼吸および1分間に60回程度の低頻度での呼吸を再現できた。 以上のことから、当初の目的に掲げたように任意の呼吸を再現することのできる鉄の肺が完成し、薬剤の吸入実験へと移る準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に達成するべき目標は任意の呼吸を再現できる鉄の肺の製作であった。そのためには、肺にパルス上の圧力変化が生じる呼吸を模倣することが必要不可欠であり、さらにマウスのような小動物においては1分間の呼吸回数が160回程度であることから、瞬間的なパルス制御のできる電子制御回路の設計および製作が必要であった。さらに、ヒトの呼吸制御方法である深呼吸および息こらえを再現できる機能を電子制御回路に組み込む必要があった。 研究実績の概要に示したように、周期的な呼吸を再現し、圧力および呼吸頻度を変動させた呼吸をマウスに於いて再現することができた。従って、本研究は当初に掲げた年度目標を達成しており、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、完成した薬物吸入装置を利用して、マウスへ微粒子製剤の粉末を吸入させる実験を行う。まず、最適な吸入条件を検討するため、安静時のヒトにおいて呼吸によって生じる圧力変化は10~20 cmH2O、吸気と呼気の比(I:E比)が1:2~1:3であることを参考として、肺へ流出入する空気の特性を計測し、肺に負担をかけない吸入に最適な条件を検討する。さらに、呼吸リズムにシンクロナイズドさせた投与条件を見いだすことを目標に掲げ、そのためにマウスの肺へ最も効率よく送達できる呼吸頻度に関しても検討する。 吸入させた微粒子の肺への送達性および分布は、蛍光色素を内包させた粉末微粒子を吸入させた後に、肺を実体蛍光顕微鏡により観察することで評価する。また、適切な条件検討が絞り込まれたら、抗結核薬のリファンピシンを含有した粉末微粒子をした弱毒結核菌のBCGを感染させたマウスに吸入させ、肺におけるBCGの生存率をcolony forming units (CFU)として求め、鉄の肺が吸入装置として妥当であるか検討する。 以上挙げたような検討を行い、マウスへも微粒子粉末を吸入させることのできる画期的な装置を完成させることを、本研究の最大の目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスへの微粒子粉末の送達性を評価するため、研究費は主として実験動物の購入費に充てる。また、微粒子粉末の肺への送達性および分布を検討するために、蛍光色素を含有した微粒子を調製するための費用として使用する。鉄の肺で再現した呼吸を適切に評価するための実験機器や、鉄の肺を最適化するための材料の購入にも使用する予定である。
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