2012 Fiscal Year Research-status Report
生分解性高分子ナノゲルによる革新的細胞核内タンパク質デリバリー技術の創成
Project/Area Number |
24700487
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
長濱 宏治 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 講師 (00551847)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ナノゲル / タンパク質デリバリー / 生分解性高分子 / 細胞核 |
Research Abstract |
平成24年度では、タンパク質デリバリーキャリアを構築するために必要な両親媒性ポリ乳酸グラフト化ヘパリンの合成に先立ち、アルキル鎖で部分疎水化した両親媒性ヘパリンを合成し、それらのナノゲル形成能、ナノゲルの物性、細胞内局在について調べた。その結果、重量平均分子量が17,000のヘパリンに数本から数十本のアルキル鎖を導入した両親媒性ヘパリンは、PBS及び培地中で平均粒子径が90~300 nmの微粒子を形成することを動的光散乱測定により確認した。これらナノ粒子の走査型電子顕微鏡画像より、ナノ粒子はネットワーク状の多孔質体であることが示され、これよりこのナノ粒子はゲル状微粒子(ナノゲル)であると示唆される。一方、アルキル鎖導入本数が高い両親媒性ヘパリンからはコロイド安定性が高いナノゲルが得られたことより、アルキル鎖間の疎水性ドメインがナノゲル構造を保持する架橋点であると示唆される。また、アルキル鎖導入本数を変化させることにより、ナノゲル粒子径の調整は可能であった。これらナノゲルのゼータ電位測定より、ナノゲル表面は大きく負に帯電しており、表面電位はヘパリンへのアルキル鎖導入本数に依存しないことが分かった。また、これらナノゲルをエレクトロポレーションにより数種類のヒト細胞に取り込ませ、その細胞内局在を定量的に調べる実験手法を確立した。 以上より、平成24年度の研究成果は平成25年度に実施するポリ乳酸グラフト化ヘパリンナノゲルの分子設計に指針を与えるものであり、また、種々の細胞実験から得た技術・ノウハウはポリ乳酸グラフト化ヘパリンナノゲルの細胞内導入量および細胞内局在を定量的に評価するために有用である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では、ポリ乳酸グラフト化ヘパリンナノゲルの合成、物性評価、タンパク質内包特性評価、ナオゲルの細胞毒性評価の実施を計画していた。実際には、上記のとおり、まずはアルキル鎖グラフト化ヘパリンナノゲルを合成し、その物性評価、細胞毒性評価、細胞内取り込み評価、細胞内局在評価を行った。当初合成する計画であったポリ乳酸グラフト化ヘパリンナノゲルではなく、別の組成を有するナノゲルで先行実験を行っているが、それを用いて計画していた以上に研究が進展している。この先行実験で得た知見、実験手技、解析技法は追って合成するポリ乳酸グラフト化ヘパリンナノゲルの評価にも適用できる。以上、年度をまたいで、研究の進行順序は計画とは多少変わったものの、本研究課題が2年間で完遂する計画であることを考えれば、平成24年度では概ね順調に研究計画が進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、先行しているアルキル鎖グラフト化ヘパリンナノゲルのタンパク質内包・放出特性評価(in vitro実験、in cell実験)に加えて、当初より計画していたポリ乳酸グラフト化ヘパリンナノゲルの合成、物性評価、タンパク質内包・放出特性評価、細胞毒性評価、細胞取り込み特性評価、細胞内局在評価を実施し、新規な細胞核内タンパク質デリバリー技術の確立を目指す。一方、これらの計画を進めていく上で、平成24年度で得た知見や実験手技が活用できるため、停滞や遅れなく平成25年度の研究計画を推進できると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、前述のように分子設計および研究の進行順序に一部変更が生じたため、研究費に未使用額が生じたが、総じて2年間の研究計画に変更はない。したがって、平成25年度では、当初の計画に沿った研究費に平成24年度に生じた未使用額を加えた研究費を以下の用途に使用する。平成25年度研究費の大部分を、ポリ乳酸グラフト化ヘパリンナノゲルの合成用試薬、ナノゲルへのタンパク質内包実験用試薬、各種細胞実験用試薬など消耗品の購入に充てる。また、得られた成果を国内外の学会で発表するための旅費、そして成果を論文として学術雑誌に掲載するための論文校正費や投稿費としても一部使用する。
|
Research Products
(4 results)