2013 Fiscal Year Research-status Report
生分解性高分子ナノゲルによる革新的細胞核内タンパク質デリバリー技術の創成
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24700487
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
長濱 宏治 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 講師 (00551847)
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Keywords | ナノゲル / 生分解性高分子 / 自己組織化 / ドラッグデリバリー / 核膜孔 |
Research Abstract |
平成25年度では、芳香族性もしくは脂肪族性の疎水性基で部分疎水化した両親媒性ヘパリンを複数種類合成し、それらの疎水性相互作用に基づく自己組織化によって水中でナノゲルを形成させ、ナノゲルの安定性(会合体形成濃度)、ナノゲルサイズ、表面電荷について調べた。また、エレクトロポレーションによりナノゲルをHeLa細胞の細胞質内に導入し、核内移行性について調べた。その結果、重量平均分子量が17,000のヘパリンに数本から数十本の芳香族性疎水性基を導入したナノゲルは、平均粒子径が100nm程度で表面が負に帯電しており、細胞質内に導入されたのち、15分後には核内に移行することがわかった。一方、脂肪族性疎水性基で疎水化して得られたヘパリンナノゲル(上記の芳香族性疎水化ヘパリンナノゲルと同程度のサイズおよび表面電荷を有する)では、細胞質から核内への移行は見られなかったことより、ナノゲルの核膜孔通過には芳香族分子の存在が必要であることが示唆される。 ナノゲルの核膜孔通過特性を規定する要因に関するさらなる情報を得るため、芳香族性疎水化ヘパリンナノゲルと脂肪族性疎水化ヘパリンナノゲルで物性の差異を調べたところ、脂肪族性疎水化ヘパリンナノゲルでは架橋点が静的であるのに対して、芳香族性疎水化ヘパリンナノゲルの架橋点は動的であることが分かった。また、両ナノゲルで機械的強度が大きく異なることが分かった。以上より、ナノゲル架橋点の動的性質およびナノゲルの機械的強度が核膜孔通過特性を左右しうる重要な因子であると示唆される。これらの知見は、次年度に実施する核膜孔通過能を有するナノゲルの設計指針を構築するうえで有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究により、核内移行性を有するナノゲルの開発には成功しているものの、核内移行性のメカニズムに関しては未解明である。平成25年度にサイズ・形状・表面電荷が異なる芳香族性疎水化ヘパリンナノゲルおよび脂肪族性疎水化ヘパリンナノゲルの細胞核内移行性を評価し、それらの相関を調べることにより核膜孔通過特性を決定するナノゲルの特性を同定し、それに基づき核内移行性ナノゲルのメカニズム解明および合理設計のための指針を確立する予定であったが、解析の結果上記特性中のサイズに加えて、計画段階では未注目であったナノゲル架橋点の動的性質およびナノゲルの機械的特性も重要であると示唆されるデータが得られたことより、本研究計画を一年間延長し、次年度にナノゲル架橋点の動的性質および力学強度と核内移行性との関係をあらたに解析することとしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、芳香族性疎水化ヘパリンナノゲルのサイズ、動的性質、力学強度と核内移行性との関係を解明することにより、核内移行性を規定するナノゲル物性を同定する。さらに、その知見をもとにして同定した物性を増強したナノゲルを合成し、その細胞核内移行性を調べる。この繰り返しにより、核移行特性を増強する。ナノゲルの核内移行性は正常細胞株、がん細胞株、幹細胞など多種の細胞で検討する。 以上の検討により、高効率な核膜孔通過特性を有する生分解性ナノゲルを合理的に設計する指針の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にサイズ・形状・表面特性が異なるナノゲルの細胞核内移行性を解析することで、核内移行性を決定する特性を同定し、その成果を国内・国際学会において発表する予定であったが、解析の結果上記特性の一部に加えて、未注目であったナノゲル架橋点の動的性質および力学的強度も重要と示唆されたことより、計画を変更し、架橋点の動的性質および力学強度と核内移行性との関係をあらたに解析することとしたため、次年度使用額が生じた。 ナノゲル架橋点の動的性質および力学強度と核内移行性との相関を解明するため、ナノゲル合成・物性解析用試薬、細胞培養用試薬、細胞内動態解析用試薬が必要であり、未使用額の一部はその経費に充てる。また、その成果を国内・国際学会において発表し、さらに学術論文として発表することを計画しており、未使用額の残りはその経費に充てる。
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Research Products
(6 results)