2012 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化の見える化:血管内皮・平滑筋機能の独立計測による動脈硬化進行度の定量診断
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24700495
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢口 俊之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (70385483)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / 非侵襲計測 / 超早期診断 |
Research Abstract |
本研究では動脈硬化の進行度を超早期段階から定量的に示す「動脈硬化の見える化」を目指し,血管内皮細胞と平滑筋細胞の機能を非侵襲で詳細に評価する新規技術の開発を行う.内皮機能の代表的評価法であるFMD (Flow-mediated dilation)法に,本研究で新規に提案する平滑筋機能評価法であるチョッパ圧負荷 PMC (C-PMC, Chopped-pressure mediated contraction)法を組み合せることによって,内皮と平滑筋機能の両方をそれぞれ独立に計測可能とする.平滑筋は伸展させると収縮するという性質(ベイリス効果)があり,C-PMC法ではこれを平滑筋の健康度と位置付けて計測対象とする.そして,2つの方法で得られた測定結果を比較検討することで,FMDのみの検査に比べ,遙かに定量的な動脈硬化の超早期段階の診断を可能とするとともに,動脈硬化の発生・伸展プロセスに関する新たな知見を得ることを目的とする. 本年度はベイリス効果を誘起するためのC-PMCシステムの設計・試作と,ベイリス効果やFMDを詳細に検討するための動物実験モデル構築を検討した.C-PMC システムについては,ベイリス効果を効率的に誘発・測定することを設計指標として設計と試作を行った.ベイリス効果の効率的な刺激を検討するためには圧波形の立ち上がりや応答性の正確さが求められるので,実際の圧波形を測定・評価し,C-PMCシステムの性能を確認した.ベイリス効果を動物で再現するためのモデル構築については,ヒトと同様にベイリス効果やFMD応答を再現できるように実験環境を調整した.構築した動物実験モデルに対しFMD測定を行った結果,ヒトと同様のFMD応答を再現できる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては主な検討課題として以下の二点に取り組み,おおむね予定通りの達成度が得られたため. (1)C-PMC システムの設計と試作および特性評価 ベイリス効果を効率的に誘発する条件を探索することを設計指標とし,C-PMCシステムの設計と試作を行った.空圧回路部分のハードウェアとして真空ポンプ兼コンプレッサ,タンク,3 方向ソレノイドバルブ,デジタルレギュレータ等を用い,これらをプログラムにて制御を行うことにより,陽圧,陰圧負荷によるチョッパ圧負荷を可能とした.ベイリス効果を効果的に誘起する条件を検討するためには,圧波形の立ち上がりや応答性の正確さが求められるので,実際の圧波形を測定したところ,十分な性能であることを確認した.今後,計測を行いつつハードウェア・ソフトウェアの問題点を明らかにし,システムの改良を継続的に行ってゆく. (2)ベイリス効果を効率的に誘発するチョッパ圧負荷条件の最適化 ベイリス効果を動物で再現するため,実験モデルについて検討した.家兎 (体重 2kg 程度)の頸動脈を対象とし,麻酔下で血管を周辺組織から剥離・露出させ,血管周囲の温度維持や希薄濃度のノルアドレナリンを用いる等の実験環境を整えることにより,ベイリス効果を再現できる可能性が示唆された.また,この露出した血管を対象に圧力負荷を行う小型デバイスを試作した.基礎実験として本動物実験モデルの血管に対し,圧力負荷デバイスを用いて血管を駆血してFMD測定を行った結果,ヒトと同様のFMD応答を再現出来たと考えられた.また,内皮細胞へ物理的なダメージを与えた血管においてはFMD応答が消失することが観察され,本モデルが内皮細胞の健康度を計測できる可能性が示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)上腕密閉用チャンバの試作 被験者の上腕動脈にチョップ圧刺激を負荷をするための密閉用チャンバを試作する.試作したチャンバをC-PMCシステムに接続し,内部の圧力を制御することでチョップ圧負荷を実現する.また,チャンバ内部に多次元アクチュエータを実装し,これに超音波プローブを固定することによって気密を維持したまま,高い自由度でプローブの位置調整を可能とする.この超音波画像より血管径を求め,C-PMC/FMD測定を行う. (2)健常者でのC-PMC/FMD測定(基礎データ蓄積) ベイリス効果を効率的に誘発する圧負荷条件を最適化しつつ,健常者ボランティアに対するC-PMC測定を行い測定データを蓄積し,解析を行う.また内皮機能検査として広く用いられているFMD測定も行い,C-PMC測定値と比較することにより内皮機能と平滑筋機能の関係について検討する.さらに,それぞれのデータに対し,個人差,年齢差,性差や日/週/月内変動等に関して解析を行うことにより,健常者のC-PMC/FMD測定における標準値に関して考察を行う. (3)ベイリス効果を効率的に誘発するチョッパ圧負荷条件の最適化 検討してきた動物実験モデルと圧負荷デバイスを用い,効率的な圧負荷条件を探索する.家兎の総頸動脈を麻酔下に露出し血管外部から圧負荷デバイスを用いてチョッパ圧刺激を負荷し,血管径変化を光学的に計測することにより刺激パターンとベイリス効果について検討する.さらにFMD測定も行い,C-PMC測定値との関連性を検討し,動脈健康度の検証に有用なモデルの開発とデータ蓄積を進めてゆく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究計画に則り設備備品として,上腕密閉用チャンバ試作費用を計上し,このチャンバ内へ超音波プローブを装着するための多次元駆動用アクチュエータ・サーボモータ一式を購入予定である.また,消耗品として,実験動物,動物実験用試薬類,空圧回路部品,電子回路部品等を購入予定である.
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Research Products
(2 results)