2012 Fiscal Year Research-status Report
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24700499
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
安部 恵祐 熊本大学, 自然科学研究科, 研究員 (10535652)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ秒パルス高電界 / nsPEF / バースト正弦波高電界 / IBSEF / apoptosis / signal pathway / USA / EU |
Research Abstract |
24年度では、ナノ秒パルス高電界(nsPEF:本実験では120ns幅, <12.5kV/cm)が細胞膜に影響して細胞死を誘導する機構を詳細に解析した。HeLaS3細胞では、nsPEF誘導性CeramideやCaイオン流入により、ユビキチンリガーゼであるTRAF-2の活性化が示唆された。また、新規にCaspase-4 の断片化(p10)も確認できた。今までの事象から、CeramideやCaイオン流入がERストレス関連IRE-1を介し,TRAF2を活性化させ、NFkB, ASK1, Caspase-4のそれぞれもしくは複数経路を同時に活性化させ、オートファジーやアポトーシスに誘導することが考えられる。さらにp53の有無によるシグナル経路への影響を複数種の細胞を用いて調べた。p53を正常に有するものはミトコンドリア関連のアポトーシス経路が活性化しやすく、そうでないものは小胞体ストレス経路が活性化しやすい傾向を示した。本結果からある複数のタンパク質が核内移動を起こすことでミトコンドリア経路のアポトーシスを回避していることが示唆された。細胞種によってはp53の代わりに代替機構を持つものがあるので、本結果とは異なる細胞もあるかもしれない。さらに精査し、がんの種類別に応じたnsPEFと薬剤を用いた有効的なelectrochemotherapyの条件が見つかると考えられる。 さらにバースト正弦波高電界を用いた実験では、300kHzの細胞膜に電界が集中する条件でBleb形成を引き起こす。その際に、ROSの産生が確認された。また、ある特異的阻害剤を用いて、とある経路を遮断することでROSの産生を抑制し、電界による初期ROS産生機構を解明した。加えて、ROSの発生とBleb形成の関係を示唆し、第2のROS産生機構も解明しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度は、おおむね順調である。しかし、所属するCOEにて、COE-RAリーダーとなり、国際学会の運営、所属するCOEに関するイベント、COE関連の博士課程の学生の管理などに多くの時間を割かれたので、本来ならばもう少し研究が遂行できたのかもしれない。また、研究室の運営や学生指導なども増え、論文執筆にも追われているので、前年に比べ研究を行う時間が半分くらいになった。また、いくつかの装置が故障し、自分の管理管轄外でのトラブルが起き、これらの影響も受けた。しかし、幸運なことにほぼ予想した結果が得られたため、進捗に関してはあまり遅くはなっていない。また、予想外の新しい結果も一部得られたため、全体的にかなり良い達成度だと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
nsPEFを用いたがん治療研究として、p53有無のシグナル伝達経路の特定を行う。数種類のp53正常型がん細胞にて、阻害剤でp53シグナル経路を抑制し、シグナル伝達に影響がでるかどうかの確認を行う。主にミトコンドリア経路でのアポトーシス回避を行うタンパク質の動態の観察・caspase-4/caspase-3・TRAF2・JNK/c-Junの活性化に関して着目して行う。次に、これらの機構ががん組織内でも同様に起きているかを調べる。ヌードマウスに移植したメラノーマに直接印加するか、もしくは、動物にできているがん組織を取りだし、nsPEFで処理を行い、短期の器官培養を行う。どちらの方法でも免疫系の働きは除外して考えることができる。そこで、形態観察とwestern blotを用いてin vitroの系で比較する。さらに今度は免疫系が正常ながんのモデルマウスを使用して同様のデータを解析し、免疫系の有無による効果を比較できれば良いと考えている。 また、IBSEFを用いた研究ではROS発生機序がわかったため、電界刺激によるROS/TRAF2シグナルの活性化が考えられる。IBSEFによってTRAF2やその下流が活性化されているかどうかの確認をする必要がある。もし、TRAF2が活性化しているならば、300KHzでnsPEFと同じシグナルが誘起しているかどうか調べ、メカニズムの詳細を特定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度では、がん細胞の種類ごとの感受性の違いの検討(p53の有無など)を行う。24年度に発見した物理刺激により誘起されるROSとアポトーシスの関係性を詳細に調べ、がん治療として安全かどうかを確かめる。最終的に動物実験用の電極の開発を行い、動物実験・解析を行う環境を整備し、ヌードマウスや正常マウスへ担がんを行い、がん組織への影響の解析を行う。その際、カルシウム増強治療・阻害剤導入治療・免疫活性化療法などのアレンジを行い、低侵襲かつ高効率の治療法を模索する。
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