2012 Fiscal Year Research-status Report
触診ロボット・三次元医用画像・軟組織変形モデルによる生体内弾性分布の定量的同定法
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24700507
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
星 雄陽 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (50535284)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
【研究の概要】 人体内部の軟組織の硬さに関する情報は、軟組織の変形の数値シミュレーションにおいて必要不可欠であるが、これまで硬さ情報を定量的に同定することが困難である問題があった。本申請課題は、「医用ロボット」・「医用画像処理」・「計算力学」の先端技術を活用した『力学モデルベースド弾性分布同定法』を提案し開発をおこなっている。提案手法によって生体内の軟組織における弾性分布が精度保証をともなって定量的に同定されることから、変形シミュレーションを活用した医用アプリケーションの実用化が期待される。 【実績の概要】 平成24年度の実績は、次の通りである。(1)提案システムの研究開発: 提案する弾性分布同定の手法について、特に理論面からの検証を重点的に行った。実験室環境に特化した一次試作システムを開発し、基本構成を検証するとともに、課題抽出を行った。これらの研究成果について、当該領域の学会にて発表をおこなった。進捗詳細は、後述の「現在までの達成度」の項目にて示す。(2)研究環境の整備による加速: 研究を加速的に実施するために、研究期間初年度である本年度は、使用する研究施設・設備・研究資料等、研究環境について整備をおこない、本研究を遂行するために有用な研究環境を拡充した。次年度の円滑な研究執行が期待される。(3)研究協力者との関係強化: 大学内外の研究協力者らと継続的な連携・協力関係を強化した。定期的な対面の研究会議を継続して開催しているとともに、インターネットを利用した即時の情報交換体制を運用している。(4)国内外での研究成果発信・ネットワーク構築: 学会等での発表・情報交換による成果発信をおこなった。特に平成24年度は、当該領域の主要学会である国際学会BIOROB・国際学会CARSへの研究調査活動を実施し、当該領域の第一人者の研究者らとの研究議論を通じた国際ネットワークを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【平成24年度(初年度)状況】 提案する弾性分布同定の手法について、特に理論面からの検証を重点的に行った。実験室環境に特化した一次試作システムを開発し、基本構成を検証するとともに、課題抽出を行った。一次試作システムの検証試験は、模擬生体試料を活用した環境下で実施した。試作システムを構成する各要素の研究開発に関する詳細な実施状況は次の通りである。 (1)触診ロボット: 触診ロボットの機構と制御系の要求仕様導出、ならびに、検証用試験機の試作――機構と制御系について、非侵襲な接触力計測と画像撮像を可能にする要求仕様を実験的に導出し、試験機を製作した。 (2)3次元医用画像: 3次元超音波画像からの変形場の生成と精度検証――リアルタイム性に優れる3次元超音波診断装置を使用し、画像の特徴点と濃淡値に基づいて3次元変形場を生成する手法について開発をおこなった。 (3)軟組織変形モデル: 有限要素法による変形解析と精度検証――軟組織の変形を計算する有限要素解析に基づく変形シミュレータを構築し、検証をおこなった。 本年度に抽出された技術課題の知見と開発された一次試作システムを活用し、続く研究期間では、臨床環境を想定した二次試作システムを開発し、提案手法の臨床応用に向けた検証を行っていく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に抽出された技術課題の知見と開発された一次試作システムを活用し、続く研究期間では、臨床環境を想定した二次試作システムを開発し、提案手法の臨床応用に向けた検証を行っていく計画である。機構設計では、前年度の一次試作モデルをベースとし、前年度の検証にて得られた仕様・知見を基に改善を行なう。資金および時間の効率化を図るため、構成の一部は一次試作モデルを転用する。臨床環境を想定し、滅菌対応・小型化について検討を行う。また、人体を対象とするため、機構系(ハードウェア)ならびに制御・情報系(ソフトウェア)の両面から安全を確保する設計を行う。二次試作システムの機能・性能評価のための検証試験は臨床相当環境にて行い、動物生体および安全性を確保し認可を受けた人体を試験対象として検討する。開発システムによって、弾性率値が関心領域にて真値との相対誤差10%以内に同定されることを目標とする。 検証試験を通じ、提案手法が人体組織に適用されるための要件を明らかとする。この確立される指針を積極的に社会還元するため、医療機関や医用機械企業と連携して学術界・医学界への技術提供活動を検討する。効率的な研究推進をはかるため、最先端の生命医科学の研究拠点である「東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設(TWIns)」等の施設・設備を活用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【設備備品費・消耗品費に関して】 平成24年度に一次試作した提案システムと、研究拠点における既存の研究資産を効率的に活用し、平成25年度はシステムの改良を図っていく。具体的には、ロボットの構造部を作成するための「機械要素部品類」についてや、ロボット制御部を作成するための「電気要素部品類」などの必要設備備品・消耗品について研究費を使用していく。 【国内・外国旅費に関して】 本研究の研究成果を広く学術界・医学界・産業界に認知させ、もって国内外の医用技術向上に寄与するための費用として学会出張費を使用する。また、提案するシステムの構築において欠かせない実証試験・前臨床評価等を行う試験場への器具運搬費、研究協力者の活動拠点へ研究出張を行うための費用について旅費を使用する。
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