2013 Fiscal Year Research-status Report
重粒子線治療における照射領域可視化画像を用いた生理機能定量測定に関する研究
Project/Area Number |
24700514
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
平野 祥之 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 博士研究員 (00423129)
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Keywords | 重粒子線治療 / PET / 動態解析 / コンパートメントモデル / In-beam PET |
Research Abstract |
当該研究グループで開発された開放空間においても撮像可能なOpenPETを用いて、ラットの脳へのC-11ビーム照射直後からの時間放射能曲線の解析を行った。2成分の生理的影響による洗い出し速度(中間成分k2m、遅い成分k2s)を仮定して、核医学で用いられるコンパートモデルを応用して算出した結果、平均の洗い出し速度は、ラット(N=4)では、k2m=0.54 min-1、k2s=0.011 min-1であった。このk2mはO-15標識水による脳血流測定で得られた洗い出し速度(k2)に近い値であることから、C-11の洗い出しも血流に依存するものではないかと考えた。そこで、血管反応性等の臨床検査でも使用される脳血流を増加させるアセタゾラミドを投与し(stress)、投与していない場合(rest)とで、それぞれC-11を脳に照射し、洗い出し速度を比較した。ラットの脳(N=6)に照射した結果、両者の時間放射能曲線はほぼ同じであり、またstress、restのk2mはそれぞれ0.31±0.07、0.28±0.08であり、有意な差は見られなかった。このことから、C-11の洗い出しは脳血流に依存しないものか、11CO2に変化したのではないかと示唆された。アセタゾラミドは炭酸脱水酵素の阻害剤であるため脳内にCO2濃度が増加し、血流は増加したが、洗い出しが抑えられたと考えられるためである。C-11の化学形を決める実験として、生体ではないが照射水に濃硫酸を添加し、アスカライトでCO2とトラップさせそこの放射能を測る実験を行ったが、バックグランドに対して、有意な検出はできなかった。しかしこれは常温溶解度に対して生成量が低いため、酸を入れたとしても残留した可能性もある。また、ラットに照射した後に、呼気の放射能を測定したが、こちらも有意な検出は認められなかった。さらに照射後20分後に採血し、血球と血漿に分離後それぞれ放射能を測定した結果、ほとんど血球に集まっていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた実験はすべて遂行することはできたが、C-11が生体に入った後の化学形を特定できるまでには至っていない。ガスクロマトグラフィのような化学分析で同定できることは期待できるが、検出効率等検討した結果、ビーム照射強度の106程度では、すべてが同じ分子になったとしても、同定が困難であると判断した。 そこでシミュレーションによるアプローチで化学形の同定を試みることを考えた。しかし申請者は計算化学に不慣れなため、現在も計算プログラムの作成と高精度なモデルの導入等を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
アセタゾラミドによる洗い出しの変化は観測できなかったが、時間放射能曲線の後半部分をよく観察すると、有意な差ではないがstressの傾きが大きい傾向にある。これまでの解析では全脳に関心領域をとっていたが、部位ごとあるいはボクセルごとに解析することで、アセタゾラミドの効果を再解析し、血流との関係を再検討する。照射直後からの撮像が可能なIn-beam PETでのボクセル・バイ・ボクセルの解析は初めての試みである。その場合、時間放射能曲線を作成するためのイベントが減少することが予想されるため、ボクセルのエラーを正確に見積もり、モデル関数のフィットの有意性を示す必要がある。そこで、中心に球状の放射線源をもつ円柱ファントムを用いて、カウントレイト(ランダムレイト)及びフレームを構成するイベント数と、ボクセル値のエラーの関係を明らかにした後、この結果をラット照射画像にも適用する。これによりフィットの有意性が評価でき、部位ごとあるいはボクセルごとでのアセタゾラミドの効果を定量的に評価できる。これらの結果を含め、アセタゾラミド負荷による結果を論文にまとめる予定である。一方で、引き続き計算化学からC-11を持つ化学形の予測も試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定だった放射能を測定するためのPMT(光電子増倍管)が当該研究グループが所有するPMTで代用することができたので、購入する必要がなくなった。 実験に必要な物品としては、PETを定量化するために必要なファントムと非密封線源に使用する。またモデル解析やC-11以外の陽電子放出核種の生成量を計算するためのコンピュータおよび、研究成果の発表、情報収集のための旅費に用いる予定である。
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