2012 Fiscal Year Research-status Report
ロボットスーツを適用した脊髄損傷早期治療介入と3次元動作解析を軸とした包括的研究
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24700521
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中原 康雄 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80595968)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ロボットスーツ / 3次元動作解析 / 脊髄損傷 |
Research Abstract |
災害や事故, 病気などが原因で障害を有する方々に最も適した生活水準の達成を可能にしていくための手段の提供を目指すリハビリテーションにおいては効果的な訓練法の開発は常に重要な課題である。本研究の目的は、自動アシストモードを搭載するロボットスーツを取り入れた訓練をリハビリテーションに取り入れ、3次元動作解析の手法を取り入れて評価, 分析することでより一層副作用の少なく効果的な訓練法を提案し、新しい治療戦略に繋げていくことである。本研究では、3次元動作分析装置を解析に取り入れることで3次元での力学的な解析を行い、健常人がロボットスーツを装着して訓練した場合の姿勢や運動の状態を解析することで生理的な運動の状況との相違点を検討する。その結果を元に実際に患者が装着してリハビリテーションを行う場合、より効率的で負担の少ないロボットスーツの調整, 訓練の方法を実際のリハビリテーションに取り入れる。本年度は健常者を対象にロボットスーツ装着の有無という2条件下で3次元動作分析装置(VICONMX, VICON PEAK社), 床反力計(AMTI社・KISTLER社)による計測を行った。当初ロボットスーツを装着した上での動作解析では赤外線反射マーカーとロボットスーツによる赤外線反射が混在してしまい計測が困難となるなど問題が生じたものの度重なる検討の結果、測定が可能となり、体幹, 骨盤, 下肢の体表に赤外線反射マーカーを貼付し、3次元動作分析装置と床反力計により、歩行, 立ち上がり, バランス, 姿勢といった動作においてマーカーの3次元位置を測定した。同時に筋電の計測とビデオカメラによる各動作の全体像の記録も行った。引き続き計測したデータをもとに、関節モーメント, 関節角度, 歩行速度, 重心移動, 床反力などを算出解析すると共に、計測も併せて行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は3次元動作解析を用い、ロボットスーツを装着した場合の健常者での動作解析を行った。ロボットスーツを装着しない状態での3次元動作解析による評価は順調に達成できている。ロボットスーツを装着した状態での計測に関しては、赤外線反射マーカーの設置場所や手技などでロボットスーツ無しの状態と同様に測定するために検討が必要であり、ほか、設置したマーカーによる通常の赤外線反射以外の反射が非常に多いなどの問題が生じ当初は計測自体が困難であったため、足圧分布測定装置や重心動揺計などといった他の動作解析装置を組み合わせていくことでの解析を行っていくなど別の角度からアプローチすることも考えられたが、検討を重ねていくことで徐々に問題をクリアすることができ、現在ではロボットスーツを装着した状態での3次元動作解析を行うことができている。さらに、ロボットスーツ有無両者において3次元動作解析中の同期させた表面筋電といった計測も加えて測定できるようになってきており、全体として概ね順調に計画は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ロボットスーツ装着有無の2条件下での類似点, 相違点を検証し、ロボットスーツ装着下においてどのような動きや調整をすることがより人間の運動特性に適した訓練となるかを検討する。その結果を元に実際のリハビリテーションに反映させていく。定期的に評価を行うことで運動機能改善効果を検証していく。表面筋電型による筋収縮出現の有無, 立位時の免荷歩行支援装置による免荷量の変化による改善の評価を行うと共に、筋酵素(CK:クレアチンキナーゼ)の変化量を計測することで、ロボットスーツによる過剰な筋損傷などの副作用が生じていないかなども評価していく。これらの評価に当たっては、ロボットスーツを用いない通常のリハビリテーションにて訓練をしている年齢や発症時の障害の程度などを合わせた脊損患者群に対しても同様の評価を行い、ロボットスーツを用いた訓練の有無での治療効果に有意差があるかを検討し、最終的に脊損患者に対してロボットスーツをリハビリテーションに取り入れることでの効果の検証を行っていく。その結果をフィードバックすることで、臨床への応用による効果, 動作解析の結果, それらを併せての評価を包括的に検討し、ロボットスーツを実際のリハビリテーションに取り入れていく新たな治療戦略に結びつく手法の開発を目指す。併せて、参加者にかかる疲労度や着脱時の利便性さらに安全性なども評価する。脊損患者における心理的評価: 脊損患者の治療においては、心理的サポートは非常に重要である場合が多い。そこで、先進的なイメージのあるロボットスーツを取り入れた訓練を行うことでの心理的要素の変化をSatisfaction With Life Scale (SWLS), Patient Health Questionnaire-9 (PHQ-9)といったスケールを用いての評価も検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ロボットスーツは購入ではなく月々レンタルとして導入している。ロボットスーツを装着した状態での3次元動作解析するためにクリアしないといけない点が生じたことと、全期間ロボットスーツをレンタルする場合、研究費が足りなくなってしまうこともありまずはロボットスーツを装着した状態で安定して3次元動作解析ができる状況まで検討を重ねる必要があった。その結果、計測が可能になった段階でレンタルを開始しており、次年度途中でレンタルができなくなるといったことがなく計測や訓練を継続して行えるよう次年度に使用する予定の研究費が生じている。主にはロボットスーツのレンタルに使用する予定である。
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