2012 Fiscal Year Research-status Report
瘢痕治療を促進させる超音波フォノフォレーシス法の確立
Project/Area Number |
24700530
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
前重 伯壮 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (90617838)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 瘢痕 / 超音波 / フォノフォレーシス |
Research Abstract |
<細胞培養の実施> ケロイド由来線維芽細胞は、神戸大学大学院保健学研究科保健学倫理委員会に研究内容を申請し、承認された上で、神戸大学医学部附属病院形成外科にて患者より耳垂ケロイド組織を採取し、初代培養に成功した。予備実験に用いたヒト皮膚由来線維芽細胞(CC-2511)は、Clonetics社より購入した。 <超音波照射による脂肪酸の線維化抑制作用促進効果の確認> 線維化促進因子であるα-SMA、 TGF-β1、Collagen IのmRNA発現をreal time PCR法にて定量した。短鎖脂肪酸である酪酸、多価不飽和脂肪酸であるDHAは、今回培養系を確立したケロイド線維芽細胞においても先行研究と同様に酪酸 4-16 mM、DHA 100 μMの48時間添加で抑制作用を認めることが確認された。超音波照射単独の効果は、連続モード照射においては変化が認められないものの、パルスモード照射では線維化促進因子発現を軽度促進することがわかった。また、0.5 W/cm2以下の強度では、パルスモード、連続モードともに細胞障害性を有さないことがMTT assayにて確認された。そして、各脂肪酸と超音波の組み合わせ効果については、DHAとの併用ではDHA単独と同様であるものの、酪酸との併用では、酪酸単独と比較して、線維化促進因子を強く抑制することが確認された。すなわち、これらの併用時には、超音波がヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である酪酸の作用を促進させることがわかった。この効果は、3 MHz、0.5 W/cm2の連続およびパルスモード超音波を20分間、4 mMあるいは16 mMの酪酸を添加した直後および24時間後の2回照射することにより得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の検討により、短鎖脂肪酸の酪酸 4-16 mM、多価不飽和脂肪酸のDHA 100 μMが耳垂由来ケロイド線維芽細胞においても先行研究と同様に線維化抑制効果を認めることが確認され、超音波単独の線維化に与える影響ならびに細胞障害を与えない超音波照射条件も明らかになった。また、脂肪酸と超音波の併用には酪酸が有効であることがわかり、そのための超音波照射方法も確認された。これらの成果に準じて、第19回外科侵襲とサイトカイン研究会での学会発表ならびに日本物理療法学会誌への論文投稿が行えた。しかし、現時点で得られている超音波による脂肪酸の線維化抑制促進作用は脂肪酸単独の効果を2倍以上強めることができていないため、in vivo実験に移行する前に、さらに強力な効果を得る超音波照射方法を検討する必要があると考え、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC inhibitor)である酪酸の線維化抑制効果を超音波が促進することが確認され、われわれは酪酸による線維化抑制作用がヒストンのアセチル化に依存することをすでに明らかにしている。したがって、HDAC inhibitorである酪酸を、さらに効果的に細胞内に導入する手段を確立する必要がある。平成24年度、microbubble添加下の超音波照射による遺伝子導入方法が多く報告された。この方法は、細胞障害を生じずに細胞表面に微小孔を生じ、効率的に遺伝子を導入するものである。したがって、本研究においても、microbubbleを用いた超音波照射を適用し、in vivoでも効果を発揮しうる超音波照射方法を確立する。さらに、全層皮膚欠損創モデルの作成に着手し、in vitroでの効果をin vivoで確認できる体制を構築する。 平成24年度に得られた成果を第21回日本物理療法学会学術大会などで発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、in vitro実験を継続した上でin vivo実験を開始する。したがって、細胞培養培地、FBS、プラスチック類などの細胞培養関連の消耗品や、mRNA発現を定量するreal time PCR用試薬、タンパク発現を定量するwestern blot用試薬などの測定系試薬の購入費を計上し、ラット購入費、ラット飼育費についても計上する予定である。また、成果発表のために、旅費、海外論文校正費用も計上する予定である。
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Research Products
(4 results)