2013 Fiscal Year Research-status Report
瘢痕治療を促進させる超音波フォノフォレーシス法の確立
Project/Area Number |
24700530
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
前重 伯壮 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (90617838)
|
Keywords | 超音波 / 脂肪酸 / 線維芽細胞 / 瘢痕 / ソノポレーション |
Research Abstract |
<細胞培養の実施>前年度に引き続き、神戸大学医学部附属病院形成外科の手術において廃棄予定となったケロイド組織よりケロイド線維芽細胞を初代培養し、実験に使用している。正常線維芽細胞についてはClonitics社より購入している。 <超音波による脂肪酸細胞内導入効果の分析>短鎖脂肪酸である酪酸が有する線維化抑制作用を超音波照射により促進することが本研究の目的である。酪酸がヒストンのアセチル化を介して抗線維化作用を示すこと明らかにしてきたため、アセチル化ヒストンの蛋白量を指標として、超音波照射の至適条件の検討を進めた。前年との課題としていたmicrobubbleの併用については、製品の製造中止が決定されたため検討できなかったが、遺伝子導入効果について、高強度短時間の有用性が報告されているため、これまで0.5 W/cm2であった強度を2.0 W/cm2とし、10分を1分に変更して実験を行った。しかし、この高強度条件では促進効果は得られなかった。このことから、遺伝子導入に用いるプラスミドより低分子である酪酸の導入では、その効果が出力強度依存的ではないと示唆されるため、次の課題を低強度(0.1 W/cm2)長時間(20分以上)照射の効果分析とした。 <動物モデル(全層皮膚欠損創)の確立>in vitro実験結果のin vivoでの検証を目的に、動物実験モデルの確立に着手した。6週齢の雄性SDラットを用いて、左右の肋骨・大転子間の皮膚に全層皮膚欠損創を作成した。感染創傷を一切認めず、安定した創作成が可能となった。現在、脂肪酸単独添加の効果を分析している。 <論文投稿>前年度に得られた中等度強度超音波による短鎖脂肪酸の抗線維化促進作用促進について、第21回日本物理療法学会学術大会で発表し、その成果を日本物理療法学会会誌に投稿し、掲載が受諾された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitro実験における効果量の高い照射条件の解明が課題として残るが、前年度に得られた耳垂ケロイドに対する脂肪酸の線維化抑制効果、および中強度超音波を用いた脂肪酸の線維化抑制作用に対する促進効果が国際学会および国内学会発表にて評価され(欧州静脈経腸栄養学会議ESPEN 2013 Travel Fellowship受賞)、また投稿論文が受諾されたことは想定以上の成果であった。動物実験については脂肪酸添加と超音波の混合効果は明らかにされていないが、大学の動物実験委員会の承認を得て、予定通り全層皮膚欠損創モデルが確立できた。これらより、研究の進捗としてはおおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果より、超音波の低出力・長時間照射の効果を脂肪酸(酪酸)添加下で分析することを課題とする。今年度と同様に、酪酸の抗線維化作用の機序であるアセチル化ヒストンの蛋白量を指標にしてin vitro実験で解析を進める。 in vivo実験では、脂肪酸単独での効果検出を優先する。その効果が、創傷への添加で得られない場合には、上皮形成後瘢痕となった創に対して脂肪酸を注入し、瘢痕の消退を指標に効果を検証する。そして、注入酪酸の組織内での拡散および細胞内への導入効果を、瘢痕組織のアセチル化ヒストンの蛋白量を指標に解析し、線維化マーカー(α-SMA)発現抑制を評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超音波療法による酪酸の細胞内導入に対する最適条件の検討をアセチル化ヒストン蛋白を指標としたwestern blotting法で実施したため、予定より実験費用が低額となった。 昨年同様、細胞内導入の最適条件をアセチル化ヒストン蛋白を指標としたwestern blotting法で解明し、明らかになった最適条件の線維化促進因子、炎症性マーカーに対する影響をreal time PCR法、ELISA法を用いて解析していく。その上で、実験費用が高額となるため、昨年度から繰り越された次年度使用額は全て使用される。
|
Research Products
(5 results)