2013 Fiscal Year Research-status Report
吃音児者のQuality of Life向上を目指した総合的な吃音評価法の開発
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24700534
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川合 紀宗 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20467757)
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Keywords | 吃音 / 包括的アセスメント / 多面的モデル |
Research Abstract |
前年度に実施された研究によって精選された評価項目や評価ツールを、CALMS モデルに基づく多面的モデルの概念[C=Cognitive (認知・知識面), A=Affective (感情・態度面), L=Linguistic (言語能力), M=Motor (口腔運動能力), S=Social (社会性・社交性)]に組み込み、吃音に対する知識・自己認知の程度、吃音に対する態度や感情、全般的な言語能力、口腔運動能力、社会性・社交性を総合的に評価する吃音総合アセスメントツール試案の開発を行った。特に今年度は、吃音の包括的評価ツールである日本版CALMSアセスメントツールの開発に携わり、マニュアルの日本語化を行ったほか、昨年度に引き続き、評価項目の選定やCALMSアセスメントツールの信頼性及び妥当性の検討などの作業を行った。特に我が国の文化では受け入れられにくい箇所については、項目の一部変更や日本独自のアセスメントツールの適用を試行した。試案の開発にあたっては、作成したアセスメントツールの信頼性及び妥当性を検証するためのパイロット研究を行い、その結果に基づき、最終確定版を作成する。検証にあたっては、アセスメントを実施する言語聴覚士及びことばの教室担当教員、それから吃音当事者の協力を得る予定である。パイロット研究への協力者は、言語聴覚士やことばの教室担当教員などを通じて募集したが、予想を下回る協力者数(5名)であった。よって引き続き、協力者数の募集を続け、更なるデータ収集・分析を行い、更なる評価項目の精選を行い、最終版の完成に向けた最終調整を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、科研費による研究以外に、文部科学省の「発達障害に関する教職員の専門性向上事業」、「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」が採択され、これらの事業に対してもリーダー的な立場で推進させる役割を負ったため、本来の計画よりもやや遅れることとなった。今年度もいずれの事業も継続するが、昨年度の実績があるため、比較的他の研究者と分担しながら実施が可能となったことから、今年度、本研究課題については昨年度の遅れを取り戻しつつ、問題なく研究を遂行できる見込みである。遅れている箇所はパイロット研究のデータ数であり、収集の見込みはあるため、すぐに取り戻せる程度の遅れである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に実施したパイロット研究により精選された評価項目の信頼性及び妥当性の検討(データは言語聴覚士やことばの教室担当教員計20 名から収集予定)を行い、これらが十分に担保されていることを確認した上で、「根拠に基づく臨床」を担保し、かつ吃音問題の「個人差」に対応できる吃音総合アセスメントツールの最終版完成へ向けた作業(標準化)を実施する。具体的には、検査協力者として、吃音児者については、小学生、中学生、高校生、大学生・社会人の計4年齢群ごとに各10 名(合計60 名)、非吃音児者については、各年齢群ごとに20 名(男子、女子それぞれ10 名ずつ、合計120 名)を募集する。これは、日本コミュニケーション障害学会吃音および流暢性分科会員に協力依頼をすることにより、検査協力者を確保することが可能である。収集した吃音児者、非吃音児者のデータを整理、分析し、吃音総合アセスメントツール最終版を作成する。一方で、吃音の評価の在り方に対する批判として、吃音の重症度や吃音に対する悩みの大きさが評価できたとしても、それをどのように臨床につなげたらよいのかわからない、といった声が大きい。つまり、評価と臨床がつながっていない、といった声が大きい。その声にこたえるために、CALMSそれぞれの領域における臨床方法や、吃音児者の「個人差」に応じた臨床方法も同時に提案することとする。
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