2012 Fiscal Year Research-status Report
ペアレント・トレーニング保育士版の効果に関する研究
Project/Area Number |
24700538
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
十枝 はるか 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30380835)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 作業療法 |
Research Abstract |
【具体的内容】平成24年度は、6カ所の保育所にて、ペアレント・トレーニング保育士版(以下、ティーチャー・トレーニング)を実施した。効果測定に用いた質問紙「子どもの行動チェックリスト教師版(TRF)」の対象年齢である5歳以上の子どもを担当する保育士5名を対象とした。対象者が当初の計画より少なくなったが、平成19年度から作業療法士(以下、OT)である研究代表者が実施してきたティーチャー・トレーニングの効果研究の対象者と合算すると40名となった。各対象者が担当する「気になる」等といった発達障害の疑いのある子どもは、女児9名,男児31名であった。これらの子どもの行動上の問題を示すTRF総得点の推移は、ティーチャー・トレーニングを実施した期間(介入期)の前後において有意に低下した。 【意義】OTがティーチャー・トレーニングを用いて保育士と協働することで、保育所に在籍する発達障害の疑いのある子どもの行動が有意に改善したことが認められた。 【重要性】本研究により発達障害の疑いのある子どもの行動改善が示されたことで、生活の場である保育所においてOTによる間接的支援で効果が示せたことが発信できる。さらに、診断名の有無にかかわらず何らかの困難さを感じている子どもたちに保育士が「気になる」という気づきと同時に支援を開始できる生活モデル型の効果的な体制づくりの先駆けとなりうる。これは、文部科学省が通知した「特別支援教育の推進」や厚生労働省が見直した「障害児支援」の在り方の一つとして提案でき、発達障害児を薬物療法といった医療の対象となる前に、適切な保育・教育環境による発達支援を提供することができる地域社会の構築にも寄与するものと考えられる。さらに、生活モデル型の支援ができる人材を養成する指導者としてOTが貢献できる可能性があることも示される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由:平成24年度に限って言うと、対象者は当初の研究計画より少なくなった。しかしながら今まで実施してきたティーチャー・トレーニングの効果研究の対象者と合算することで、TRF総得点において統計学的な効果を示すことができた。また、OTによるティーチャー・トレーニングへ参加した保育士の中から、その後自園においてティーチャー・トレーニングを継続実施する動きも見せている。今後、子どもの生活の場で子どもを支援できる人材をますます養成することにつながっていることは、うれしい進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が、平成25年4月に群馬大学へ異動するため、長崎県B市へ通うことは月1回が限度となる。平成25年度は、おのずとティーチャー・トレーニング実施回数が少なくなることに伴い研究対象者数も少なくなるが、引き続きTRFを効果判定に用いた効果研究の対象者として合算したい。そして、もう一つの効果判定に用いている「カナダ作業遂行測定COPM)」を用いた効果研究は、平成23年から実施しており、平成24年度と平成25年度分も合わせると対象者数は当初の予定数に近い人数が集まると予想される。TRFと同様にCOPMによっても効果が示せるかを検討する予定である。さらに、COPMで測定された対象者の「重要度」、子どもの「遂行度」、対象者の「満足度」の何に効果があったのか詳しく検討していきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が研究実施のため、群馬県から長崎県へ移動する交通費ならびに宿泊費への使用と、この研究実施日に合わせて、研究相談者の楠本伸枝氏を、奈良県から長崎県へ来ていただく交通費と宿泊費が主な使用になる。さらに、研究成果をより広く社会・国民へ発信するためのホームページ立ち上げるその費用にも使用する。
|