2012 Fiscal Year Research-status Report
磁気刺激を利用した拘縮の新たな治療法の確立のための実験的研究
Project/Area Number |
24700539
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
坂本 淳哉 長崎大学, 大学病院, 理学療法士 (20584080)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 不動 / 拘縮 / 線維化 / 磁気刺激 |
Research Abstract |
本年度は間欠的磁気刺激が拘縮の発生・進行におよぼす影響について検証した。8週齢のWistar系雄性ラットを無処置の対照群と実験群に振り分け、実験群はラット両側足関節を最大底屈位でギプス包帯にて4週間不動化する不動群とその過程においてギプス固定下で間欠的磁気刺激を負荷する刺激群に振り分けた。間欠的磁気刺激は、刺激頻度0.1Hz、出力70%、1日1回30分(週6回)の条件でL3~L5を経皮的に刺激し,両側ヒラメ筋の周期的な筋収縮を誘発した。実験期間終了後は、全てのラットの足関節背屈可動域(ROM)を測定し、両側ヒラメ筋を摘出した。そして、組織学的検索および分子生物学的検索に供して、骨格筋における線維化の発生状況と線維化関連分子について検索を行った。結果、ROMは不動群、刺激群ともに対照群に比べ有意に低値であったが、刺激群は不動群より有意に高値を示した。また、各群のピクロシリウスレッド染色像を検鏡すると、不動群と刺激群は対照群に比べ筋周膜や筋内膜に肥厚が認められ、その程度は刺激群が不動群より軽度であった。次に、RT-PCR法によるmRNA発現量の結果をみると、タイプIコラーゲンは、不動群、刺激群ともに対照群に比べ有意に高値であったが、刺激群は不動群より有意に低値を示した。また、タイプIIIコラーゲンは,不動群が対照群,刺激群より有意に高値であり、対照群と刺激群の間には有意差は認められなかった。今回の結果から、不動の過程で骨格筋に周期的な単収縮を誘発し張力を負荷した刺激群では、組織の線維化ならびに拘縮の発生が軽減されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リハビリテーション医療における拘縮の新たな予防・治療方法を確立することを目標としている。具体的には、不動によって惹起される拘縮に対する磁気刺激の効果について検討するとともに、その効果に関するメカニズムについて検討する作業を通して、不動によって惹起される拘縮に対する効果的な予防・治療方法を提示することを目的としている。 まず、本年度は不動によって惹起される拘縮に対する間欠的磁気刺激の効果について検討を行い、その結果、不動の過程においてギプス固定の状態にあっても間欠的磁気刺激による筋収縮を負荷することで、不動によって惹起される骨格筋の線維化を軽減でき、その結果、拘縮の発生・進行を抑制できることを明らかにすることができた。 本研究の目的を達成するために、本年度では第一段階として不動によって惹起される拘縮に対する磁気刺激の発生・進行抑制効果について検討することを計画しており、本年度得られた結果を検討したところ、不動によって惹起される拘縮に対する磁気刺激の抑制効果を示すことができていることから本研究は現在までのところ概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、持続的磁気刺激が不動により惹起される拘縮の発生・進行におよぼす影響について検証する。具体的には、実験期間を1,2,4週間とし,8週齢の成熟したWistar系雄性ラットを1)無処置の対照群(各実験期間10匹,合計30匹),2)ギプスにより足関節を不動化する不動群(各実験期間10匹,合計30匹),3)不動の過程で持続的磁気刺激を負荷する群(各実験期間10匹,合計30匹)の3群に振り分け、拘縮の発生・進行状況および骨格筋における線維化の発生状況、線維化関連分子の動態について検討を行う。試料作成および検索方法は平成24年と同様の方法で行う. そして、得られた結果については、平成24年度の結果と比較・検討して、より効果的な拘縮の発生・進行の予防方法について明らかにすることを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の目標を達成するために、まず、実験用ラットの購入費が必要で,また,その飼育用飼料費、飼育費が必要であり、これらに研究費を使用する。 次に、組織学・免疫組織化学・生化学・分子生物学的手法による解析を行う予定であるため、多種多様の実験試薬と実験消耗品が必要であり、これらの購入を予定している。その一部ではあるが、免疫組織化学的検索では一次・二次抗体を購入する必要があり、生化学的検索ではコラーゲン含有量を計測するための既成のKitを購入する必要がある。また、分子生物学的検索手法ではRT-PCR法を行うため、各物質のmRNA検出用のプローブ作製を専門業者に依頼し、購入する必要がある。 最後に、研究課題の関連内容についての情報収集や意見交換のために国内学会に参加したいと考えており、その旅費の使用を予定している。また、研究成果については国際学術雑誌に投稿を予定しており、そのために必要な経費を予定している。
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Research Products
(8 results)