2013 Fiscal Year Annual Research Report
温熱刺激は関節リウマチに伴う筋機能の低下を改善するか?
Project/Area Number |
24700541
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
山田 崇史 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (50583176)
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Keywords | 関節リウマチ / 筋弱化 / 固有張力 / 酸化ストレス / 熱ショックタンパク質 |
Research Abstract |
先行研究において我々は,関節リウマチ(RA)モデルであるコラーゲン誘導性関節炎マウスの骨格筋において,筋張力の著しい低下が,一酸化窒素(NO)派生物によるタンパク質の翻訳後修飾を伴うことを示した.平成24年度に実施した研究では,別のRAモデルであるアジュバント関節炎(AIA)ラットの骨格筋において,類似した変化が観察された.したがって,これらの知見から,RAに伴う筋力低下には,NO派生物による酸化ストレスが関与することが示唆される. 平成25年度の研究では,これらの知見と,熱ショックタンパク質(Hsp)の有する抗酸化能力に着目し,AIAラットの筋機能低下を,熱刺激応答経路の活性化が防止すると仮説し検討を行った.しかしながら,我々の仮説に反し,熱刺激により,骨格筋におけるHsp72発現量は顕著に増加したが,AIAに伴う筋機能低下に改善は認められなかった.また,AIAラットの骨格筋では,パーオキシナイトライトによるタンパク修飾の指標である3-ニトロチロシンや炎症性メディエーターであるTNF-αの増加が認められたが,熱刺激はこれらの増加を抑制しなかった.したがって,熱刺激によるHsp72発現量の増加は,AIAラットにおいて,炎症―酸化ストレス系を介した筋機能低下を防止しないことが示唆された.ただし,本研究で用いた熱刺激条件の結果のみから,関節炎に伴う筋力低下の対策としての温熱療法の可能性を,完全に否定することはできない.今後,温度,時間,頻度等の条件を変化させた際の影響について,さらに詳細に検討する必要があると考えられる.一方,本研究の結果は,RAに伴う筋機能低下とNO派生物による酸化ストレスとの関連性を,改めて示唆するものである.今後,抗酸化剤の投与等の薬理学的な実験を行い,その関連性をより直接的に示すことで,科学的根拠に基づいた新たなリハビリテーション技術の開発に繋げたい.
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