2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700564
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Health Science University |
Principal Investigator |
村松 憲 健康科学大学, 健康科学部, 講師 (00531485)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 糖尿病性ポリニューロパチー / 運動ニューロン |
Research Abstract |
糖尿病性ポリニューロパチー(以下,DPN)の症状は四肢遠位の感覚障害と自律神経障害を主体とする一方,最大筋力低下などの運動神経系の障害を示唆する所見は慢性期まで観察されないため,運動神経系はDPNに対して強い耐性を持つと考えられてきた.しかし,運動ニューロン障害を否定する先行研究はDPNの標的となりやすい四肢遠位を支配する運動ニューロンのみを選択的に解析していないという問題があった. そこで,私たちはI型糖尿病を発症して12週間と22週間が経過したラットと同週齢のラットの内側腓腹筋を支配する運動ニューロンをトレーサーで標識し,その細胞径と細胞数を計測した.結果,細胞体径は対照群において平均約34μm程であったが,糖尿病発症12週間後には約32μm,22週間には約31μmにまで減少することがわかった.さらに,対照群の細胞数は平均約125個であったが,糖尿病発症後12週間で約100個,22週間で約80個まで減少し,細胞脱落は小型の運動ニューロンに集中していることが判明した.脱落した小型の運動ニューロンは先行研究から主にγ運動ニューロンである可能性が高いと考えられた.この結果は一見するとDPNを発症した糖尿病患者は慢性期まで筋力低下が観察されないという事実と矛盾するようにも思われるが,γ運動ニューロンは固有受容器である筋紡錘の錘内筋線維を支配し,その感度調節を行なうため,その欠落症状はアキレス腱反射の消失やバランス障害であることが予想される.そのため,DPN患者の最大筋力が長期間にわたって保たれることと矛盾するものではない. 以上より本研究結果は運動ニューロンがDPNに高い耐性を持つという定説を覆すものと言える.本研究結果はNeuroscience Letters誌(2012年531号109 – 113頁)に掲載されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はI型糖尿病モデルラットの運動ニューロンの形態変化を調べる事を目的とし,計画していた内容は全て達成することが出来きた.研究結果も年度内に論文掲載されている.しかし,研究を進める過程で,当初に予定していたよりも多くの成果が得られたため,同じ動物から取り出した標本を用いて追加の解析を加えた.追加の解析によって得られた成果は平成24年度内に論文投稿が出来なかったため,平成25年度以降に持ち越されている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画書で予定していた筋の収縮特性と筋タイプの変化に関する実験に取り掛かる.ただし,筋の収縮特性に関する実験は科研費申請時の計画では単一運動ニューロンにガラス管微小電極を刺入し,電気刺激を行うことで単一運動単位の筋張力を計測する予定であったが,研究資金の関係でより安価な方法である末梢神経を電気刺激する方法に変更する.実験方法の変更は予定していた研究内容には影響を及ぼさない.また,同じ動物の筋線維のタイプ分けは計画書で予定していた内側腓腹筋に加えて,ヒラメ筋も解析する.これは,平成24年度の実験結果が小型の運動ニューロンほどDPNの影響を受けやすいということを示唆する内容であったため,小型の運動ニューロンが多いヒラメ筋を解析対象に加えるものである.実験終了時期は2月頃を予定し,論文の投稿は次年度に行なう予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は筋の収縮特性を調べるために必要なトランスデューサー,身体を固定するための固定器やクランプなどの備品購入と筋のタイプ分けに使用する試薬など各種消耗品に約100万円の支出を予定している.残りの科研費と大学から支給されている個人研究費等を合算して,動物の購入,飼育費,学会出張費,論文投稿にかかる諸経費などにあてる予定である.
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Research Products
(6 results)