2012 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後の歩行時における麻痺側荷重誘導方法の開発と効果の検証
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24700574
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
森下 元賀 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 講師 (60541612)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 神経生理学 / 歩行 / シナプス前抑制 |
Research Abstract |
本年度は脳卒中片麻痺患者に対して安全かつ効果的に行える介入方法、時間、頻度を決定するために健常若年者において、特に介入時間、頻度が歩行パターン、シナプス前抑制に与える影響を明らかにした。 健常若年者に対しては、片側膝関節を固定した群と非固定群を設定し、実際の患者の歩行時間を想定した10分間のトレッドミル歩行を行わせた。歩行の前後で反対側前脛骨筋とヒラメ筋を遅延刺激した際のヒラメ筋H波の振幅の抑制程度を指標として、反対側下肢のシナプス前抑制の変化を検討した。結果として片側膝関節を固定した群では、非固定群と比較して、反対側下肢のシナプス前抑制が増強され、20分間にわたって継続していた。また、固定した群では固定と反対側下肢の立脚時間の延長が見られたことから、反対側下肢の荷重時間の増大がシナプス前抑制の変化をもたらしたことが考えられた。これによって脳卒中片麻痺患者の非麻痺側膝関節を固定した場合に、麻痺側下肢の異常な筋緊張、腱反射の抑制が行え、運動麻痺の回復に寄与する可能性が示された。 脳卒中片麻痺患者に対しても非麻痺側膝関節を固定して、通常の理学療法時と同様の歩行を5分間行わせた(装具歩行)。また、固定しない条件でも同様の歩行を行わせた(通常歩行)。その前後で健常若年者と同様の方法で麻痺側下肢のシナプス前抑制を測定した。麻痺側の立脚時間においては、患者は歩行前は非麻痺側と比較して短縮していたが、装具歩行によって延長し、左右の立脚時間が同程度となった。脳卒中患者においては、歩行前はシナプス前抑制はわずかしか出現していなかったのに対し、装具歩行後には健常者と同じ水準までシナプス前抑制が増強した。これらの結果は脳卒中患者においても装具歩行によって、歩容の変化だけでなく、上位運動ニューロンからの下降性抑制の増加によって運動麻痺の回復に寄与出来る可能性を示すものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健常者に対する基礎実験に関してはほぼ完了し、脳卒中片麻痺患者に対して実施するための根拠に関しては示すことが出来た。また、脳卒中片麻痺患者に対して介入することによる神経生理学的変化に関しても一定の傾向を明らかにすることが出来た。しかし、患者に対してはまだ症例数が少なく、十分に信頼性のある結果となっていない。また、本来は脳卒中片麻痺患者に対して、非麻痺側膝関節を固定することによる歩行パターンの変化を動作解析によって、詳細に明らかにする予定であった。しかし、機材の調達の遅れや該当患者がリクルート出来なかった等の理由から動作解析に関しては十分に行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られている神経生理学的な知見をもとに、前年度に行えなかった脳卒中片麻痺患者に対しての非麻痺側膝関節固定下での歩行によるその後の歩行パターンの変化を詳細に明らかにする予定である。また、平行して非麻痺側膝関節を固定して歩行練習をする介入をシングルケースデザインで行う。介入期間、休止期間を設けることによって介入による変化の程度を検証する。また、機能回復が十分であった患者とそうでなかった患者の歩行パターンを病巣、症状からも検討を行い、臨床における介入の適応症例についてより詳細に明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に自動関節角度計の購入を行う予定あったが、実験の進行と機材調達手続きの遅れのため購入が行えなかった。そのため次年度に大学内に自動関節角度計の部品を追加購入する予定である。また、今年度予定していた海外への出張に関しても行わなかったため、今年度助成金の使用額が予定よりも少なかった。 次年度の研究成果の発表に関しては、日本体力医学会中国四国地方会(徳島、鳥取)、臨床神経生理学会(高知)、World Congress of Neurology(オーストリア)で学会発表を行う予定であり、旅費として使用する。その他成果の公表のための論文への掲載費、英文校正費に使用予定である。
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