2012 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷患者に対する人工神経接続を用いた随意歩行再建法の開発
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24700579
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
笹田 周作 生理学研究所, 発達生理学研究系, NIPSリサーチフェロー (80624824)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 歩行再建 / 脊髄損傷 / 随意制御 / Brain-computer interface / リハビリテーション |
Research Abstract |
上肢筋の随意筋活動により制御される連発磁気刺激を脊髄の歩行中枢へ行う事により上肢筋-腰髄間の人工的な神経経路を形成し、脊髄損傷患者自身の損傷されずに残った機能を利用した“随意歩行”の再建を目指す。平成24年度は健常被験者にて以下の成果を得た。 1) 歩行様運動の誘発に最適な刺激条件について以下の2点について有望な結果を得た。 歩行の誘発に最適な脊髄への連発磁気刺激の刺激部位を検討した。刺激コイルの中心が腰椎の第1-第2椎間、及び第2-第3椎間に位置した場合、歩行運動を高確率(10名中7名)で誘発可能である事を明らかにした。さらにこれらの椎間レベルで誘発される歩行運動パターンは、コイルが右側に位置した場合右足が前方、左足が後方へ振り出される運動が増強し、コイルが左側へ位置した場合左足が前方、右足が後方へ振り出される運動が増強した。これらの結果は実験準備にかかる時間を減らし患者さんへの適応を容易にするだけでなく、歩行運動パターンを形成する神経回路網が左右に存在する可能性を示したという点で学術・臨床双方に高いインパクトを持つ。 随意的な歩行運動中に足底部の体性感覚を電気刺激にて惹起することにより歩行様運動を増強可能である事を明らかにした。さらにこの体性感覚入力は人工神経接続により誘発された歩行様運動へも有用である結果を得た。この結果は足底部の体性感覚が歩行パターンの形成に寄与する事を示すと伴に、より大きな歩行運動を誘発出来るという点で臨床応用にも意義がある。 2)上肢筋-腰髄間の人工神経接続を免苛立位姿勢にて適用することで、前方へ移動することに成功した(健常被験者2名)。これは脊髄損傷患者さんでも免苛することで人工神経接続を使用して随意的な歩行を再建できる可能性を示す結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請は脊髄損傷患者さんの随意的な歩行運動の再建を目指している。本年度の研究成果は歩行運動の誘発に最適な脊髄磁気刺激の刺激部位及び刺激方法を明らかにした事、立位姿勢にて人工神経接続による歩行に成功したという事である。これらの結果は平成24年度中に計画していた、刺激パラメータの検討、立位姿勢における人工神経接続の有効性の検証、という目標を達成している。また、現在福島県立医科大学にて、患者さんの選定を行っており、臨床試験が可能な段階にある。これらの事項を総合的に判断し、本申請の進捗状況はおおむね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、刺激パラメーター、免苛立位姿勢における人工神経接続の有用性が健常被験者にて十分に検討され、大きな成果を得た。従って、平成25年度では患者さんへの臨床応用を進めていく予定である。現在既に福島県立医科と協力し、人工神経接続を適用する患者さんの選定に入っている。疾患は脊髄損傷に加えて、脳梗塞による下肢麻痺患者も対象とする予定である。 患者さんの人工神経接続の有効性を半仰臥位で検討した後に→立位(部分免荷)→立位姿勢へと段階的に応用範囲を拡大して検証する。この為の実験設備は既に福島県立医科大内に設置済みである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度 研究費の使用計画(金額単位:千円) 消耗品:100、国内旅費:100、国外旅費:300、謝金:100、その他:154.590、 合計:754.590
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