2013 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷患者に対する人工神経接続を用いた随意歩行再建法の開発
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24700579
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
笹田 周作 生理学研究所, 発達生理学研究系, NIPSリサーチフェロー (80624824)
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Keywords | 歩行再建 / 脊髄損傷 / Brain-computer interface / 随意制御 |
Research Abstract |
本研究は随意的な上肢筋活動により制御される連発磁気刺激を脊髄歩行中枢へ与えることにより、上肢筋―腰随間の人工神経接続を形成し、脊髄損傷患者自身の損傷されずに残った機能を利用した“随意歩行の”再建を目指している。研究代表者は昨年度までに、上肢筋―腰髄間の人工神経接続を用いて健常被験者にて下肢歩行用運動の随意制御を達成し、最適な刺激パラメータの検討を報告した。 最終年度はこの上肢筋―腰随間の人工神経接続を2名の完全脊髄損傷患に適用し、下肢歩行運動の随意制御を試みた。2名の対象患者は両者ともにASIAスコアAで完全損傷であった。損傷からの期間は両者とも1年以上経過した慢性期であった。損傷領域は1名が第11胸髄、もう1名は第3胸髄であり、両者とも下肢筋群の随意的な運動及び感覚機能は完全に失われている状態であった。一方で両者ともに上肢の随意運動は可能であった。 半仰外姿勢で上肢筋―腰随間の人工神経接続を付加し、対象患者が上肢筋活動による麻痺した下肢歩行運動の随意制御を試みると、下肢の歩行用運動が発現した。この歩行用運動は人工神経接続を切断すると停止した。患者はこの人工神経接続を利用して麻痺した下肢の歩行用運動を発現させ、さらに歩行の開始・停止、及び歩行サイクルを随意的に制御することが可能であった。本実験ではこの人工神経接続を3ヶ月間にわたって数度行ったが、人工神経接続が無い状態で下肢の随意的な運動機能は回復していなかった。 最終年度で得た結果は完全麻痺状態にある脊髄損傷患者が下肢の歩行運動を随意的に制御できるという点で脊髄損傷患者の歩行再建を実現しうる大きな進歩であると考える。今後は免苛立位、立位、自由行動下といった、より日常に近い状況での随意歩行の検討、及び人工神経接続を繰り返し適用することによるリハビリテーション効果の検討を行っていくことで、随意歩行の再建に更に大きく近づくと考えられる。
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Research Products
(3 results)