2012 Fiscal Year Research-status Report
院内の安全な自立移動を目指したDMD患者の操作能力抽出と移動システムの開発
Project/Area Number |
24700591
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小竹 元基 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10345085)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | インターフェイス / 操作能力 / デュシャヌ型筋ジストロフィ / 電動車いす / 手指変形 |
Research Abstract |
本研究では,デュシャヌ型筋ジストロフィ(以下,DMD)患者の病院内における安全な移動を確保するための電動車いす移動システムの構築を目指す.現状,筋活動の劣化から手指変形を伴い,ジョイスティック操作が困難である.そのため,介助者による移動のみの実現方法しかない.そこで,そのような対象者に対して,どの特性の劣化がジョイスティック操作を困難にしているかを定量的に把握し,DMD患者の身体機能と電動車いすを院内で使用する際の操作行動の関連性から操作能力を定義し,新たなインターフェイスの開発を行う. 本年度は,対象者の特徴を把握し,その特徴からインターフェイスの設計要件の抽出を行った.DMD患者のインターフェイスの設計要件を設定するため,病院へ訪問し,医師,作業療法士,患者による実験結果から, 以下に示す設計要件が得られた.1.DMD患者はアームレストへ手を伸ばすことが出来ないため,入力装置を手の位置に移動できること.2.指の初期位置からの変位が微小であるため,初期位置合わせの手間が少ないこと.3.筋力が弱く疲れやすいため,適度な力で操作出来ること.4.電動車いす操作を行うため,院内における安全性を考慮すること. また,DMD患者5名の手指データの分析を行った結果,手指変形には個人差が大きく,その変形を許容するため,インターフェイスが柔軟に手指変形に対応する必要があることがわかった.更に分析を進め,健常者と比較すると,指先力が低下しやすいが指先の動きは比較的残りやすいことがわかった.その結果,指先の動きをインターフェイスへの入力パラメータの候補として抽出することができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,デュシャヌ型筋ジストロフィ者を対象とする電動車いすの開発であり,院内における対象者の生活,症状,特性を把握し,それらの整理したデータに基づくインターフェイスの開発を行う方針である.本年度はその対象者に対してデータを採取,そのデータに基づくインターフェイスの設計要件と試作機を開発予定であった.しかし,対象者の体調不良も続き,その影響から対象者に対する特性計測時期が遅くなり,予定していたインターフェイスの設計要件の設定,試作が遅れたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
◎DMD患者の操作能力の定義と操作能力レベル分類手法の提案:前年度設定したインターフェイスの設計要件に基づき,インターフェイスの設計を行い,そのインターフェイスを用いて,電動車いすを操作するために必要な能力の把握をPCシミュレータを用いて行い,そこで得られたデータから,院内で移動するために必要な操作能力の定義とその分類を行う. ◎院内を模擬したシミュレータによるインターフェイスの評価と操作行動の把握:医師の健康診断の結果から,対象者の健康状態も把握した上で,開発したインターフェイスを用い,病院内を模擬したシミュレータにより評価し,その場面の状況と行動を計測し,データベースを構築しながら,戸惑い行動や不安全行動の抽出を行う. ◎操作能力に伴う適合と移動システムの方策の抽出:ケーススタディとして,操作能力レベルにより分類されたDMD患者の特性データベースをもとに,リハエンジニアの協力のもと,移動システム(操作系,移動体)としての適合を検討し,どのような効果,効用があるかをまとめ,移動システムとしての設計指針,設計要件をまとめる.本検討においては.研究協力者である病院での医師,作業療法士立会いのもと,十分に安全を確保し実験を行う. ◎DMD患者の簡易型移動システムの検討:操作能力レベルにより分類されたDMD患者に対して,カスタムケア可能な移動システムを提案する.制約条件として,既存の電動車いすに簡易的に搭載することを考え,操作能力適応型移動システムの提案し,評価する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
デュシャヌ型筋ジストロフィ患者の電動車いすに簡易的に取り付けることが可能なインターフェイスの評価を行う予定であり,まずは構築した電動車いすシミュレータによる模擬環境実現における改良を行い,その後,実際に電動車いすに取り付け,協力可能なDMD患者を対象としたデータの採取,開発したインターフェイスの評価を,研究協力頂ける病院で行う予定である.その際,旅費や実験参加頂いたDMD患者の方,実験補佐員に対するアルバイト費としての謝金が必要である.また,そこで得られた結果を,作業療法士の分科会において話題提供し,DMD患者のための電動車いすインターフェイスの適用に関する方向性について議論する予定であり,会議費等が必要となる.
|