2013 Fiscal Year Research-status Report
実用的な筋電義手実現のための上肢切断者を考慮した動作・速度推定システムの構築
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24700593
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
末光 厚夫 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (20422199)
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Keywords | 医療・福祉 / 生体機能代行 / 筋電義手 / ニューラルネット |
Research Abstract |
本年度は,外部入力によってリアルタイムに動きを制御可能な3DCGハンドの構築を進めるとともに,動作速度推定手法について実用的観点から検討し,その実装と検証を行った.多チャンネルのEMG信号から直接速度を推定するためには,多次元の入力ベクトルと動作速度というアナログ量の間の関係をモデル化する必要がある.これは関数近似問題であり,クラス分類問題よりも難度が上がるため,動作識別において有効であったパターン識別手法が必ずしも有用ではない.連続値を細かいクラスに分割することによって多クラス分類問題にすることも可能であるが,そうすると計算量が増大する上に,各クラスに属するサンプルの数を確保するために,非常に多くのサンプルが必要となってしまう.実用的な動作速度推定手法を実現するためには,①複雑な入出力関係を表現できる;②学習および推定のための計算コストが低い;③冗長入力に対してロバストである;④汎化能力が高い;という性質を持った関数近似器が求められる.そこで,優れた関数近似能力をもつ選択的不感化ニューラルネット(SDNN)を関数近似器として適用することで,多チャンネルのEMG信号から動作速度を推定するシステムを構築した.このシステムは,各チャンネルの積分EMG信号とその過去200msの平均値を正規化してSDNNに入力し,各時刻における動作速度との対応関係を学習できるものであり,センサの位置調整や特徴量の選択などの事前準備が不要で,計算コストが比較的低く,サンプル取得や学習にかかる時間も短いという特徴がある.これを用いて健常な5名の成人男性に対して動作速度推定実験を行った結果,対象とした6種類の基本動作(手首屈曲・伸展,握る,開く,前腕回内・回外)のいずれについても,速度を精度よく実時間推定できることが示された.また,現在の速度を10~30ms前に予測可能であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EMG信号を外部入力としてその動作速度推定結果に基づいて動きを制御可能な3DCGハンドの構築,および実用的観点に立った多チャンネルのEMG信号から直接動作速度を推定するシステムの構築については一定の成果が得られているが,3DCGハンドに合わせて動作している際のEMG信号とその動作区間の関節の角速度とを高精度で自動的にマッチングさせる手法の確立とその検証が十分できておらず,年次計画の一部が達成できていないため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,更に多くの被験者からデータを収集し,動作および速度推定システムの有効性の検証を行うことによって,実用化する上で想定される問題点を洗い出すとともに,動作および速度推定精度の更なる向上に取り組む.特に,評価実験を繰り返し行うことによって,EMG信号の特徴量やSDNNのパラメータについて再度検討を行い,システムの改良を図る.これと並行して,3DCGハンドを用いてさまざまな動作呈示を行い,3DCGハンドに合わせて動作している際のEMG信号と関節の角速度のデータを多数の被験者から計測する.次に,得られたデータから提示動作の情報と実際に計測されたEMG信号との関係を分析し,被験者間の共通点と相違点を明確にする.これをベースにして,動作区間の伸縮やデータ補間手法を用いて計測したEMG信号と動作速度を対応づける方法を確立し,その機能を現有のシステムに実装する.そして,構築したシステムを用いて,動作区間をブラインドとした(EMG信号のみを用いた)動作速度推定実験を行うことによって,提案手法の有効性を検証する.最後に,研究全体を考察し,得られた成果をまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3DCGハンド提示と動作速度推定のための専用PCを個別パーツ購入によって自作したこと,および,動作速度推定に必要なEMG計測をボランティアで協力してもらったことにより,当初予定していた金額よりも支出額が少なくなった. 実験やデモの利便性を上げて効率化を図るために,3DCGハンドの提示や動作速度推定の処理が可能なノートPCを購入する.また,EMGの計測に必要な筋電計用ディスポーザブル電極,実験消耗品(アルコール消毒液等),および大量の計測データを保存するためのHDD記憶メディアを消耗品として購入する.加えて,EMG計測等の実験に協力してくれる被験者に対して謝金を支出する.そして,研究打ち合わせや研究成果発表に係る旅費,および,論文発表に係る経費に使用予定である.
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