2013 Fiscal Year Research-status Report
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24700599
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
大瀧 保明 神奈川工科大学, 創造工学部, 准教授 (50344693)
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Keywords | 医用機器 / 膝蓋腱反射 / センサ / 運動計測 / 携帯型装置 / 診断支援 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、中枢神経疾患や脊髄疾患評価の基本的手技となっている膝蓋腱叩打検査において、臨床医が視認している反射応答特性を適切に数量化する方法を提案することである。特に日常業務においても携行可能な診察支援機器の開発を目指している。 当年度は下腿に装着して用いる運動計測システムの製作と検証に注力した。膝蓋下の至適叩打位置で皮膚上に設置して用いる力覚センサについて較正を行った。また、下腿ブレース上に設置した6軸慣性センサによる3次元姿勢推定の誤差傾向、および推定精度の検証を実験により行った。いずれも、実験は若年健常男性を被験者として実施した。成果として,叩打力と姿勢の計測に関しては、基準となる他の計測法との比較においてその妥当性を示すことができたことが挙げられる。 1)センサの較正に関し、6軸慣性センサについては補償回路付きセンサであったことから、これを利用することとした。実質的に検証は静的状態下での計測値のバイアス、ノイズレベルについて実施した。力覚センサについては市販の較正済みロードセル(試験機)との比較により行った。また、叩打力計測におけるセンサ自体の応答性を調べた。 2)膝蓋腱反射応答における、6軸慣性センサを用いた下肢姿勢の計算精度について、光学式モーションキャプチャとの同時計測により評価し、角度精度と誤差傾向を明らかにした。光学式モーションキャプチャは借用で利用するよう計画を変更した。 3)シグナルコンディショナ等のセンサ周辺回路を小型化して作製した。昨年度までは周辺回路や記録装置は外部に設置していたが、これをすべて集積して実装することができた。運動計測システム部については、目標とする携行可能な診察支援機器としての概形を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度当初の研究内容として、1)センサ周辺回路の実装、2)計測システムの検証、3)反射応答の評価指標の確立、4)臨床的妥当性の検討、の4つの項目を挙げた。 本年度の成果は、提案する運動計測システムによる3次元姿勢推定と叩打力計測に関する妥当性を確認したこと、また、増幅回路等のセンサ周辺回路を携帯可能なサイズにして実装できたことである。ただし、研究計画に述べていたいくつかの検証は達成できなかった。下腿部の骨軸方向に対する姿勢センサの取り付け誤差の評価とその特徴量評価への影響については、検討を次年度へ持ち越しとした。また、力覚センサと一体化した叩打部による反射誘発の再現性と検出精度の数値的検討も不十分なままである。以上より、運動計測部のハードウェアに関する項目1)については計画どおりに達成、項目2)については、部分的に達成と評価する。 項目3)では、前々年度に持ち越し課題としていた関節トルクの推定精度検証について、機器部品の選定と開発着手が遅れる結果となり、その取り組み至らなかった。このことから、叩打刺激と膝進展トルクの入出力応答の関係性を定量化する方法に関しては、実施を保留した。 項目4)では、健常例と数例の神経中枢疾患の症例にて、病態、重症度の弁別に対する検討を行う予定であった。しかしながら、項目3)に関する検証不十分から、臨床における被験者の依頼が適わず実験を保留した。 現時点の進捗状況と、研究代表者に研究が実施不能な期間が生じたことを考慮し、先に届け出のとおり補助事業期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
「計測精度と信頼性の実験的検証」:当年度に持ち越しとした下記の課題について、実験を行って明らかにする。実験は健常者を被験者とし、叩打力等の実験条件、および反復の方法について実験計画を検討のうえ実施する。 1)下腿に装着して用いる運動計測システム、力覚センサと一体化した叩打部を用いた反射誘発の再現性と検出精度の数値的検討 2)下腿部の骨軸方向に対する姿勢センサの取り付け誤差の評価と特徴量評価への影響の検討 3)反射応答における下肢振り上げの関節トルク推定の精度、および比較対象となる既存の評価法に対する妥当性の検討 「評価指標の確立」:叩打刺激と膝進展トルクの入出力応答を定量評価する方法を提案する。伸張反射系の反射回路のフィードバックモデルの想定のもとに、叩打から筋力トルクが発揮されるまでの伝達特性を評価する。特に、1)叩打と膝進展トルクの入出力応答を低次の伝達関数として同定する方法、2)フィードバック回路の特性としての評価、3)計測試技から適切な叩打入力と運動出力を選択して同定信号を得る方法、の3課題について実施する。 「臨床的妥当性の検討」:医師との連携のもと、提案手法による評価の妥当性と臨床利用へ向けての問題点を実験により検討する。特に健常例と数例の神経中枢疾患の症例にて、病態、重症度の弁別に対する有用性を検討する。倫理委員会の審査は実験実施機関にて行うこととした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当年度において、関節トルクの推定精度検証をはじめとするいくつかの実験計画が取り組み至らなかった。また妥当性の検証不十分から、臨床における被験者の依頼が適わず症例での実験を保留した。加えて、年度後半に研究代表者が病気治療のため入院し、研究課題の遂行が困難であった。旅費に申請していた国際学会は参加が叶わなかった。このことから補助事業期間の延長を申請し受理された。 反射応答における下肢の関節トルク推定について、その検証に必要となるトルク計測器、センサ、実験用治具の購入、製作費用に充てる。また、叩打力、筋電位、慣性センサの計測データを同期してワイヤレスで計測できるようシステムを構築する。計測システムの構築と改善にともなう電子部品、部材の購入費用を消耗品費に請求する。被験者の依頼と学外での実験の実施に伴う謝金を請求する。症例での実験結果を加えて、成果を生体医工学関連の国内外学会に投稿し、その旅費、および学会参加費を請求する。
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