2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒューマン・ロボット・インタラクションを用いた対戦型ゲームによる介護予防システム
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24700603
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Research Institution | Tokyo National College of Technology |
Principal Investigator |
北越 大輔 東京工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50378238)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 介護予防 / ヒューマン・エージェント・インタラクション / 強化学習 / 知能ロボット |
Research Abstract |
本研究では,高齢者や体の不自由な人々を対象に,ロボットを用いた対戦形式のゲームにもとづく運動による介護予防システムの実現を目指す.利用者にとって身近であると予想されるゲームを基盤に,今後衰弱する恐れがある身体部位の機能維持・回復を促す運動要素をゲームに組込み,ロボットと競い合いながら介護予防運動を実践してもらう.ロボットは人工知能的アプローチを通して効果的な振舞を獲得し,利用者の習熟に応じて常に適切な対戦相手となる.利用者はロボットに勝つ方法を考える必要が生じ,継続的な介護予防を実現可能であるとともに,認知症の予防効果も期待できる. また,人間とロボットの対話的やり取りの繰返しを通じ,人間がロボットを身近な存在として受け入れ可能となることを目的としたヒューマン・エージェント・インタラクション(HAI) の考え方を導入することで,高齢者や障害者がロボットに親しみを持ち,楽しみながら介護予防運動を継続可能なシステムを構築する. 今年度はシステム構築に向けた準備として,近隣の保健福祉センターやケアセンターのスタッフから聞き取り調査を実施し,提案システムにおける安全面でのリスク,運動効果,およびシステムへのロボット導入の効果等に関する意見を収集した.また,ロボットが利用者に与える印象や,ロボット導入時の効果に関する事前調査として,保健福祉センターに訪れる高齢者を対象にロボットを用いた簡単なデモを実施した上でアンケート調査を行い,ロボットの種類(外見)によって高齢者が抱く親近感に大きな違いがある,といった知見を得た.加えて,システム構築に必要なロボットおよびモーションキャプチャ等に関する基本的機能の調査や,プログラムによる機能実装法を修得し,ゲーム環境におけるロボットの行動学習法として適用される強化学習法の枠組みについて検討した.これらの調査結果をまとめ,研究会にて発表を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在申請者は介護予防システムの試作版を構築し,システムの基本的性能を評価すべく実験準備を実施している.当初,システム構築と実験実施は昨年度時点で完了している予定であった.しかしながら,提案システムが高齢者の肉体的精神的健康に少なからぬ影響を与える可能性があるため,理学療法士,作業療法士やケアセンター,保健福祉センタースタッフ等からの助言に対して慎重かつ忠実に対応する必要があった.加えて,システムを実際に利用者(高齢者)へ使用してもらう際にも,怪我等のリスクを極力少なくしたいとの意識の下,実験準備を慎重に進める必要がある. その一方で,専門家からのヒアリングと並行して行った考察,および利用者へ実施したデモの結果,利用者にとって親近感を抱かせるようなロボットの外見や振舞,利用者の健康状態に応じた適切な運動強度の範囲等,システムの実現に向けて重要な情報を収集することができた. また,運動教室見学やデモ実施を通して,介護予防への興味を持つ多くの高齢者から実験協力に対する承諾を得ることができたため,実験環境の整備,ロボットの設定等,試作版システムの構築を完了次第,段階をふんだ実験を実施できる状況となっている. さらに,各施設スタッフとの意見交換についても昨年度はじめから積極的に実施してきた結果,H25年度中盤以降に予定している,各施設へ介護予防システムを導入してのより長期間に渡る実験へ向けた調整も順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,提案システム試作版の構築作業を進めている.システムが完成次第,介護福祉施設へ機材一式を持ち込み1~数週間程度の実験を実施して,ロボットへの印象を含むシステムの使用感,システムの利用前後における心身状況の変化等についてアンケート調査を行う. アンケート結果,および施設関係者からの意見をもとに,提案システムの妥当性について評価する.特に,介護予防運動を実施した効果,対戦ゲームを実施した感想,ゲームのルールについての意見を重点的に抽出し,システムの拡張・改良に向けた考察を行う.また,提案システムを利用して遊んでみたいその他のゲームについても調査を実施する.加えて,これまでにまとめられた研究成果をもとに国内外の学会・研究会における成果発表も実施する. その後,上記実験結果をもとに介護予防システムの拡張・改良を実施する.HAIの観点から,利用者-ロボットの相互作用がより効率的かつ,利用者の介護予防運動にとって効果的なゲーム設定の変更やゲーム種類の追加,介護予防運動の追加・修正について検討していく. 検討結果に基づくシステムの改良・拡張の後,1~数ヶ月程度,提案システムを介護福祉施設へ持ち込み実験を実施する.複数利用者に長期間継続してシステムを利用してもらうことで,システムの長期利用に対する利用者のストレスの有無,長期間継続して介護予防運動を実施してもらうことによる効果,および,利用者の心身状況に応じてどのような形態のゲームが好んで選択されるか,といった項目について,実験前後,および実験期間中の特定の時期にアンケート調査を実施する. 実験結果をもとに,より実用的な介護予防システムの枠組みについて検討するとともに,これまでの研究成果を取りまとめた上で国内外の学会・研究会で成果発表を行い,関連する学術雑誌への論文投稿を実施する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に引き続き実施する実験において,より多数のロボットが参加するゲーム環境を実現するため,プログラム実装可能な知能ロボットの複数台購入を予定している.加えて,各ロボットの視覚となる,利用者の動作感知センサについてもロボットと同一台数購入する予定である.これらロボットおよびセンサを活用することで,利用者を含む複数のプレイヤーによるゲーム環境を構築し,長期間継続して楽しみながら運動を実施できるような,自由度の高い複数種類のゲームを実現可能とすることを目指す.また,実験データを複数の利用者から並行して収集可能とすることに加えて,利用者の心身状況に応じた複数のゲームを同時並列で実行可能な実験環境を提供可能とする. 上述の実験環境を実現するためには,ロボット群およびセンサ群から得られる情報を統合し処理する,高性能かつ携帯に適した計算機が必要であるため,高速CPUと高性能GPUを搭載したノートPCを複数台購入し,利用者にストレスを与えずに実験を実施可能な実験環境構築のための基盤とする. ロボットを活用することで介護予防を実現することを目的としたシステムに関する研究例は乏しく,最新の理論や研究例について学ぶため,ロボット工学や介護福祉,およびそれらの周辺技術に関連する専門書や学術論文を購入して研究進捗の効率化を図る.加えて,実験により得られたアンケートデータの整理や実験環境の整備のため,相当数の研究協力者が必要となるため,協力者のための謝金も予算として計上する. また,今年度実施予定の二回の実験成果を取りまとめ国内外の学会・研究会等での発表,および学術雑誌への論文投稿を検討しているため,研究代表者の交通費,宿泊費,学会参加費,および学術雑誌への投稿費用等も併せて予算計上している.
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Research Products
(1 results)