2012 Fiscal Year Research-status Report
感圧ウェアによる高齢者のライフログ計測とこれを用いた介護支援システムの開発
Project/Area Number |
24700604
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
藤岡 潤 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20342488)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | センシングデバイス / ライフログ / 介護補助 |
Research Abstract |
日本では65歳以上の人口が総人口の2割を超え、さらに増加の一途にあるなか、高齢者介護に伴う問題は今後ますます重要な課題となる。近年、介護者の不足によりいわゆる在宅介護、訪問介護が増加しつつあり、そうした在宅の要介護者の日常の生活スタイルや健康状態をケアしつづけることは介護者の大きな負担となっている。以上を背景として、本研究では、要介護者の生活情報、健康情報をライフログとして詳細に取得可能なウェアラブルデバイスおよびそのインターフェースユニットを開発し、同システムにより要介護者の総合的な健康管理システム、安否確認システムを構築することを目的とする。 平成24年度は①感圧ウェアの開発、②テレメトリユニットの開発を行った。感圧ウェアに用いられる感圧導電繊維はステンレスとポリエステルの混紡糸で、伸縮や圧縮によりステンレス繊維の接触率が変化し、導電性が変化することで、一種のひずみゲージのような利用が可能となる。繊維の製作と混紡、さらにこれを用いたウェアの縫製について、県内繊維メーカー(黒田商事)と共同で開発した。また②介護利用に適したテレメトリユニット(図3)の開発を行った。多チャンネルAD機能を有するプロセッサ、体幹の動きを計測する加速度センサ、それらを携帯端末へ送信する無線ユニット、長時間の利用が可能なバッテリを、一ユニットに集約した試作ユニットを開発した。 ライフログのインターフェースとしてテレメトリユニットがよく使用されるが、従来のものはチャンネル数、バッテリ量の制限から、実際に生活を綿密に長時間モニタリングするには不足であった。今回、本感圧ウェアによる日常生活の持続的なモニタリングや安否確認といった用途に適したインターフェースユニットを総合的に開発したことで、高齢化社会におけるライフログシステムを用いた効果的な介護支援システムが構築できようになった点に大きな意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感圧ウェアに用いられる感圧導電繊維はステンレスとポリエステルの混紡糸で、伸縮や圧縮によりステンレス繊維の接触率が変化し、導電性が変化することで、一種のひずみゲージのような利用が可能となる。24年度はこの繊維について、組成と撚糸方法を検討し、新たな関節繊維の製作と混紡を行った。さらにこれを用いたウェアの縫製を行い、従来より軽量で着心地のよい感圧ウェアを開発した(以上の開発は、県内繊維メーカー(黒田商事)と共同で行った)。これは、当初の目的であるライフログシステムのウェアラブルデバイスとして、使用者に対して過度のプライバシーの侵害の無さ、生活行動全般をモニタリング可能な機能、さらに通常衣料としての着心地やメンテナンス性を満たすため、十分に目的にかなうデバイスの作成が達成されたといえる。 また、この感圧ウェアの計測システムユニットとして、より長時間で、多様な生活行動の計測、認識に適したテレメトリユニットの開発を行った。具体的には、従来製品では2チャンネルADしかなかったポートを、10チャンネルAD機能を有するプロセッサに変更し、同時にこれまで同様、体幹の動きを計測する加速度センサ、それらを携帯端末へ送信する無線ユニット、長時間の利用が可能なバッテリを、一ユニットに集約した試作ユニットを開発した。実際に感圧ウェアに接続し、生活行動の計測が可能であることを確認した。本目的であるライフログのセンシングシステムとして、従来より機能向上を果たすことができた点で、目的を達成したものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、24年度に開発した感圧ウェアおよび計測システムにより、動作の計測と認識、呼吸等のバイタルサインの検出に関する実験を行う。計測した結果の妥当性に関しては、一般のモーショントレーサ、バイタルセンサ(呼吸等)による計測結果と比較して、その感度、精度の検証を行う。また、実際の日常生活下における様々な活動およびその際のバイタルを計測し、被験者の行動分析、生活習慣や健康状態の認識を行う。各認識アルゴリズムには、ディープラーニングを利用し、そのp認識精度の向上を図る。要介護者を対象とした同試験については、石川工業試験場リハビリテーションセンターおよび京都工芸繊維大学(桑原教彰准教授)に協力を依頼する。リハセンは感圧ウェアの検証等で以前試験を依頼した経緯があり、また京都工芸繊維大学では現在、昨年度の感圧ウェアにより介護士側の介護動作の計測と分析を実施中であるため、これを発展、継続する。特に本素材(ただし寝具にシーツとして利用)による呼吸等の微弱な信号計測を昨年度行った結果、呼吸数の確認、無呼吸状態の検知が、高い精度で可能であった。この結果を感圧ウェアにフィードバックすることにより、単一のウェアで日中の活動評価と就寝時のバイタル確認が可能な新しいデバイス、システムを提唱し、その効果を実証する。 なお、上記試験の結果をアウトプットしつつ、各ハードの小型化、省電力化、計測精度、認識精度の改善を25年度も推進する。また、被験者数、計測時間を増やし、データの信頼性、デバイスへの印象調査を行い、より介護の場で利便性の高い形にシステムを発展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)があるが、これについては平成25年度におけるテレメトリユニットの改良に使用する。 25年度は、感圧ウェアによる、動作の計測と認識、呼吸等のバイタルサインの検出実験である。検出結果の精度検証に一般のモーショントレーサ、バイタルセンサ(呼吸等)を用いるため、代表的なモーショントレーサ、バイタルセンサについて購入を行う。また、実際に購入するもの以外にも、石川県リハビリテーションセンターの機器を使用することにより、よりデータの信頼性について検証を深める。他に、実際の日常生活下における様々な活動およびバイタルを計測し、行動分析を行うが、一般的な健康管理や運動管理に関する計測は本校教職員や学生を対象として行う。ただし、要介護者を対象とした同試験については、石川工業試験場リハビリテーションセンターおよび京都工芸繊維大学(桑原教彰准教授)に協力を依頼する。これら外部機関への依頼を予定している。 また、実際の計測試験を通して、データの蓄積を行う中で、被験者の要望を反映した感圧ウェアの改良(着心地、通気性、計測部構成など)を行う。またテレメトリユニットに関しても、現在は試作機であり、回路等は剥き出しであるが、実際の長時間利用や生活環境下での乱暴な使用を考慮して、より小型化、省電力化のうえ、外装のパッケージングが必要となる。また処理部についても、計測精度、認識精度の改善を進める。こうした感圧ウェアの改良開発ならびにテレメトリユニットの完成とパッケージングのために研究費を使用する予定である。
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