2012 Fiscal Year Research-status Report
緊張性振動反射と空気圧人工筋による拮抗運動を利用した上肢運動訓練装置の開発
Project/Area Number |
24700605
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
柴田 芳幸 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 助教 (50614319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 緊張性振動反射 / リハビリテーション工学 / 空気圧人工筋 |
Research Abstract |
通常の筋力訓練は,ダンベル等の重りを持った状態で重力に対し抗う向き(大抵は鉛直上向き)に腕や身体を動かし,筋に負荷をかける訓練を行う.本研究では,振動刺激による緊張性振動反射(TVR:Tonic Vibration Reflex)と外力による関節の駆動を併用することにより,神経-筋力増強訓練が行えるのではないかと考えた.TVRは脊髄を経由する反射であり,この反射による筋収縮と,外力による関節駆動を行うことで,任意の筋の遠心性収縮と求心性収縮を,選択的に行うことができ,神経リハの一助になるのではないかと考えた.本研究ではまず基礎技術の構築のために,既製品の振動子によってTVRが実際に誘発されるのか実験を行った.被検者は健常者二名で,実験課題は実際に作業療法の現場で行われているようなリーチング動作とした.着座した状態にて机上にあるペグボードのペグを右手でつまみ,指定の位置へペグを運ぶリーチング動作を行っているときに,右上腕三頭筋のTVR誘発によりリーチング動作が阻害されるかどうか,ペグの軌道を三次元動作解析装置を用いて計測した.また,被検者の右腕はポータブルスプリングバランサに乗せ,重力の影響をなるべく除外するようにした.振動子は音響用(Vp4,アクーヴラボ製)を用い,100Hzで被検者が肘を屈曲させている間,振動を上腕三頭筋へ与えた.このため,TVR誘発により上腕三頭筋が収縮すると肘は伸展するので,肘の屈曲動作は阻害されると予想した.実験の結果,振動を与えていないときは水平面におけるペグの軌道が最短距離を通っていたのに対し,振動を与えたときは右に膨らむ(右肘が伸展する方向)軌道を通っていたことがわかった.このペグの軌道の変化から,市販の振動子を用いて健常者の上腕三頭筋のTVRを誘発できたことが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の目的は大きく以下に示すような三段構成になっている.1)基礎技術の構築として,既製品の振動子によって健常者の上肢骨格筋においてTVRが実際に誘発されるのか.2)誘発された場合どれくらいの刺激でどの程度の関節駆動力を発揮するのか.かつアクチュエータによって肘関節を強制的に駆動できるような実験装置を開発する.3)脳卒中片麻痺者や,腕神経層麻痺者に使用してもらい,筋力増強(回復)に効果があるか評価検討を行う. 当初は,研究初年度で2)のTVRの誘発条件の推定,TVRによる関節駆動力の測定,および外力による関節駆動装置の開発まで終えることを目標としていた.現状では,1)のTVR誘発確認実験が行えたところまでが進捗である.この研究の遅れの原因は,申請者の所属が国立障害者リハビリテーションセンター・研究所(以下,国リハ)から,東京都立産業技術高等専門学校(以下,産技高専)へ移ったことが挙げられる.国リハでは流動研究員の職であったため,ほぼ一日のすべての時間が研究に費やせたが,現職の産技高専では助教の職であるため,授業と校務と学生指導,研究室の立ち上げ等で研究活動以外にかなりの時間を必要としてしまった.平成24年度中にて授業の準備,研究室の立ち上げ,研究機材の充実をだいぶ図ることができたので,平成25年度はうまく時間を作って研究活動を行いたい.
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Strategy for Future Research Activity |
健常者の上肢リーチング動作中に,上腕三頭筋でTVRを誘発させることができたが,肩関節と肘関節を自由にした状態で実験を行うと,特に矢状面における上下方向の軌道のばらつきが被検者によって大きく,ある程度腕の位置を固定できるガイドの役割を果たす実験装置が必要であることがわかった.また,TVRを誘発させるための実験機材の種類が多く,システムが煩雑であるため,実験を円滑に行うためにもTVR誘発システム構築の必要性も挙げられる.平成25年度は,振動子とアンプ,周波数発生装置などのTVR誘発装置の統合と,リーチング動作や外力による肘関節の強制駆動などが行える実験装置の設計,製作を行い,健常者において実験を行う.TVRの誘発条件の推定,TVRによる関節駆動力の測定,および外力による関節駆動装置の開発を平成25年度の目標とする.また,TVR誘発時の筋電図計測がうまく行えていないので,これについても計測技術の向上を図る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
装置・機器類としては平成24年度に,表面筋電位計測装置と小型引張圧縮両用ロードセルを購入した.表面筋電位計測装置のメーカー選定の変更や,実験の進捗状況,学会の参加回数が予定と異なったため,33,090円の差額が生じた.平成25年度は,外力による肘関節の強制駆動を行ったり,関節トルクの測定を行える実験装置の設計・製作を行うので,その製作費として研究費を請求させていただく予定である.また,外力には空気圧人工筋を考えているが,この空気圧人工筋の圧力を制御する装置として,ナショナルインスツルメンツ製のLabviewの導入を検討している.次に,筋電図やロードセルなどの計測データを記録する,汎用のデータロガーも必要である.被検者への謝金,学会参加費,旅費,宿泊費も計上する予定である.
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