2012 Fiscal Year Research-status Report
上肢運動時の姿勢制御に対する下腿筋の発達的変化および運動遊び経験の影響
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24700611
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
清田 岳臣 札幌国際大学, 人文学部, 准教授 (40434956)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 姿勢 / 発達 / 筋厚 / 幼児 / 筋電図 / 超音波 |
Research Abstract |
幼児を対象に両側上肢屈曲運動時の姿勢筋活動パターン、および下腿筋厚について検討した。被験者は、4-6歳の幼児総計78名からなる。被験者は、床反力計上で立位姿勢を閉足位にて保持した。警告刺激の1-3秒後に提示される視覚刺激(LED信号)に反応して、できるだけ早く両側上肢屈曲運動を開始し、その上肢を水平位で随意的に停止するよう指示した。試行は、10回とした。筋電図は、7つの姿勢筋(前脛骨筋 (TA), 腓腹筋, ヒラメ筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋 (BF), 腹直筋, 脊柱起立筋 (ES))および三角筋前部線維 (AD)から表面電極を用いて記録した。ADの活動に対する姿勢筋活動潜時について分析した。腓腹筋とヒラメ筋の筋厚を超音波スキャナーを用いて計測した。 姿勢筋活動潜時は、ESに年齢による影響が認められた。ES潜時は、4歳児で最も遅く、年齢を重ねるにつれて有意に短縮した。4、5歳児ではADとの有意差がなく、6歳児ではそれよりも有意に先行した。成人ではADに対するBFの先行活動が認められている(Fujiwara et al., 2003)。しかしながら、4-6歳児では、その潜時は、ADに対して有意に遅延していた。また、成人では上肢運動時にTAの活動率が20%以下であるとされているが、6歳児ですら高確率で活動が認められた(約50%)。腓腹筋厚およびヒラメ筋厚には、有意な年齢による影響は認められなかった。また、下腿筋潜時との関連性は認められなかった。 本結果は、幼児における両側上肢屈曲運動時の姿勢制御において、体幹制御の発達が、大腿・下腿筋制御のそれに先行することを示している。また、6歳児では、大腿・下腿筋制御が、まだ発達過程にあることを示している。 今年度、予測的姿勢制御様式と下腿筋筋厚の発達様相を検討し、姿勢制御の発達研究に新たな知見を付け加えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度において、幼児の上肢運動時の姿勢制御の発達と、筋厚の変化から捉えた下腿筋の発達との関連性およびこれらの発達過程に対する運動遊び経験の影響について検討した。 既に、上肢運動時の三角筋反応時間、三角筋に対する姿勢筋の活動開始時間、および圧中心の変位と腓腹筋およびヒラメ筋の筋厚を分析を実施した。現在、姿勢変換パターン、および筋厚、運動遊び経験との関連性について、分析を実施中である。 今後、児童期のデータと組み合わせて、論文としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
児童を対象に、両側上肢屈曲運動時の姿勢制御と下腿筋厚の発達的変化について検討する。 ○対象:7歳から12歳の健常な小学生120名(各年齢男女それぞれ10名ずつ)とする。被験者は、近隣の小学校、児童会館に協力を依頼して集める。 ○装置:両側上肢屈曲運動時の姿勢制御の記録には以下の機材を使用する;床反力計、筋電計、ビデオカメラ、加速度計、発光ダイオード(LED)。下肢筋厚については、H24年度に購入したリアルタイム超音波スキャナーを使用する。 〇手順:①上肢運動屈曲運動時の姿勢制御:安静立位を保持し、「アンパンマン」に取り付けたLEDを固視している被験者に対して、ランダムなタイミングで反応開始信号を点灯させる。その点灯に反応して、被験者は両側の上肢をできるだけ素早くかつ速やかに前方水平位まで屈曲し、約3秒間その上肢位置を保持する。この試行を30秒間の休憩を挟んで10回行う。測定は、試行手順および課題に慣れさせた上で実施する。なお、転倒に備えて、被験者の横に介助者を立たせる。②下腿筋厚の測定:被験者は、安静椅子座位姿勢で、右足部を床に接地する。そのとき、右下腿の長軸を垂直軸に合わせ、足関節を背屈0°にする。内側腓腹筋とヒラメ筋、および前脛骨筋の筋厚を測定する。測定時には、超音波画像を見ながら、筋膜が平行になるように、および皮膚を圧迫しないようにプローブ操作に細心の注意を払う。 〇分析方法:上肢運動時の三角筋反応時間、三角筋に対する姿勢筋の活動開始時間、姿勢変換パターン、および圧中心の変位と前脛骨筋、腓腹筋およびヒラメ筋の筋厚を分析する。各対象児の小学校教員に紙面でのアンケートを実施し、運動遊び経験の程度および運動調節能の評価を行う。 測定を10月までに終了し、分析を12月までに終え、論文を3月までに作成する。使用機材については準備ができている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画遂行のために、消耗品として、多量の筋電図電極、その他に、プリンターインクやデータ保存用のハードディスク等に使用する。 成果発表のための旅費として、国内旅費及び外国旅費を使用する。今年度、6月の金沢での生理人類学会、11月の米国でのSociety for Neuroscience(San Diego)にて学会発表を行う。 謝金等は、実験の際に必要な測定補助者への謝金、大量のデータ処理を円滑に進めるために必要な分析補助者への謝金、英語論文校閲代として使用する。また、その他の費用として、論文投稿代として使用する。
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Research Products
(6 results)