2013 Fiscal Year Research-status Report
誤差情報の認知および修正運動の意図が随意運動学習に及ぼす影響
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24700613
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Research Institution | Uekusa Gakuen University |
Principal Investigator |
角 友起 植草学園大学, 保健医療学部, 講師 (50551363)
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Keywords | 運動学習 |
Research Abstract |
我々が行う身体動作がその正確さを保つためには、運動学習という脳可塑性の機構が不可欠である。運動学習の成立には、行われた運動の不正確さを示す”誤差“の感覚情報が必要となる。この感覚情報を基に、次の運動をどのように変化させるべきかを指示する“学習信号”が脳内で生成され、運動制御回路に可塑的変化をもたらすと考えられる。しかし誤差情報がどのような情報処理過程を経て学習信号に変換されるのかについては、不明な点が多い。本研究では随意運動学習について、誤差の情報処理過程と運動学習成立との関連を調べ、誤差の感覚情報が学習を生み出すまでの脳内メカニズムの解明に迫る。平成25年度では、誤差のモダリティの違いと学習成立との関連に着目し、随意運動課題後に誤差の情報を異なるモダリティによりフィードバックを与えた時の、運動の変化を調べた。その結果視覚による誤差情報のフィードバックのみが運動の学習を生み出し、別のモダリティによる誤差情報のフィードバックでは運動自体の変化は生じるものの、変化は持続的なものではなく、運動学習は生じなかった。すなわち視覚に誘導される随意運動課題においては、運動のきっかけとなる視覚と同じモダリティで誤差情報を提示することが学習を生み出すための必要な要素であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度は前年度に比べて教育業務が3倍に増加し、さらに学生対応、大学諸業務等で多くの時間を割かれたため、研究へのエフォートがほとんど取れない状況であった。また実験機器を設置するスペースの確保が難航し、昨年度に設置した場所からの移動を余儀なくされるなど、研究環境が整わないことが研究の進捗に大きく影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書の通り、順次研究を進めていく。具体的には、ヒトを用いて以下の実験を行う。まず明確な視覚誤差は与えないが、修正運動は必ず実行されるサッケード課題を用い、学習信号が“修正運動の意図の形成”を経て生成されるものである可能性を検証する。①一定の大きさの円の中心に向かってサッケードを行わせ、サッケード中に円の位置をずらす改変ISS(Intrasaccadic step)課題、②斜め上および斜め下の2ヵ所に呈示される視覚刺激の中間点に向かって“averaging saccade”を行わせ、サッケード中に2つの刺激の位置をずらす改変ISS課題、の2つの課題を用いて実験を進める。次にサッケード後に2つの視覚刺激(向きが逆の2つの視覚誤差)が与えられる課題(dual visual error課題)を用い、学習信号が“目標選択”を経た後に生成されるものである可能性を検証する。さらにISSによって目標をずらして視覚誤差を与えるとともに、注意を分散させる効果を持つ視覚刺激を呈示するISS + distracter課題を用い、視覚誤差に対する注意の程度がサッケード学習の進行にどのように影響するかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会での発表や論文投稿を行わなかったので、旅費や投稿料、校閲料を支出しなかった。 被験者謝金、論文投稿のための校閲料、投稿料、国際学会出張旅費、機器の改造のための費用に充てる。
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Research Products
(3 results)