2012 Fiscal Year Research-status Report
ニューロフィードバックを利用した複数運動課題の同時学習
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24700615
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
池上 剛 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信研究融合センター 脳情報通信研究融合研究室, 専門調査員 (20588660)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 運動学習 |
Research Abstract |
平成24年度は、NFによって操作する脳領野の選定を行う.fMRI脳活動計測中に,fMRIの中 似通った2つの運動課題を同時に学習することは,非常に困難である.これは,運動学習が潜在的な情報処理を基盤にしており,意識的には区別出来ても,運動学習効果の記憶領域への割り振りを担う脳部位が,異なる運動を同一の運動として潜在的に処理してしまうためだと考えられている.しかし、学習する運動課題(2つの相反する力場環境における到達運動課題)の切り替えに応じて,この脳部位の活動パターンを操作できれば,2つの運動課題を同時に学習できると考えた.本研究の目的は,ニューロフィードバック(以下,NF)という手法を用いて特定部位の脳活動を操作し,この仮説を検証する. 当該年度において,fMRI計測中に行なう2つの相反する力場環境における到達運動課題の選定を行なった.従来、いくつかの研究で報告されているように,本研究においても,2つの課題を交互に行った場合,被験者はどちらの課題も十分に学習することはできなかった.ただし,力場の大きさ,つまり到達運動中に与えられる外乱の大きさが小さくなるにつれ,2つの課題の学習達成度が大きくなることがわかった.よって,今後,fMRIの中で行なう行動実験の力場はある一定以上(具体手的には7N以上)の大きさの負荷をかける必要があることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請者は25年度より新しい研究所に異動になった.当該年度初頭に異動が決定していたため,本来予定していたfMRIの実験ができなかった.つまり,一旦実験を始めた場合,同じfMRIの計測機器で実験を行なわなければ,データの信頼性が損なわれるからである.よって,fMRIを用いた実験は今年度から行なうこととする.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,24年度に予定していた,NFによって操作する脳領野の選定を行う.fMRI脳活動計測中に,fMRIの中で使用可能なロボットマニピュランダム(Ganesh et al. 2008)を用いて2つのの相反する力場課題(課題Aと課題B)を交互に行う. 研究目的で述べたように,どちらの課題も学習できないことが良く知られているため,2つの課題の未学習時の脳活動を繰り返し得られる.このようにして,後述するデコーディング解析に必要な多くのfMRIデータ数を確保する. 2つの課題の運動学習効果を,同じ記憶領域へ割り振っている脳の責任部位は,両方の課題で共通して活動する領野の中に含まれると考えられる.よって,最初に,両課題で共通して活動する領野を特定する.次に,この共通の脳領野の中から,課題Aと課題Bを識別する情報表現を持つ領野(各課題に特異的な脳活動パターン)と持たない領野(両課題で同じ脳活動パターン)を区別する.そのために,スパースロジスティック回帰分析(Yamashita et al.2008)というデコーディング手法を用いる.デコーディングとは脳活動が符号化している心や身体の状態を「復号化(デコード)」する技術であり,脳活動パターンにどのような情報が表現されているかを読み解くことができる.この手法によって有意な確率で課題Aと課題Bを識別出来ない脳領野は,2つの力場課題で共通した情報処理が行われていることを意味する.このような領野が,責任部位の候補であり,NFを用いて脳活動を操作する対象の脳領野として選定する. 最後に,この脳領野のボクセル(脳活動画像の画素)の活動強度分布が空間的な相関をもたないような2つのパターンを,課題Aと課題Bの実行時に NFを用いて生成する目標の脳活動パターンに設定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,本年度から繰り越した分も含めて,助成金を使用する.上述したように,24年度に予定していたfMRI実験ができなかったことにともない,実験被験者に対する謝礼などその実験にかかる費用が本年に繰り越された.本年度はそのfMRIを開始するため,主に実験被験者に対する謝礼に関して使用金額が増えると見込まれる,また,学会参加費,旅費,本研究に関連する書籍の購入を計画している.
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