2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24700622
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
池田 拓人 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (90372672)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近代日本 / 学校柔道 / 段階的指導 / 形 / 安全性 / 大衆性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、嘉納治五郎が柔道を近代的な学校体育教材とすべく、初心者を対象とする学校柔道において、「形」による初心者指導法を整備・確立していった嘉納の工夫の過程をあらためて整理して考察を行った。その結果をまとめると、以下のように集約される。①「形」は乱取技の練習に入る前の導入教材(初心者指導法)として位置づけられ、学校柔道の指導順序として「形から乱取へ」という教習課程が整備された。②乱取を中心として競技的関心により普及を始めた柔道を学校体育(さらには国民体育)として広く行い得るものとするため、乱取を補完するものとして「生涯性」や「武術性」を持った形の重要性が増し、乱取から形への回帰が嘉納によって図られた。 そして、研究期間全体を通じて、戦前の学校柔道がどのような内容で、どのように教えられていたのか、その教授内容・方法について解明しえたと考える。すなわち、柔道の教授内容・方法は、初期の時点から、「安全性」と誰でもが行いうる「大衆性」が考慮され、いわゆる段階的指導(易→難)という観点に徹しながら教材として工夫がなされてきたものであった。本研究の成果を、今日の学校柔道の教授・学習に対して還元するなら、元来が身を護る技術の教習であることを教師と生徒がともに再認識して、安易に興味本位に走らず段階的指導に徹し、その上で技術特性の学習に本質を求めていくことが必要であるといえよう。また、本研究では、戦前の学校柔道において最も留意された段階的指導の方法として「形」が重要視され、教材として位置づいていたことを示した。すなわち、武道としての日本的な文化性を考えるならば、学校柔道の指導体系において失われた「形」の領域を復活させる必要性があると言えるだろう。
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Research Products
(1 results)