2013 Fiscal Year Research-status Report
運動部活動において指導者の成長をもたらす葛藤体験とその影響
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24700638
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小谷 克彦 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40598794)
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Keywords | 指導者 / 葛藤 / 質的研究 |
Research Abstract |
平成25年度は,まず,前年度に新たな課題としてあがった「葛藤の伴う価値観の変化の連関」についての検討を行った.前年度では,価値観の変化としてポジティブな変化とネガティブな変化があることを明らかにした.しかしながら,現場の指導者を観察しているとネガティブな変化からポジティブな変化へつながっていく体験をしていることがみられる,そのため,研究代表者がこれまでに行ってきた事例を再度見直し,ネガティブな変化からポジティブな変化へと変わる体験に焦点を当てて再度検討を行った.その結果,問題状況の解決を諦めるといったネガティブな変化を示した後,指導者は自身の指導や態度を振り返るようになり,諦観のような状態に至ることが明らかになった.この結果に関しては,「日本スポーツ心理学会第40回大会」にて発表した. また,上記の結果を得て,2つ目の下位検討課題である「成長をもたらす葛藤体験の心理過程」における分析観点の再検討を行い,諦観に至る過程に着目して検討することにした.現在,分析観点の焦点をさらに絞るために,これまでの事例を再度見直しながら,新たに2名の指導者を対象にインタビュー調査をしている.平成26年度は,この調査が終了次第,分析に取りかかる予定である. さらに,上記の調査と同時に3つ目の下位検討課題である「葛藤体験による成長が指導活動に及ぼす影響」についても調査を継続中である.また,この調査で使用する質的研究および投影法といった研究方法の精査を行う研究を行い,その結果を国際学会である「18th annual congress of the european college of sport science」にて発表し,多くの有意義な示唆を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では,「成長をもたらす葛藤体験の心理過程」と「葛藤体験による成長が指導活動に及ぼす影響」の2つの下位検討課題に取りかかり,分析がある程度進んでいる予定であった.しかし,前年度に新たな課題が挙がったために,その課題の検討が必要となったことで,下位検討課題2と3の取りかかりが遅くなってしまった.その点が「やや遅れている」と判断した理由である. しかしながら,新たな課題を明らかにすることができたことで,その後の分析観点を明確にすることができたことを考えるならば,研究全体としては順調に進展していると言える.また,質的研究および投影法などの研究方法の精査については,関連する研究の発表などを通して,研究方法および分析方法の見通しを明確にすることはできている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度では,これまでの取り組みで明らかになった分析観点(ネガティブな変化からポジティブな変化への変容,諦観に至る心理過程)を基に「成長をもたらす葛藤体験の心理過程」と「葛藤体験による成長が指導活動に及ぼす影響」の2つの下位検討課題の調査と分析を平行して行い,その成果を学会発表ならびに論文化し,成果としてまとめる作業を行う.学会発表に関しては,アメリカで行われる「Association for Applied Sport Psychology 29th Annual Conference」で発表を行う予定である.その他にも国内の学会においても研究成果を発表する予定である.また,上記の2課題の分析を行うにあたり,研究協力者と蜜に連絡を取り合い,分析の精度を高めるように努める予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の当初の予定では,「成長をもたらす葛藤体験の心理過程」および「葛藤体験による成長が指導活動に及ぼす影響」といった検討課題の調査が終了し,研究協力者に分析に関する助言を得ている予定であった.しかし,実際の取り組みでは,調査は継続中であり,面接対象者への謝金,分析・助言のための研究協力者への謝金,そしてそれらを実施するための旅費を使用することができなかった.以上の理由のために繰越金が生じた.平成25年度に実施できなかった取り組みは,平成26年度に行う予定であり,繰り越した研究費はそのために使用する予定である. 平成26年度の研究費の使用計画は以下の通りである.旅費に関しては,当初,平成26年度には外国旅費として使用する予定はなかったが,これまでの成果の確認を「Association for Applied Sport Psychology 29th Annual Conference」の学会発表で行うために,その費用として使用する.また,国内の学会にて研究成果の発表を行うためにも使用する.さらに,研究協力者から分析に関する助言を得るための旅費としても使用する.人件費に関しては,調査対象者への謝礼,研究協力者への謝礼に使用する.その他に関しては,情報収集および研究成果発表で参加する学会の参加費,さらには研究成果発表をする際の英文校閲費,論文印刷費として使用する予定である.最後に,物品に関しては,心理臨床関係の図書および質的研究関係の図書を購入し,情報収集を図る予定である.
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Research Products
(2 results)