2013 Fiscal Year Research-status Report
現場で生じたスポーツ動作に対する新たな試み:ビデオ映像を用いた他覚的運動解析
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24700671
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Research Institution | Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences |
Principal Investigator |
笹木 正悟 東京有明医療大学, 保健医療学部, 講師 (30563473)
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Keywords | ビデオ分析 / スポーツ現場 / 運動解析 / 方向変換 / パフォーマンス / サッカー |
Research Abstract |
平成25年度は大学生女子サッカー選手を対象として,実際の試合の中でどのような方向変換がパフォーマンスとして発揮されているのか分析を行った.関東女子サッカーリーグで撮影したビデオ映像からModel-Based Image-Matching法を用いて守備の方向変換動作を再構築し,女子サッカー選手のキネマティクスを導出した.平成24年度には男子サッカー選手の分析を終えているため,現場で生じたスポーツ動作の特徴を,性差とパフォーマンスという観点から検討した. 対敵局面における守備の方向変換動作の特徴として,女子選手は男子選手に比べて鉛直方向への重心変位が大きく,特に接地時の重心位置が高い傾向にあることが示された.その原因として,女子選手は男子選手に比べて接地時の股関節および膝関節の屈曲角度が小さいことが影響していると推察された.さらに,接地時の重心高と股関節屈曲角度との間には負の相関関係があり,股関節屈曲角度が小さい選手ほど重心位置は高くなる傾向がみられた.つまり,実際のスポーツ現場では類似動作であっても,男女でパフォーマンス発揮のための運動形態が異なるということが示唆された.過剰な重心変位はパフォーマンスの優劣にも影響を及ぼすことから,特に女子選手に対しては股関節に着目した動作指導やトレーニングを考案していくことが有用であると考えられた.平成24~25年度の研究成果から,スポーツ現場で生じた実践的な守備の方向変換について,男女別での基礎資料を提示することができた.以上の内容の一部は,18th Annual Congress of European College of Sport Sciences にて発表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は女子サッカー選手の方向変換について特徴や男女間に存在する性差を導出することができた.研究の結果,スポーツ現場で生じた動作において重心位置と股関節屈曲角度に特徴がみられたことは,これまで実験室的空間で行われてきたラボ研究を支持する成果であり,予め設定した仮説の一部を実証することができたといえる.しかしながら,女子選手においてパフォーマンスの優劣とキネマティクスがどのように関連しているのかということまでは明らかにすることができなかった.上記より,今年度における研究目的の達成度はやや遅れているものの,来年度以降に女子選手に対して着目すべき観点を明確にすることができ,順調に研究を進められると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,パフォーマンスに関する知見のみならず,傷害予防の観点からも現場で生じたスポーツ動作の分析を進めて行く予定である.女子選手に特徴的であった重心位置のコントロールや股関節のキネマティクスは,女性に頻発する膝前十字靭帯損傷に繋がる要因の1つとして考えられる.特にサッカー競技においては,男子選手に比べて女子選手の発生率が高く,練習に比べて試合での発生率が高いと報告されている.過去2年間の研究成果として,サッカーの試合現場における他覚的運動解析の手法は確立できた.今後は傷害予防という観点からも現場で生じたスポーツ動作をModel-Based Image-Matching法を駆使して分析し,パフォーマンス向上と傷害予防を組み合わせたトレーニングに活かすべきポイントを追求していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には年間20日のビデオ撮影を予定していたが,試合が行われる公式戦の開催日と実験実施日の折り合いが付かず,年間10数試合のビデオ撮影しか行えなかった.そのため,実施不可能であった公式戦分の助成金(人件費,実験機材運搬費,交通費)が次年度使用額として生じてしまった. 平成26年度は,これまでに収集したデータをより詳細に分析するために統計ソフトウェアの購入を計画している.また,収集・分析したデータを解釈するための研究図書や文献複写費として助成金を使用する.本研究の成果は国内外での学術集会で積極的に発表する予定であるため,成果発表の旅費に助成金を使用する.さらに,研究成果の公表として英語での学術論文作成に積極的に取り組むため,英文校閲のため助成金を使用する計画を立てている. 過年度までの助成金で研究に必要な備品は整っているため,追加のデータ収集では研究協力者への謝金や実験実施のための交通費,機材運搬費に助成金を充てていく計画をしている.
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Research Products
(7 results)