2012 Fiscal Year Research-status Report
総合型地域スポーツクラブが構築する関係システムと設立運営の成否に関する質的検討
Project/Area Number |
24700675
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Seisen University |
Principal Investigator |
炭谷 将史 聖泉大学, 人間学部, 准教授 (20410962)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 総合型地域スポーツクラブ / クラブマネジメント / スポーツ文化人類学 / エスノグラフィー / フィールドワーク / 関係性の構築 / ホーム機能 |
Research Abstract |
本研究は,総合型地域スポーツクラブ(以下『クラブ』)における関係性の構築に着目し,クラブの運営に対して有効な提言をすることがねらいである.今年度の研究活動は,複数のクラブでのフィールドワークを行い,参与観察やインタビュー等のデータに基づき分析を行った. データ分析の結果,クラブが地域住民と良好な関係性を構築するに際して,クラブハウスは「ホーム機能」を有すべきであるという仮説的知見が得られた.ここでのホーム機能とは,会員が「自宅(=ホーム)」のように感じられるようなクラブハウスという意味である.客人として持て成すのではなく,自分の居場所としてのクラブハウスを作る必要性が指摘できた. さらに,クラブにとって小学校は地域社会への玄関としての機能を有するという仮説的知見を提示した.小学校は地域の児童への教育をする社会装置であると同時に,保護者や祖父母に対して情報発信をする機能をも有する.その意味で,小学校はクラブが地域の人々と関係を構築する際の玄関としての機能を果たすと考えられる. クラブに関する先行研究は,ニーズ調査や設立による効果などに着目したものが多く,本研究のようにクラブをマネジメントする際に特に重視すべきポイントを実証的データに基づいて明らかにした研究は少ない.また,特徴の異なる地域(東京都と滋賀県)のクラブを対象としてフィールドワークを行い,両者に共通のポイントを明らかにしたという点においても意義があると考えられる. 文科省が総合型地域スポーツクラブの育成を強力に推進するようになってから10年以上が経過し,今後は量的増加だけでなく,質的向上が求められる中で,本研究が提案する仮説的知見は重要になると考えられる.今後も,現場の声を反映させたデータに基づくクラブ研究を推進しなければならない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筆者は,本研究の達成度を「概ね順調に進展している」と評価しており,現時点での達成度を40%と評価している.以下にその評価の理由を説明する. 本研究の主な目的は以下の3点である.1)先行研究の分析により設立・運営に際して,関係性を構築すべきチャンネルを明らかにする,2)現在の運営が活発的なクラブと停滞しているクラブの関係者にインタビュー調査を行う,3)クラブの設立・運営に対して,“関係性の構築”の観点から有効な提言を行う.以下に,これら3つのねらいに対する現時点での達成度を評価する. 1)本研究は,現在まで文献研究よりも現場でのフィールドワークから関係性を構築すべき対象やその構築方法を明らかにしており,このねらいが達成できているとは言い難い.今後,先行研究の知見を精査し,関係性を構築すべきチャンネルを分類するなどの作業が必要だと考えられる.2)活動が活発なクラブにおける関係性構築の在り方を明らかにするという点では,地域の異なる複数のクラブに話を聞くことができており,高く評価できる.一方,活動が停滞しているクラブに関しては1クラブしかインタビューをできておらず,データ分析も進んでいない.しかし,平成25年度に向けて,滋賀県内のクラブへの研究協力依頼の準備はできていることから,2)に関しては部分的な達成と評価できよう.3)年度内の研究データからできうる提言はできたと考えている.学内研究紀要への論文投稿および国際学会での発表を通じて,国内外の研究者との意見交換をするとともに,現場マネジャーへの提言により,活発な意見交換をすることができた.今後は研究をより深め,広く社会へ情報を発信し,より活発な議論を行わなければならない. 2)3)に関しては,単年度でできうる成果を出せていると考えているが,1)に関しては明らかに不十分であり,次年度に向けた課題となると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の研究推進方策は,特に以下の4点を重点的に行っていきたいと考えている. 1)先行研究の精査による「関係性を構築すべきチャンネル」の同定は,現在喫緊の課題だと考えている.先行研究の多くは,決して「関係性の構築」に焦点化しているわけではない.しかし,その中でも既存の組織や自治体等との関係性に着眼した研究もある.これらの研究をまとめ,関係構築先を分類することで,クラブが行うべきマネジメントが明らかになると考えられる. 2)調和SHC倶楽部でのフィールドワークの実施.このクラブは24年度に複数回にわたるフィールドワークを行ったクラブである.文科省からの委託事業を受託するなど活発な活動をしており,年間に延べ4万人の参加者を得ているクラブである.また,多くの種目のサークルや教室を運営し,スポーツ,健康,文化という多様な事業を展開している.そして,最も特徴的なのは多くの地域住民が運営者として自主的に関わっており,いわば理想的なクラブとも言えるクラブである.25年度以降もより深くフィールドに入り込み,クラブが構築している種々の関係性を明らかにしたいと考えている. 3)いまもう1つ不十分な点は,多様なクラブでのフィールドワークが実施できていないことである.郊外や過疎地域などで多くの会員を集めているクラブでのフィールドワークは限定的である.また,活動が停滞しているクラブへの参加もできていない.これらの特徴を有するクラブからの研究協力をなるべく早期に得て,フィールドワークを行いたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度研究経費では、多様なクラブでのフィールドワークを早期実施の予定である。 その費用の一部として、24年度より繰越分を充当する。
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Research Products
(2 results)