2012 Fiscal Year Research-status Report
投球におけるスナップ動作のメカニズム解明とその役割の同定
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24700692
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Research Institution | International Budo University |
Principal Investigator |
神事 努 国際武道大学, 体育学部, 助教 (20387616)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 野球 / ピッチング / 二重振り子 / エネルギーフロー |
Research Abstract |
24年度は実験によって投球動作の基礎データを採取し、投球動作の数理モデルを構築した。 まず、投球動作の基礎データの採取であるが、投球動作に熟練した野球投手11名を対象とした。光学式3次元自動動作分析装置VICON MX(Oxford Metrics Inc.)を使用し、反射マーカの画像信号の3次元座標を得た。記録には専用カメラ12台を使用し、サンプリング周波数は1000Hzに設定した。得られた3次元座標は,Singular spectrum analysisを用いて平滑化を行った.この手法は,遮断周波数をひとつに固定するのではなく、動作の周波数特性の時間変化を概観し、その変化に応じて遮断周波数を決定するものである。 次に、数理モデルの構築である。投球腕の上肢について、セグメントの重心に固定された運動座標系を定義した。リンクセグメントモデルにおける近位端の関節力、関節トルクは、遠位末端のセグメントからニュートン・オイラーの運動方程式を解くことにより算出した。なお、ボールリリース後は、ボールをリンクセグメントから取り除いた。セグメント質量、セグメント重心位置、セグメント重心まわりの慣性モーメントは、阿江ら(1996)の推定係数を用いて算出した。構築した数理モデルは、手首3、指(MP)3、ボール3自由度を持つ3セグメントの3次元の多重振子モデルを構築した。 24年度は、指を含めたリンクセグメントモデルを構築することができた。本研究は、手関節におけるスナップ動作の役割を同定するものであるが、指の運動を記述することでスナップ動作の役割をさらに明瞭にすることができるものと考えている。しかしながら、肘と肩のモデルに含めることができなかった。来年度はこれらを加えたモデルを構築し、スナップ動作の役割について明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書を提出した段階では、指のリンクをモデルに含めることは考えていなかった。しかし。手関節のスナップ動作の役割を明瞭にするためには、指の運動によるボール速度への貢献を明らかにする必要があると判断した。そして、24年度に指を含めたリンクセグメントモデルを構築した。 指の運動に取りかかったことで、肘、肩の運動をモデルに含めることが遅れている。しかしながら、全体的に大きな問題も無く、さらに発展的な研究内容で進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ボール3、指3(MP)、手首3、肘2、肩6の自由度を持つリンクセグメントを構築する。そして、エネルギーを末端の振子に伝達する仕組みを,修正したニュートン・オイラー法によって数理解析し、最適な加速原理を明らかにする。スナップ動作による最適な加速方法がわかることによって、それを阻害している(貢献していない)動作を顕在化させる。この顕在化したパラメータを、ボールの回転や、コントロール制御、障害予防への貢献を表す指標としてとらえ、スナップ動作の役割の同定する。 速度重視、回転重視、コントロール重視というように、投球の課題を被験者内で変えたときの動作や筋放電を計測し、数値解析の結果の妥当性を検証する。筋放電を計測する理由は、動作解析で算出される関節トルクは、関節運動軸まわりで発揮された正味の回転力のことであるため、主動筋と拮抗筋の活動の割合を示すものではないためである。よって、スナップ動作の役割を詳細に説明するには、筋放電を見る必要がある。動作の計測は、24年度と同様にモーションキャプチャーシステムを用いる。筋電図測定用のテレメータ式センサーを前腕部に3カ所貼付する。MVC(maximal voluntary contraction:最大随意筋力)を実験前に計測し、動作中の筋放電量を%MVCとして評価することで、発揮された筋力の程度を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は、解析ソフトウェアの互換性が確認できない新しいオペレーティングシステム(windows8)が発売された。このような理由から24年度は、パーソナルコンピュータを購入せず、25年度へ40万円を繰り越した。現在では互換性の問題は解消されているため、25年度では解析用パーソナルコンピュータを購入する。また、25年度においても、数値解析ソフトウェアMATLABを使用するため、その保守サービス更新料を計上する。 研究代表者が成果発表をするために、年1回の海外学会および年1回の国内学会に参加するために旅費を計上した。金額は過去の実績に準じた。
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