2013 Fiscal Year Annual Research Report
投球におけるスナップ動作のメカニズム解明とその役割の同定
Project/Area Number |
24700692
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Research Institution | International Budo University |
Principal Investigator |
神事 努 国際武道大学, 体育学部, 助教 (20387616)
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Keywords | 投球 / スナップ / エネルギー / マルチボディダイナミクス / ボールスピン |
Research Abstract |
投球におけるスナップ動作には、①ボールを加速させる、②ボールに回転を与える、③肘関節後方部の障害を予防する、④リリースのタイミングや投射方向をコントロールするという、4つの役割があることがこれまでの研究や指導書で述べられている。 指導書でみられる「スナップを効かせる」という言葉は、前腕の筋力発揮によって、手関節を掌屈させる動作を想像させる。しかしながら、本研究ではボールリリース直前において背屈方向の筋トルクの発現が認められた。そして、前腕セグメントと手セグメントのエネルギー変化率をみてみると、手関節回りの筋トルクは,手セグメントのエネルギーの生成にほとんど寄与しておらず、むしろ手セグメントのエネルギーを吸収していた。よって、手関節回りの筋トルクは、ボール速度増大へ貢献していないことが明らかになった。一方で、手セグメントのエネルギー増大は、求心加速度が支配的な内力の伝達によるものであった。肩関節の内旋等の近位の運動が、ボールのエネルギー増大には重要であることが明らかになった。 ボールリリース直前の背屈方向の筋トルクは、手関節の高速な動きを抑える作用がある。手関節の動きを抑えることは,外在指屈筋の筋長の変化を減少させ、指の制御を単純化させることにつながる。このことから、手関節の筋トルクには、ボールリリースのタイミングや投射方向の制御させる役割があることが推察された。 また、この背屈方向の筋トルクが最大になる時刻と、ボールに作用する合モーメントが最大になる時刻がほぼ一致していた。このことから、リリース直前にこの筋トルクを発現させることによって、ボールに加えている力の方向が変化し、そしてその力の作用線がボールの重心からずれることでボールに回転運動を生じさせている可能性が示唆された。このことから、手関節回りの筋トルクは、ボールに回転を与える役割も担っていると考えられる。
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