2012 Fiscal Year Research-status Report
電気力学的遅延による筋機能評価とコンディショニングへの応用
Project/Area Number |
24700696
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐々木 一茂 日本女子大学, 家政学部, 講師 (00451849)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 生理学 / 筋収縮 / 性差 / 電気刺激 |
Research Abstract |
本研究の目的は、骨格筋の電気力学的遅延(Electromechanical delay, EMD)という現象を利用した筋機能評価法の確立に向けて基礎データを蓄積することである。補助事業期間の初年度である平成24年度は「EMDの性差・筋間差の検討」を課題とした。詳細は以下の通りである。 1) 23~37歳の男女22名(男性11名、女性11名)を対象とした。被検筋は腓腹筋内側頭とし、筋収縮は皮膚表面電極を用いた電気刺激により誘発した。左足関節を中間位で筋力計に固定し、腓腹筋の長さ変化の影響を観察するため様々な膝関節角度において筋電気刺激を与えた(今回は分析が終了している膝完全伸展位および屈曲90度における結果についてのみ報告する)。皮膚表面に貼り付けた高感度加速度計により刺激から筋収縮が開始するまでの時間(Tec)を測定し、ロードセルにより刺激から足底屈トルクが発揮されるまでの時間(EMD)を測定した。また、これらの値の差から筋収縮力の伝達に要する時間(Tm)を算出した。 2) 膝完全伸展位におけるTec、Tm、EMDはそれぞれ7.3±1.5、6.2±2.4、13.5±2.2 ms(いずれも平均±標準偏差)であり、我々が以前に測定した上腕二頭筋の結果と比較するとTecは長いが、TmとEMDは同程度であった。また、いずれの指標についても性差は認められなかった。一方、膝屈曲90度におけるTec、Tm、EMDはそれぞれ7.3±1.3、8.0±2.5、15.4±2.6 msであり、いずれの指標についても性差は認められなかったが、TmとEMDは膝完全伸展位よりも有意に高値であった。 3) 以上の結果から、若齢者の腓腹筋においてEMDの性差は存在しないこと、膝屈曲位でのTmおよびEMDの増大は筋腱の弛み(slack)によるものであること、などが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属変更に伴い、新たな実験環境を構築する必要があったために若干の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き若齢者を対象として基礎データの蓄積を進める。現在、筋収縮および関節トルク発揮の検出感度を高めるほどわずかな体動などによるアーチファクトの影響が結果に混入してしまうという点がEMDを測定する上での大きな課題となっているため、これまでに得た実験データの再分析により頑健なアルゴリズムを確立するための十分な検討を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先述したように新たな実験環境の構築に時間を要したため、その次段階において必要となる測定機器購入費用、被検者謝金、および研究成果発表費用(学会出張費、論文掲載料)などが未使用となった。しかし、新たな実験環境の構築にはメリットもあり、より独占的かつ効率的に実験を進められるようになった。また、今年度の研究計画には時間的に余裕を見込んで設定している部分もあるため、これまでの執行の遅れについては十分に取り戻すことが可能である。
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