2012 Fiscal Year Research-status Report
チオレドキシンは筋収縮時に骨格筋から分泌される新規マイオカインである
Project/Area Number |
24700700
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
眞鍋 康子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (60467412)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マイオカイン / 筋収縮 / チオレドキシン |
Research Abstract |
本研究は、骨格筋から分泌されるホルモン様の蛋白質であるマイオカインの新規発見とその生理作用の解析を行うことを目的としている。申請者はこれまでに、収縮させた骨格筋細胞の培養上清に抗酸化活性分子であるチオレドキシンが増加することを見出した。これまでは予備的な検討であったので、平成24年度はチオレドキシンの分泌のトリガーとなる収縮刺激条件の設定とチオレドキシン遺伝子のクローニングを同時並行で行った。 マウス骨格筋由来C2C12細胞を10,30または60Vの電圧下で1Hz、3msecの電気刺激条件で1,3,6または24時間の電気的な収縮を与えた。それぞれの収縮刺激直後に培養上清を回収・濃縮し、チオレドキシン量をウェスタンブロッティング法によって検討した。その結果、収縮の有無にかかわらず培養上清にチオレドキシン分泌が確認できたが、予備実験の結果に反し、いずれの刺激時間においても収縮によるチオレドキシンの分泌増加は観察されなかった。 一方、骨格筋に発現するチオレドキシン遺伝子(cDNA)をPCR法を用いてマウス骨格筋からクローニングした。得られたチオレドキシンは、既知の配列と同じで、骨格筋特異的なサブタイプは存在しないことが明らかとなった。またチオレドキシン遺伝子にHAタグをつけたcDNAも作成し、骨格筋細胞にHAタグ付きの遺伝子をエレクトロポレーション法で過剰発現させた細胞を作成し、電気的な収縮刺激を与え、収縮の有無によるHAタグつきチオレドキシンの培養上清への分泌の確認を行った。その結果、過剰発現させた細胞の培養上清には収縮の有無にかかわらずHAタグ付きのチオレドキシンが確認されたが、収縮による分泌の増加は観察されなかった。以上から、現在の刺激条件下では収縮による分泌調節はみられず、恒常的に分泌されるマイオカインの1つである可能性が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成24年度内に (1)チオレドキシン遺伝子のクローニングし、骨格筋組織におけるスプライスバリアントの有無を確認し、さらに様々な遺伝子工学実験に使用するためのタグ付きのcDNAを作製すること、(2)チオレドキシンが骨格筋から収縮により調節されるメカニズムの解明に着手する予定であった。 (1)に関しては当初の計画通り、マウス骨格筋からチオレドキシンのクローニングを行い、骨格筋に発現しているチオレドキシンが既報の配列と同じである事を確認した。さらに、HAタグを付けたチオレドキシンcDNAを作製し、遺伝子工学のツールとしての使用が可能になった。(2)に関しては、予備実験で得られた、筋収縮によるチオレドキシン分泌の制御が再現できなかったことから、戦略を変更して、チオレドキシンが筋収縮による分泌の制御を受けるか否かについて再検証した。分泌は、骨格筋細胞の収縮刺激パラメータのうち、時間、電圧、等を変化させ検討した。その結果、チオレドキシンは筋収縮刺激がなくとも骨格筋から恒常的に分泌されていること、また筋細胞が壊れた指標となるLDH活性が上昇しているときに分泌されることを明らかにした。当初の計画と方向性が変わってきたが、分泌の様式や解明に向かっていることから、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は効率的な予算執行で研究が推進できたこと、予定している学会には次年度に発表するために、残金が生じた。 平成25年度はチオレドキシンの筋収縮による分泌調節について、より激しい刺激条件下での分泌を検討し、LDH活性上昇と分泌との関連性を明らかにする。また、近年、様々な細胞がプロテアーゼ等を分泌しているとの報告もある。これまで、細胞の収縮によって、チオレドキシンの分泌が観察されていない原因として、プロテーゼの同時分泌によりタンパク質が分解された可能性が考えられる。そこで、収縮後の培地中のプロテアーゼ活性の測定を行うとともに、プロテアーゼインヒビターを培地中に添加したのちに収縮刺激を加え、チオレドキシンの分泌が収縮により調節を受けるかについて検討する。いずれの刺激条件においても、収縮による分泌の調節が見られなかった場合には、チオレドキシンは収縮による調節はうけない、いわゆる恒常性に分泌されるマイオカインの一つであると判断できる。 既報ではチオレドキシンは繊維芽細胞から分泌されることが明らかとなっているが、チオレドキシンは分泌蛋白質に共通に存在しているシグナル配列を持たないタイプの蛋白質であり、その分泌メカニズムの詳細は明らかにされていない。骨格筋に関しても、チオレドキシンの分泌に関する報告やそのメカニズムの詳細はこれまでに知られていない。チオレドキシンの骨格筋からの分泌メカニズムを検討するため、シグナルペプチドを持たないタンパク質の分泌の形態の1つとして近年注目されるようになったエキソソームの可能性について検討を加える。 さらに、以前のプロテオーム解析ではチオレドキシンに関連するタンパク質も、骨格筋細胞の培養上清に存在していることから、これらの蛋白質についての分泌を、チオレドキシンの分泌の様式と比較する。以上の結果を平成25年度の終盤にむけてまとめ、論文にする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は生化学・分子生物学・細胞生理学などの消耗品を多く使用する実験が中心となるため、平成25年度の主な研究経費は消耗品に計上する。 平成25年度は、本研究の成果発表および情報収集の場として3学会(日本体力医学会、日本運動生理学会、日本農芸化学会)および1研究会(分子骨格筋代謝研究会)を予定しており、学会費および旅費を200千円計上する。 また、平成25年度の研究終了時には、本研究の成果を論文化するため、英文校閲に100千円計上する。
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[Presentation] anaxatriol Activates Insulin Signaling Pathway in Skeletal Muscle and Improves Insulin Resistance in KKAy Mice
Author(s)
Kitamura K, Takamura Y, Iwamoto T, Ikoma K, Nomura M, Sugioka H, Kobayashi T, Komada T, Manabe Y, Iwasaki H, Ohdera M, Fujii NL, Fushiki T
Organizer
72th Scientific Sessions American Diabetes Association
Place of Presentation
Orland
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