2014 Fiscal Year Research-status Report
運動後低血圧時の食事摂取が全身および局所の血行動態に及ぼす影響
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24700701
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
山岡 雅子(遠藤雅子) 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (30336911)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 運動後低血圧 / フルクトース / 循環調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の研究ではフルクトース含有飲料の摂取が急性的に血圧の上昇を引き起こすことが報告されており,慢性的なフルクトース摂取が高血圧を発症するリスクがあるという研究も報告されている。そこで,今年度は,1つ目の実験として,フルクトースのみの影響について検討するために,フルクトース摂取後の血圧上昇が,どのようなメカニズムによって引き起こされるのか,主に循環諸変量に着目して検討した。さらに,2つ目の実験として,運動後低血圧時のフルクトース摂取が全身および局所の血行動態に及ぼす影響について検討した。 フルクトース溶液を摂取すると,摂取後120分間,有意な血圧の上昇が認められた。この血圧上昇は,摂取後60分程度は総末梢血管コンダクタンス(TVC)の減少,その後は心拍数の上昇による心拍出量の増加が原因であった。フルクトース摂取後に減少したTVCには,脚と腕の血管コンダクタンス(VC)の低下が影響していた。一方,上腸間膜動脈(SMA)や胸部皮膚組織のVCは摂取後60分目以降,増加傾向にあった。フルクトース摂取は,腕や脚での血管収縮を生じたが,一方で,SMAで消化吸収のために血管拡張が生じ,TVCは60分目以降で安静水準に戻った。しかし,摂取後60分目以降に心拍出量が増加したことにより,結果として血圧の上昇は消失しなかった。一方,運動後にフルクトースを摂取しても,血圧,TVC,心拍出量および心拍数のいずれにおいても,安静時からの変化はほとんど認められなかった。フルクトースのみ摂取した条件と比較して運動後のフルクトース摂取条件では,運動肢である脚のVCの低下はなく,胸部皮膚組織のVCは持続的に上昇し,TVCの低下が生じなかったと考えられる。本研究の結果から,フルクトース摂取前に持久性運動を行うことで,フルクトース摂取による血圧上昇の程度が抑制される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は,育児休暇取得前のH24年度に計画した通り,休暇中に実施予定であった実験を実施することができた。実際に実験を行う前の申請書の研究計画には,H24・H26年度と実験を実施し,結果を検証していく過程で若干の変更等が必要となったが,現在までのところ,順調に実験は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は,申請書の研究計画では「運動後低血圧時に摂取する食事のエネルギー量の大小が全身および局所の血行動態に及ぼす影響について検討する」ことであったが,H24年度の実験結果より,この実験の必要性は低いと感じた。なぜなら,運動後低血圧時に食事(75gグルコース溶液)を摂取し,消化管の血管拡張が生じても,身体は直ちに骨格筋の血管を収縮させ,さらなる血圧低下を防ぐ調節を行うことが認められた。このH24年度の結果は,食事のエネルギー量が高くても,食後の血圧低下は生じないことを示しており,当初検討予定であった,運動後低血圧時に摂取する食事のエネルギー量が高いと食後の血圧低下が大きく,少ないと血圧低下が生じないという実験を実施する必要性がないと考えた。H24 およびH26年度の結果から,運動後低血圧時に摂取する糖質の種類によって,その後の血圧応答には違いがあることが示された。つまり,グルコース溶液と比較して,フルクトース溶液を摂取すると,運動後に血圧の上昇が認められた。この原因は,グルコース摂取では,小腸の血流量が安静時の約2倍程度に増加するのに対して,フルクトース摂取では,ほとんど増加しないという,消化管の血流応答の違いにあると考えた。このことから,グルコースはフルクトースと比較して,溶液が胃から十二指腸へ送り出される速度が速いため,小腸の血流増加が生じるのではないかと推測した。したがって,この仮説を確かめるために,H27年度は胃内容排出を超音波法を用いて非侵襲的に測定する技術の確立とグルコースとフルクトース溶液摂取時の胃内容排出について検討することを予定している。上述した研究計画を遂行するために,消耗品,被験者への謝金,実験補助者への謝金,研究成果発表のための学会参加への旅費等に研究費の使用を計画している。
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Causes of Carryover |
平成26年6月に育児休業から復帰し,復帰後は育児とのバランスで海外の学会へ参加することが難しく,学会参加用の旅費として申請していた旅費の繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の繰越金(316,440円)は,平成27年度に予定している実験の測定補助者の謝金(5,340円/回×3試行×10名)ならびにデータ解析補助者の謝金に使用し,残額は電極等の消耗品代に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)