2012 Fiscal Year Research-status Report
筋収縮様式の違いによる筋肥大のメカニズムに対する分子生物学的アプローチ
Project/Area Number |
24700703
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
柿木 亮 順天堂大学, 医学部, 助教 (70614931)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 筋肥大 / 筋収縮様式 / タンパク質合成 / レジスタンス運動 / 細胞内シグナル伝達 |
Research Abstract |
[目的]筋収縮様式の違いは発揮する張力やトレーニング効果の獲得に影響を及ぼすことが知られているが、それらの長期的なトレーニングが筋肥大に差異をもたらすメカニズムについては十分に解明されていない。細胞内シグナル伝達であるmammalian target of rapamycine (mTOR)シグナル伝達は、インスリンやGHなどのホルモンによるAktの活性化を受け、mTORの下流のS6K1および4E-BP1のリン酸化を介して、mRNAの翻訳、タンパク質合成を調節するため、筋肥大の一つの機序として考えられている。そこで本研究の目的は、筋収縮様式の違いが骨格筋mTORシグナル伝達経路に及ぼす影響を、ヒト骨格筋において明らかにすることであった。 [方法]健康な男性17名を被験者とした。等速性運動装置(Biodex system3)を用いて設定された角速度(伸張性;-90/秒、等尺性;0度/秒、短縮性;90度/秒のいずれか)にて片脚の膝伸展運動を10回×4セット行った。なお、等尺性収縮は、5秒×8回行った。膝伸展運動前、運動1および3時間後に局所麻酔下にて筋生検を行い、被験者の大腿外側部から筋バイオプシーサンプルを摘出した。摘出した筋サンプルをウェスタンブロット法を用いて、タンパク質のリン酸化を分析した。 [結果]全ての筋収縮でAktリン酸化は運動1時間後に増加しており、3時間後には運動前のレベルに戻っていた。4E-BP1リン酸化は、運動によって変化しなかったが、S6K1リン酸化は、伸張性収縮のみ1時間後で有意に増加し、3時間後では全ての収縮様式で有意に増加していた。これらのことは、伸張性収縮のみmTORシグナル伝達に異なる影響を与え、トレーニング効果獲得の差異を一部説明できる可能性がある。 今後は、mTORと関連があるシグナル伝達を分析し、収縮様式の差をさらに検討して行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究代表者の所属部署の異動に伴い、新たな場で実験環境を整えるのに時間を要したため、実験のスタートが遅れてしまった。そのことが原因となり、本年度の研究計画において少しの遅れが出ている。具体的には、実験のサンプリングは終えたが、生化学的な分析を必要とする項目について、一部の分析に留まっているのが現状である。しかし、現在のところ精度の高い実験データが得られており、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、筋収縮様式が骨格筋のmTORシグナル伝達に及ぼす影響を明らかにするために実験を行い、伸張性収縮が、等尺性および短縮性収縮とは異なる応答を示すことが明らかとなった。しかし、一部の分析を残しているので、早急に分析を完了し、平成24年度の研究を学会発表・論文掲載に向けて準備する。平成25年度については、mTORシグナル伝達に及ぼす影響が筋線維組成によって異なるのかを検証する予定である。したがって、速筋あるいは遅筋を多く有している被験者(例、陸上長距離選手VS短距離選手、トレーニング鍛錬者VS非鍛錬者)を対象に実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、本年度完了しなかった生化学的分析に係る実験消耗品費に一部充て、また次年度実施予定である実験に係る実験消耗品費および被験者謝礼金に多くの費用を充てる。また、成果の一部を海外学会にて発表するために、旅費等を計上している。
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