2012 Fiscal Year Research-status Report
有酸素運動によるオートファジー抑制メカニズムの解明
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24700705
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
鄭 冬梅 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤助教 (10420829)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | オートファジー / 運動 / 筋肉 / LC3 / S6 |
Research Abstract |
骨格筋の収縮はエネルギーとして多量のATPを必要とし、運動中の筋肉では糖質および脂質の代謝によってATPを獲得している。筋肉は糖新生に用いられる糖原性アミノ酸の供給源でもあり、絶食時の筋肉ではタンパク質分解が亢進する。オートファジーは栄養飢餓に適応するために真核生物で進化的に保存されている機構であり、絶食時には筋肉、肝臓などの組織で誘導され、アミノ酸供給に与ると考えられる。しかし,運動刺激によるオートファジーへの影響についてはまだよく解っていない。本研究では、運動が骨格筋のオートファジーにどのような影響を与えるのか、生化学的、形態的および遺伝子発現レベルで詳細に解析を行った。 24時間絶食したマウスではオートファジー形成の指標となるLC3の脂質化が亢進し、GFP-LC3 TGマウスの筋肉に出現する蛍光のLC3ドット(オートファジーの指標)が増加し、オートファジーが誘導された。さらにトレッドミル走行運動を負荷すると、① Soleus Muscle、Plantaris Muscle においてLC3の脂質化が減少し、② GFP-LC3 TGマウス筋肉の蛍光のドットが有意に減少した。③ 絶食で低下したインスリン、グルカゴン、TG、FFAおよびIGFは運動によって有意な変化を示さなかった。④ 血漿のアミノ酸のうち、Val、Leu と Ile の増加が認められた。⑤ 血漿および筋肉のグルタミンは両方とも運動後減少した。⑥、オートファジーの調節に関わるシグナルを調べたところ、mTOR下流のp70S6KおよびS6がリン酸化され、活性化が認められ、オートファジーが抑制されていることが示唆された。⑦ Ettan DIGE により運動後筋肉のタンパク質の発現には有意差が認められており、この発現変化と走行運動によるmTorシグナル再活性化(=オートファジー抑制)との関係を現在検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は絶食したマウスの筋肉ではオートファジー形成の指標となるLC3の脂質化が亢進し、GFP-LC3 TGマウスの筋肉に出現する蛍光のLC3ドット(オートファジーの指標)が増加することによりオートファジーが誘導されることを確認した。驚くべきことに、さらに、トレッドミルによる走行運動を負荷すると、mTOR シグナルの下流で働くP70K-S6KやS6はリン酸化され、mTORの再活性化による骨格筋オートファジーの抑制が起こることを発見した。絶食下の筋肉運動でなぜmTORが再活性化し、オートファジーが抑制されるかという疑問に対して、Ettan DIGE 法により、発現タンパクの変化を調べたところ、いくつかの筋タンパクが走行運動後有意に増加あるいは減少することを見いだした。その中には代謝系の鍵酵素が含まれる。これらの発現変化が運動によるmTORの再活性化とどのように結びつくかを明らかにすることがmTOR再活性化の分子機構解明に必須であると期待できる。一方、mTORの活性化は酸化ストレスによっても起こされることが知られている。活発な有酸素運動であるトレッドミル走行では、運動後酸化ストレスの上昇が出来すると予想されるので、筋タンパクのカルボニル化を指標とした酸化ストレス増加を調べることも現在進行中である。以上から本研究申請で提案したテーマの解明は研究期間内に達成される見込みが十分期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Ettan DIGE 法により、トレッドミル走行運動による筋肉タンパク質の発現差異を解析し、複数のタンパクについて 運動後発現の上昇もしくは減少を認めた。さらに、これらのタンパクをゲル内消化を経て、Liquid Chromatography/Mass Spectometory により同定を行う。予備実験で既に複数のタンパクが同定されており、これらのタンパクが実際に運動前後で増加あるいは減少しているかをさらにウェスタンブロットによって確証する。2)運動とmTORとの関係について類推されることとして、酸化ストレスとの関係が挙げられる。筋肉運動の結果酸化ストレスが亢進していれば、SoleusやPlantarisの筋タンパクがカルボニル化されると予想されるので、筋肉の総タンパクのカルボニル化が上昇しているかをまず調べ、次にどのようなタンパクがカルボニル化されるかを知ることで、Ettan DIGEで増減が見られたタンパクと酸化ストレスの関係、また、カルボニル化とmTOR再活性化との関係を明らかにできるかもしれない。3)筋肉運動や筋肉の質量変化を伴う病態では、筋肉に侵出したマクロファージやリンパ系の細胞由来あるいは筋細胞そのものが様々なサイトカイン系の生理活性物質を分泌することによって筋肉の機能に影響を及ぼすことが知られてきており、これら一連の生理活性物質はミオカインと呼ばれる。トレッドミル走行運動によってこれらのミオカインがmTOR再活性化のシグナルを伝達するという可能性についても検討したい。この目的で絶食および絶食後トレッドミル運動を負荷した二群のマウスから血漿を採取し、ミリプレックスによるサイトカイン・ミオカインの包括的定量分析を行う。 以上の3つの異なるアプローチによって、絶食+運動で再活性化されるmTORシグナル応答の変化の機構を明らかにすることができると確信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
血清サイトカインおよびホルモンの包括的定量解析に必要なMiliprexを用いた予備実験を行なうための試薬を購入する
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Interleukin-11 links oxidative stress and compensatory proliferation.2012
Author(s)
Nishina T, Komazawa-Sakon S, Yanaka S, Piao X, Zheng DM, Piao JH, Kojima Y, Yamashina S, Sano E, Putoczki T, Doi T, Ueno T, Ezaki J, Ushio H, Ernst M, Tsumoto K, Okumura K, Nakano H.
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Journal Title
Science signal
Volume: 5(207)
Pages: ra5
DOI
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[Journal Article] Autophagy is suppressed in soleus and plantaris muscles by endurance exercise.2012
Author(s)
Zheng DM, Bian Z, Furuya N, Takeda-Ezaki M, Oliva Trejo JA, Takahashi K, Hiraoka Y, Fujimura T, Komatsu M, Kominami E, Ueno T, Ezaki J.
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Journal Title
Spotology
Volume: 1
Pages: 189-192