2012 Fiscal Year Research-status Report
筋サテライト細胞の増殖・分化機構とその破綻によるサルコペニア発症の分子機序の解明
Project/Area Number |
24700706
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
黒坂 光寿 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (40553970)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サルコペニア / 筋サテライト細胞 / 細胞内情報伝達系 / 筋再生 |
Research Abstract |
サルコペニア発症の原因として、加齢に伴い骨格筋特異的な幹細胞である筋衛星(サテライト)細胞の数や増殖能の低下によって、筋再生が正常に行われなくなることが考えられている。本年度は、筋損傷・再生モデルを用いて、筋サテライト細胞の増殖・分化に関わるJAK2/STAT3シグナル経路の下流遺伝子のタンパク質発現量の動態を明らかにすることを目的とした。C57BL/6Cr雄性マウス(11週齢)の前脛骨筋に筋損傷を誘発するcardiotoxinもしくはコントロールとしてPBS (0D; n=4)を直接投与し、2(2D; n=5)、5(5D; n=4)、7(7D; n=5)、12日(12D; n=5)後にそれぞれマウスの前頸骨筋を摘出し、一般的な病理所見をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、筋サテライト細胞(Pax7)や筋再生マーカー(胎児期ミオシン重鎖)の局在を免疫組織化学染色によって評価した。また、JAK2/STAT3シグナル経路の下流遺伝子および筋分化マーカーであるMyogeninのタンパク質発現量をウェスタンブロッティング法によって評価した。Myogeninのタンパク質発現量は、2Dおよび5Dが0Dと比較して有意に増加した。筋サテライト細胞の増殖に必須であるCyclinD1タンパク質発現量は、2Dが0Dと比較して有意に増加した。また、細胞周期の抑制因子であるp27タンパク質発現量は、5Dおよび7Dが0Dと比較して有意に増加した。さらに、JAK2/STAT3シグナル経路を負に制御するSOCS3タンパク質発現量は、5Dおよび7Dが0Dと比較して有意に増加した。本研究では、筋損傷・再生過程におけるJAK2/STAT3シグナル経路の下流遺伝子のタンパク質発現量の動態およびそれら下流遺伝子が筋サテライト細胞の増殖や分化を厳密に制御している可能性があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の交付申請書に記載した「研究の目的」を達成することはできなかったが、次年度以降に行う予定であった実験を行うことができたため、本研究全体からみるとおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、筋損傷・再生過程において筋サテライト細胞の増殖や分化を調整しているJAK2/STAT3シグナル経路の活性化を増強する因子や相互に影響し合っているシグナル経路を初代培養技術や遺伝子工学的手法を用いて明らかにする。当初の計画では、JAK2/STAT3シグナル経路の下流遺伝子であり、JAK2/STAT3シグナル経路を負に制御するSOCS3タンパク質に着目し、高齢期骨格筋におけるその役割を明らかにする予定であったが、JAK2/STAT3シグナル経路の活性化を調節しうる新規な因子や相互に影響し合っているシグナル経路が明らかにされつつあるため、上述した目的とした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、当初の予定よりも試薬に関わる経費を抑えることができたため、平成25年度以降へと繰り越しを行った。次年度以降は、平成24年度から繰り越しを行った経費および次年度以降に請求する研究費を使用し、分子生物学的分析や遺伝子工学的分析に関する消耗品、また研究成果発表のために国内国外の学会に参加するための費用として使用する予定である。
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