2012 Fiscal Year Research-status Report

成長期の運動はエピジェネティックな遺伝子制御で成熟期のうつ様行動を予防するか否か

Research Project

Project/Area Number	24700714
Research Institution	Kyoritsu Women's Junior College
Principal Investigator	中島早苗共立女子短期大学, 文科, 講師 (60535459)
Project Period (FY)	2012-04-01 – 2014-03-31
Keywords	運動 / 成熟期 / 心理的ストレス
Research Abstract	本研究では、成長期の運動はエピジェネティックな遺伝子制御で成熟期のうつ様行動を予防できるか否かについて検討することである。当該年度は、成長期に定期的な運動を行ったマウスと全く運動を行わなかったマウスの成熟期に心理的ストレスを負荷して、ストレス由来のうつ様行動の発症が成長期の運動の有無に変化するか否かを行動実験等により検討することを目的とした。研究実施の方法は、離乳後の5週齢の雄57/BL6マウスを無作為に安静群、ストレス群、運動＋ストレス群の3群に分けて、運動＋ストレス群のみにトレッドミル速度15m/分で60分間のトレッドミル走を週3回のペースで4週間行わせた。運動後およそ3ヵ月間は通常飼育をして、成長期～成熟期にあたる時期（24～26週齢）に14日間のsocial defeat stressを負荷し、ストレス負荷終了後、うつ様行動を判定するため強制水泳試験とショ糖選択性試験、不安様行動を調べるためのオープンフィールド試験を行った。全ての試験を終了した翌日に、解剖して脳、肝臓、血漿を採取した。なお、脳の海馬における神経新生の差異を調べるためにストレス負荷開始前に5-bromo-2'-deoxyuridine (BrdU)を腹腔内投与して、解剖後、マイクロスライサーにより脳の切片を作成して抗BrdU抗体を用いた免疫組織染色を用いて分析した。研究の成果については、海馬におけるBrdU陽性細胞の数は各群において有意な差がみられず、神経新生には影響を及ぼさない結果となった。しかし、BDNFmRNA発現量や強制水泳試験およびオープンフィールド試験等の行動試験については、現在分析が進行中である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 当該年度の研究目的は、成長期に定期的に運動を行ったマウスと全く運動を行わなかったマウスに対し成熟期に心理的ストレスを負荷して、成長期の運動がもたらす抗うつ効果の有無について調べることであった。研究実施計画に基づき成長期にあたる時期に定期的な運動を行わせ、心理的ストレス負荷をし全ての行動テスト終了後、解剖して脳、肝臓、血漿等のサンプル採取まで終了している。現在は、うつ様行動を調べるための強制水泳試験やショ糖選択性試験等の行動テストを中心に映像記録による分析中である。
Strategy for Future Research Activity	5週齢の雄C57/BL6マウスを無作為に（１）安静、（２）運動トレーニング終了直後、（３）運動終了3ヶ月、（４）運動＋ストレスの5群に分ける。全てのマウスをトレッドミル走に慣らし、その後安静群以外の群のマウスはトレッドミル速度15m/分で60分間のトレッドミル走を週3回のペースで4週間行わせる。（２）群は運動トレーニング終了時点、（３）群は運動後およそ3ヶ月後に、（４）と（５）群はストレス負荷の終了後に脳を採取する。（１）の安静は運動負荷を行わずに脳を採取する。採取した脳は冷却下でブレインスライサーを用いて、厚さ1mmの切片に切り、実体顕微鏡下で各脳切片より海馬を採取し直ちに液体窒素で凍結し、その後分析まで－80度で凍結保存する。採取したサンプルからRNAを抽出し、これを基に逆転写酵素によりcDNAを作成し、これを利用してリアルタイムPCR法によりBDNFmRNAを定量する。また採取したサンプルの一部から核を抽出し、この核を電気泳動とウェスタンブロットにかけた後、メチル化ヒストン抗体およびアセチル化ヒストン抗体を用いてメチル化およびアセチル化ヒストン量を定量する。残りのサンプルからDNAを抽出してクロマチン免疫沈降法によりアセチル化ヒストンに結合したBDNFプロモーター領域のDNAのメチル化を測定する。
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding	C57/BL6マウス、抗ヒストンH3抗体、抗メチル化ヒストンH3抗体、抗アセチル化ヒストンH3抗体、抗ヒストンH4抗体、抗メチル化ヒストンH4抗体、抗アセチル化ヒストンH4抗体、RNeasy Mini Kit、BDNFプローブ、BDNFプライマー、DNAメチル化測定キット、PCR試薬、実験試薬、実験消耗品、ノートパソコン等を購入する予定。