2012 Fiscal Year Research-status Report
アロスタシス反応が媒介する心理-生物学的ストレス機序の構造調査
Project/Area Number |
24700729
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
加藤 有一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 助教 (90363689)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ストレス / 血圧 / 回復性 / 健康 |
Research Abstract |
本研究は,性格,及び,行動特性の個人差と身体健康との心理-生物学的な繋がりを,心理社会的ストレス時アロスタシス反応が機能的媒介変数として働くとするアロスタティック負荷モデルを基礎として,3年以上経過した後の縦断的行動疫学研究から明らかにすべく計画された(研究目的)。具体的には,CES-D質問紙によるうつ傾向やLOT-Rによる楽観性傾向が,精神的ストレス時血圧回復機能を媒介として身体健康へ影響するモデルの検証を行う予定である。 当該年度は,上記計画の1年目であり,35名(平均追跡年数3.5年,追跡調査時平均年齢24.4歳)の追跡調査を実施した。予備分析として,性格傾向,精神的ストレス時血圧回復機能,そして,身体健康度(BMI,収縮期および拡張期血圧,運動時間,喫煙歴から算出)の時間経過に従った安定性を確認した。また,性格特性と血圧回復機能,そして身体健康度の関連を,追跡年数と追跡時年齢を制御変数とした構造方程式モデル(SEM; structural equation model, 共分散構造分析)により分析した。 結果,運動時間と拡張期血圧回復性に再現性を確認できなかったが(各回帰係数(r)= -. 02, .10),他指標(CESD-D, LOT-R, BMI,収縮期および拡張期仰臥位血圧,運動時間,喫煙歴)は安定していた(各r = .36, .62, .78, .58, .61, .89, .40; いずれもp < .05)。また,SEMにより,うつ傾向得点と拡張期血圧回復機能(標準化パス係数= - .28),拡張期血圧回復機能と身体健康度(- .30)との間に,それぞれ関連がみられた(ただし,後者は有意傾向)。 サンプル数が少ないため,予備分析に留まったが,今後の調査を継続することで,おおむね仮説通りの結果が予測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,計35名(平均追跡年数3.5年,追跡調査時平均年齢24.4歳)の追跡調査を実施し,予備分析を行った。研究課題の1年目であるため,サンプル数は少ないものの,追跡年数と追跡時年齢を制御変数とした構造方程式モデル(SEM; structural equation model, 共分散構造分析)を行った結果は,おおむね仮説を支持していた。したがって,「おおむね順調に進展している」と自己評価した。 しかしながら,血圧調節における自律神経系機能を血圧変動の周波数分析により評価し,これを用いてストレス構造を調査した結果は仮説を支持しなかった。ただし,これに代わる指標として,神経性圧反射感度の簡易測定指標を用いることで計画を進めることが可能である。神経性圧反射感度の簡易測定法は,本課題代表者が2013年に特許出願をしているもので,横断研究で測定した指標からも算出することができる(特許項目参照)。これを用いた横断研究,および,縦断研究の予備分析により,拡張期血圧回復性との関連があるとの結果を得ている(横断研究:単回帰係数= .31,縦断研究における初回調査時と追跡時の変化値:単回帰係数= .39)。従って,本課題の計画通り,血圧を調整する自律神経系機能に関わるストレス構造を調査する点においては,おおむね順調に進展すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,研究計画に従い,当該年度に引き続き追跡調査を実施する予定である。 ただし,血圧変動の代替として,神経性圧反射感度を使用し,自律神経系機能までを含む生理的ストレス構造を明らかにする計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の通りに使用する計画である。 1.参加者謝金60名×3000=¥180,000,2.盲検者への謝金(臨時雇用)¥300,000,3.インピーダンス式心拍出量測定用テープ電極 ¥60,000,4.旅費:日本生理心理学会第31回大会(福井)シンポジウム話題提供者 ¥80,000,行動医学会(発表予定)¥80,000 なお,2012年度残予算は,上記使用計画品目の価格変動を補てんすることに使用する予定である。
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