2012 Fiscal Year Research-status Report
ストレス経験の記述が寮生活者の心の健康に及ぼす影響について
Project/Area Number |
24700734
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中井 定 東京理科大学, 基礎工学部, 講師 (50416179)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ストレス |
Research Abstract |
寮生活でストレスを感じている大学生20名を対象に、自分自身のストレス経験の記述(Writing)がストレス軽減に有効か検討を行った。自分自身のストレス経験を1日20分・連続3日間筆記するW群(10名)と、24時間の行動予定を同様に筆記する対照群(10名)に分けた。 【結果】LF/HF値(交感神経活動の指標):W群と対照群で筆記実施の前後の値にはそれぞれ統計的有意差がなかった。2)クロモグラニンA濃度(精神的ストレスの指標):W群と対照群(13.6 ± 5.7、10.1 ± 2.3)の筆記実施の前後の値は、対照群のみ統計的有意差がみられた(p < 0.05)。3)状態不安・特性不安:W群、対照群とも、今現在の不安状態を示す“状態不安”の値は、筆記実施の前後で両群内の値に統計的有意差がなかった。 一方、普段の不安状態を示す“特性不安”は、W群(60.1 ± 6.4、57.3 ± 7.5)と対照群の筆記実施の前後の値は、W群にのみ統計的有意差がみられる傾向があった(p < 0.1)。 【考察・まとめ】クロモグラニンA濃度は一過性の精神的ストレスに鋭敏に反応することから、Writingによるストレスの軽減効果は一過性の精神ストレスには観察されなかった。一方、普段の不安状態を示す“特性不安”の結果より、Writingによるストレス軽減効果は普段の不安状態を軽減する可能性が示唆された。 【意義・重要性】簡便に実行可能なストレス軽減の記述(Writing)が大学生の普段の不安状態を軽減し、ストレスを軽減効果がある可能性が本研究により示唆された。この普段の不安状態の軽減は“うつ病”の診断基準の一つの「2週間以上続く心の落ち込み」を防ぐうえでは非常に重要なことと考える。以上により、大学生にとってWritingが“うつ病”を防ぐ重要なツールとなる可能性を示唆したことは意義深いと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、寮生活初期になじめずストレスを感じている大学生20名を対象に、ストレス軽減に自分自身のストレス経験の記述(Writing)が有効かどうか生理・生化・心理学的に多角的な検討を行うことであった。 実際、ストレスが基準以上ある学生をスクリーニングし被験者20名とした、実験を行うことができた。 さらに当初目的とした、ストレスの生理学的指標として自律神経活動の測定、生化学的指標として唾液中のクロモグラニンA濃度とアミラーゼ活性の測定、心理学的指標として心理調査用紙(POMS、STAY)を用いた測定のすべてを行うことができた。 そして、実験結果として、Writingによるストレスの軽減効果は一過性の精神ストレスに対し観察されなかった。一方、普段の不安状態を示す特性不安の結果より、Writingによるストレス軽減効果は普段の不安状態を軽減する可能性が示唆された。すなわち、Writingによるストレス軽減効果は一過性のストレスに対するというよりも普段の不安状態を軽減し心の安定に寄与する可能性があることを示唆できた。 以上のように当初目的としていた実験が遂行できており、さらに実験結果の方向性も見出すことができたことから、実験は順調に進展していると考える。また、実験内容を学会で発表を行っていることからも実験は順調だと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果をもとに、Writing(自身のストレス経験を書く:1日20分×連続3日)でストレス軽減効果が示唆されたので、記述時間を1日20分を3日間、被験者20名追加し、24年度に得られた結果をさらに確かなものとしたいと考える。被験者のスクリーニング方法、実験手順、測定項目等はすべて平成24年度の研究と同様とする。 <被験者>寮生活の大学生20名、Writing群10名(自身のストレス経験を書く:1日20分×連続3日)、対照群10名(24時間の予定を書く:1日20分×連続3日) 次に記述間隔を延ばし(1回/週)ストレス軽減効果の有無を検討する。実験の間隔以外の、被験者のスクリーニング方法、実験手順、測定項目等はすべて平成24年度の実験と同様とする。 <被験者>寮生活の大学生40名、 Writing群20名(自身のストレス経験を書く:1日20分週1回×3回)、対照群20名(24時間の予定を書く:1日20分週1回×3回) 得られた結果をとりまとめ、ストレス経験の記述の寮生活者に対するストレス軽減効果を明らかにし、この方法の有効的なタイミング・頻度等を検討し、簡便で有効なストレス軽減手法の開発を目指す。そして、この成果は学会発表を行い、さらに学術論文として公表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|