2012 Fiscal Year Research-status Report
生体メカニズムに基づく生体適応反応と心理指標によるストレス統合評価に関する研究
Project/Area Number |
24700738
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aino University |
Principal Investigator |
林 拓世 藍野大学, 医療保健学部, 講師 (40582862)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ストレス / 脳・神経 / 情動 |
Research Abstract |
ストレスに起因した生体の状態異常は,症状の重篤性や多様性から大きな社会問題となっている.本研究では,「生体メカニズムに基づく生体適応反応と心理指標による統合的ストレス定量評価」を目的とする.具体的には,脳磁図,脳波,心電図,脈波により神経系,生体試料検査により内分泌系と免疫系,更に心理学的検査を用いて相互影響性を評価する.これにより,ストレス状態を神経活動の観点だけではなく,長期的な生体内調整に関与する内分泌系と免疫系の影響性から把握することで,健常時におけるストレスの精密評価が可能になると期待される. 当該年度においては,日常生活中から感受するストレス因子として情報負荷に特化した急性ストレスを伴う実験刺激の作成と,予備実験により測定条件の検討を進めた.情報負荷は安静状態,快状態,不快状態を対象に,視聴覚画像刺激を用いて実験系の構成を行った.その結果,情動刺激の影響性は,刺激後100msecと300msecに後頭部と側頭部で認められた.100msec時においては,側頭部は外側頭部で正の方向,上側頭部で負の方向の変化が認められ,いずれも不快刺激は安静刺激と比較して活動性が高値を示した.後頭部中部と右後頭部においては,100msec時では安静刺激が高値を示し,300msecでは活動性が不快刺激が高値を示した.また,活動性は低いものの,ほぼ同一の時間において中心部から頭頂部で変動が観察されており,視聴覚領域により入力された情報が高次処理を担う領域へ伝播している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年次においては,実験刺激として情報負荷と注意集中負荷の2種類の用意を予定していた.いずれの実験系においても,被験者からの入力や実験刺激装置からの同期信号を測定装置内に入力する必要性があり,当該年度で装置と制御系の準備,及び動作確認は完了している.情動負荷による実験系については,刺激内容の検討と実験構成まで準備が順調に進んでいる.一方,注意集中負荷による実験系については,当初予定していた実験装置では装置の構成が不十分であり,平成25年度予算を追加して物品を追加購入する必要性があることが判明した.そのため,当該年度で実験系の十分な検討を行うことができず実験の準備が遅れている状況となっている.また,生体試料測定においても2種類の実験刺激が揃った時点で検証する予定であったため,同様に準備が遅れている. 以上の問題があったことから,平成25年度から開始を予定していた情動負荷による予備実験とその検討について,産業技術総合研究所にて先行して進めている.しかしながら,本研究全体としては進行状況が遅延しているため,次年度で遅延を解消できるように研究の再計画を行い,順次段階を進める必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
早期の段階で当該年度で不足していた被験者の入力操作を検出する物品の購入を行い,準備の遅れている注意集中負荷による実験系の構築と検討を進める.同時に,ストレス状態に伴って変動する内分泌系,及び免疫系の生体試料測定と心理学的検査を行う.以上の準備が完了した段階で予備実験を重ね,結果に一定の傾向が確認された段階で本実験に移行する.予備実験の段階で,各環境因子の問題により脳磁図と脳波の同時計測が困難であることが判明した場合は,測定環境を再検討することで問題の解決を図る.問題の解決が困難な場合は,実験系を統一した状況で,産業技術総合研究所の施設と,本学に設置されている脳波計を含む生体計測装置を併用して実験を進める.本実験では,健常者を対象に情動負荷と注意集中負荷の急性ストレス状態下における生体信号と各種生体試料の同時測定を行う.測定されたデータは,順次,情動負荷と注意集中負荷に伴う経時的脳機能,及び自律神経機能の定量評価を行う.このとき,脳機能影響性については,刺激による短時間の影響性評価として事象関連電位,中長時間の影響性評価として周波数解析や回帰分析を利用する.また,脳磁図と脳波の活動性を複合的に解析することで,多面的な脳機能活動の影響性評価と,ストレスに対して感受性の高い,もしくは抵抗性を示す領域の特定を行う.更に各種生体試料と,心理学的因子である情動の感受性,注意集中力,気質,心身状態を解析に加えることで,ストレス状態の統合評価を行う.以上の解析から得られた結果については,必要に応じて各専門分野を持つ共同研究者との相談の上,得られた結果を取りまとめ,学会発表及び学術論文として成果の報告を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は初年度に購入予定であった物品の購入を進める.まずは,注意集中負荷の作業動作を行うための脳磁図測定環境に適応した入力装置であるトラックボード付きマウス「HHSC-TRK-2」と,その動作や接続に必要となる備品一式(光ファーバーケーブル,インターフェース,電源装置など)を購入する.これらの装置は実験系の構成及び評価に必要不可欠であるため,早期の段階で購入の手続きを行う.入力装置の導入には,当初の予定費用に加え追加費用を要することから,初年度の研究費の残額と次年度の研究費から購入計画の修正を行う.また,内分泌系及び免疫系の生体試料評価を行うため,専門業者への検査委託費として研究費の一部を使用する.使用する検体数については,実験の進行状況や結果の傾向により変動する可能性を考慮しつつ調整を行う.本研究により得られる測定データは膨大な量であり,また相互間の比較を含めて検討を行うには高速演算処理が可能なコンピュータが必要となるため,解析に十分な能力を有するコンピュータの導入を行う.脳磁図の解析プログラムは専用のソフトウェア上で動作するため,計測信号の高度演算処理が可能な解析ソフトウェア「MATLAB」の導入を行う.本実験においては相当数の被験者が必要となるため,実験協力者を募る際の謝金として使用する.得られた結果については各共同研究機関と打合せを行うことに加え,本研究の成果は国内・国外での研究成果発表や学術雑誌への投稿を予定しているため,旅費や印刷費として研究費の一部を使用する.
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