2014 Fiscal Year Research-status Report
生体メカニズムに基づく生体適応反応と心理指標によるストレス統合評価に関する研究
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24700738
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Research Institution | Aino University |
Principal Investigator |
林 拓世 藍野大学, 医療保健学部, 講師 (40582862)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ストレス / 脳・神経 / 情動 / 生体適応反応 / 脳磁図 / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスを起因とした心身への影響性は,症状の重篤性や多様性を伴うことから大きな社会問題となっている.本研究は,「生体メカニズムに基づく生体適応反応と心理指標による統合的ストレス定量評価」を目的として,当該年次は各種生体信号の計測と解析を進めた. 実験は安静,快,不快刺激の視聴覚画像刺激を付与する情動負荷課題と,ストループ課題による注意集中負荷課題を行い,脳波,脳磁図,脈波,心電図,唾液を測定した.脳神経活動の解析はθ波帯域(4-8Hz)とα波帯域(8-14Hz)を対象に,外的もしくは内的な刺激により誘発される時間同期成分を評価する事象関連同期(event-related synchronization: ERS)と事象関連脱同期(event-related desynchronization: ERD)を行った.さらに,信号の位相同期成分であるphase-locked activity,非同期成分であるnon-phase-locked activityの2種類を評価することで,活動電位が生じる要因の細分化を図った. 結果,情動負荷を与える前の状態と比較して,後頭領部において全ての情動的な刺激によりα波帯域におけるnon-phase-locked activityの有意な上昇が認められた.また,左中心-側頭部において快刺激では400-500ms,不快刺激では100-500msの間でθ波帯域におけるphase-locked activityの有意な上昇が認められた. 側頭部におけるθ波活動は情動や記憶処理を担う扁桃体や海馬に関連性が認められており,情動負荷直後におけるこれらの活動性は刺激内容に起因した情動記憶処理に関連して引き起こされたものと示唆される.高い情動興奮状態は心身への疾患に関連性が認められていることから,ストレス状態を評価する指標として重要な要因になると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験の構成段階で遅れが生じていた注意集中負荷課題について実験系の構築と検討が完了しており,先に準備の整っている情報負荷課題と共に順次測定を進めている段階にある.解析については,現在までに測定がなされている生理学的指標として主に脳磁図を中心に解析を進めており,経過報告として国内外における学会での発表と論文誌への投稿を進めている.また,他の生理学的指標についても解析を進めており,統計上で必要な解析数が確保され,且つ有意な結果が認められた時点で学会等で報告ができるように準備している. しかし,測定を進める中で脳磁図と脳波の同時計測が困難な場合があり,当初の予定通り実験系を統一した状況下で測定を個別に実施している.そのため,十分な頻度で実験を進められていないことから,課題の進行状況に遅れが生じている.生体試料測定においては,研究計画においては業者委託を予定しているが,申請者が利用できる施設においても測定が可能な状態にあるため,状況に応じていずれかの手法を選択できるように進めている.業務委託及び施設内測定のいずれにおいても,一定量の試料数が揃った時点で測定を進める必要があることと,施設内測定の場合は測定用試薬が必要となり,試薬の保存性の観からできる限り購入を直前に行うことが望ましいため,評価の進行状況に遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
学内もしくは学外より被験者を募り,情動負荷課題及び注意集中負荷課題の測定を進めていく.脳磁図と脳波の同時計測が困難な状況が予測された場合は,各生理学的信号を個別に計測をすることで検討を進める.測定された各種生理学的信号については順次解析を進め,これまでの結果と併せて評価及び検討を進める.心理学的検査の評価項目は複数の質問紙と複数の評価項目に分類されているため,各項目間における相関関係やストレス状態を示す指標を用いて被験者を2群に分類することで,被験者自身の評価だけではなくグループ間の特性としても比較を行う.さらに,心理学的検査の傾向と生理学的信号や生体試料の相互関連性について評価を進めることで,ストレス状態により引き起こされる状態や因子の抽出を試みる.注意集中負荷課題については被験者の課題に対する反応性を計測していることから,ストレス状態におけるパフォーマンスへの影響性を評価していく. 解析された各種生理学的信号や検査結果については,各専門分野における研究者と意見交換を行い結果の取りまとめを進め,一定水準の結果もしくは特徴的な傾向が認められた時点で学会への報告及び論文誌への投稿を進める.結果に疑問点が認められた際には,早期の段階で見直しを図り,必要であれば該当する指標について再解析を行う.併せて,これまでの研究報告の調査,学会等における関連報告の聴講,及び専門とする研究者への意見を伺うことで検討を重ね,最終的な結論としてまとめる.
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Causes of Carryover |
生体試料を測定するための試薬は,温度管理に厳密な保存条件が規定されている.そのため,長期的な保存下において環境維持面に問題が発生した場合,当試薬の計測への利用が不可能となる.加えて,当該製品は1つの製品で複数検体を同時に計測することを基本としていることから,可能な限り測定検体の数が揃った時点で購入することが望ましいと考えている.また,測定を業者委託する場合は施設内測定と比較してより多くの資金が必要となるため,次年度使用額が生じている. 論文投稿に対する準備も遅れが生じているため,執筆に関連する費用等の使用で当初の予定よりも少ない状況にある.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験課題の実施には年間契約制のソフトウェアを利用しているため,そのライセンス購入費として資金の一部を利用する.また,測定を進めることで生体試料の収集を行い,一定数の生体試料が揃った時点で,解析に必要な試薬の購入,もしくは業務委託の手続きを進めていく.解析により得られた結果については各種関連学会等で報告,併せて本課題に関連した情報収集をするため,参加費や旅費等で必要となる資金として使用することを計画している.
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