2012 Fiscal Year Research-status Report
個人特性を考慮したNIRS信号に基づく精神変動モデルの構築
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24700742
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
尾山 匡浩 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (80583749)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | NIRS / ストレス |
Research Abstract |
本研究の目的は、近赤外線分光法(Near-Infrared Spectroscopy:NIRS)を用いて計測した脳血流と人間の精神的変動との関係性を明らかにすることである。本年度は主に以下の項目について検討した。 1. NIRS信号計測および信号解析のための環境整備:NIRS信号の計測装置を新たに購入し、NIRS信号の計測や計測した信号の解析を行うためのハードウェア面での環境を整えた。これにより、簡単にNIRS信号の計測や解析が行えるようになった。 2. タスク実行時のNIRS信号の計測:精神的変動を誘発させるためのタスクとして、本年度は暗算を取り入れた。そのためディスプレイ場に暗算を実行するようなソフトを作成し、暗算実行中と平常時のNIRS信号を繰り返し測定した。測定は複数人について行い、平常時と暗算時とのNIRS信号を比較したところ、暗算時では血中ヘモグロビン濃度(oxy-Hb)の上昇が見られた。 3. 統計的解析手法を用いた信号の解析:最終的に精神的変動とNIRS信号との関連性を明らかにするために、NIRS信号に対して特徴抽出を行い、ストレス度合いの程度を判断する必要がある。そのための手法として、特徴抽出には統計的手法(主成分分析など)を、ストレス度合いの識別には機械学習手法(サポートベクターマシンなど)を使用する。現在、実装したそれぞれの手法を用いて、2.で得られたNIRS信号を解析中である。 来年度は、解析を進めとともに他のタスク実行時におけるNIRS信号を計測し、関係性を少しでも明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は次の項目を実施する予定であった。(1)NIRS信号計測装置に関する環境の整備・計測方法の習得、(2)ストレスを付加した状態でのNIRS信号の計測(具体的には、S1. クレペリンテスト(暗算)を長時間実施した際の計測、S2. 聴衆に対するプレゼンテーション直前時の計測)、(3)統計的手法を用いたNIRS信号の解析 これに対して、(1)の環境整備および(2)のS1の状況下におけるNIRS信号の計測は実施できた。しかしながら、S2の条件での計測は実施できていない。これは、実際に卒業研究などの発表前における計測を想定していたが、困難であったため今後はその他の条件について検討していく必要があるといえる。また、(3)に関しても統計的手法や識別器の実装までは完了しているが、それらを実際にNIRS信号に適用するところまでは至っていない。この理由として、プログラムのコーディングに時間がかかってしまったことが挙げられる。 以上のことから、実施予定項目からはやや遅れているため、解析および他条件での計測を早急に進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度からの課題を継続する形で、統計的手法を実際のNIRS信号に適用し、その結果を考察する必要がある。また、既に構築済みのサポートベクタマシンなどの分類器によってストレス度合いの推定を行う。この際の評価には、NIRS信号計測時に実施したアンケートを使用し、分類結果の考察を再度行う予定である。この結果から、ストレス度合いの推定が困難であると考えられた場合には特徴量の見直しや有益な特徴量の選択を行うことでストレス評価モデルを再構築する。また、統計的手法ではなく、新しくクラスタリングが可能なソフトコンピューティング手法(Self Organizing Map : SOM、ファジイC-meansなど)を導入することも考えている。これらを導入することで、意図するようなストレス評価モデルが構築できた場合には、新しい以下のシチュエーションで計測実験を行う。 S3:白色雑音・騒音などを聞かせた場合(聴覚からのストレス) この計測から得られたデータに対して、ストレス段階の推定を行うことが可能となれば、その他の多くのストレス要因に対しても適用できる可能性が高くなる。そのため、S3のようなストレス評価モデルを構築したストレッサーとは別のストレッサーを用いてストレス度合いが推定可能か検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費のほぼ9割はNIRS信号計測装置の購入に充てた。その他は研究打ち合わせや調査のための旅費として使用した。その残額を次年度の研究費に繰り越す予定である。これは、実験の被験者に対して当初謝金をお渡しする予定で申請額に記載していたが、今年度は無償で計測していただけたため、その分を次年度に繰り越している。 次年度の研究費は、今年度購入することのできなかった解析用の高性能ノートPCや計測データ記録用媒体など消耗品の購入、学会発表・調査および研究打ち合わせのための費用、その他実験協力者への謝金などに使用する予定である。
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