2015 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の適応的な運転行動に着目した事故予測モデルの開発・検証
Project/Area Number |
24700743
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
小菅 律 科学警察研究所, 交通科学部, 研究員 (00548042)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高齢運転者 / 縦断研究 / 運転回避 / 運転調整 / 事故関与 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢運転者の将来の事故関与に影響する要因としては、これまで主に視覚・感覚・運動といった機能的な能力の変化に注目がなされてきた。しかし、高齢者は、難しい運転状況(例;雨、夜間)を回避する(運転回避)といった適応的な運転行動を行っていることも指摘されている。本研究の目的は、機能的な能力面に加え、この高齢者の適応的な運転行動という行動面に着目し、将来の事故関与の可能性を予測する因子を、縦断的デザインを用いて明らかにすることであった。研究前の平成21年より、同一の高齢運転者サンプルに対し、質問紙調査・面接調査・機能的能力検査(有効視野検査・認知機能検査)を行い、データの収集を続けてきた。 最終年度となる本年度は、このサンプルの半数に対し、最終の追跡調査を実施した。また、投稿済であった2本の論文の修正と、新たに行った縦断データの分析結果に基づき2本の論文を執筆した。 研究全体では、まず、代表的な適応的な運転行動である運転回避を行うことにより、将来の事故関与のリスクが低下していることを明らかにした。これは多くの先行研究で扱われてきた問題であるが、有効性は明らかとなっていなかった。第二に、運転中止という自発的な運転行動の影響を考慮したうえで、将来の事故関与を予測する要因を明らかにした。これまで数多くの事故関与の要因に関する先行研究と異なり、本研究では運転中止の影響を考慮してより正確に事故要因を明らかにした。第三に、適応的な運転行動を促進し尚早な運転中止を防止する有効な対策に関する示唆を得た。 本研究により、適応的な運転行動の重要性が示された。高齢者の運転については、危険な運転者の判別のみならず、安全な運転の継続を支援することが重要である。本研究によって、高齢運転者を対象とする更新時講習のような集団的教育場面、運転適性相談のような個別的教育場面で安全な運転継続を促すために生かせる知見が得られた。
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Research Products
(5 results)