2012 Fiscal Year Research-status Report
恐怖記憶の消去に及ぼす一過性運動の効果:海馬内BDNFの役割
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24700750
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
劉 宇 帆 筑波大学, 体育系, 研究員 (90599680)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 応用動物 / 神経科学 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
平成24年では、一過性の低強度運動の恐怖記憶の消失効果を明らかにするために2つの実験を実施した。まず、実験1では、恐怖記憶の除去に最適な一過性の低強度運動モデルを確立した。運動プロトコルはSoyaら(Soya et al., BBRC, 2007)の先行研究をもとに、一過性の低強度運動(15 m/min)の効果を検討した。その結果、一過性の低強度運動後、海馬BDNFの急激な増加をウェスタンブロット法で見られた。一過性の低強度運動後1時間は海馬BDNFが急激な上昇するタイムポイントであることを確認した。実験2の恐怖記憶の消去では、1日目に実験動物に対してコンディションニングチャンバー内で恐怖条件付け実験を行う、文脈恐怖の訓練した。2日目に一過性の低強度運動群はトレッドミルで運動させた(30分)。一過性の低強度運動1時間後、電極刺激を取り除く以外は同一の実験条件で、実験動物をコンディショニングチャンバー内に15分間実施した。これは、文脈恐怖の訓練の後、正確に24時間及び48時間であった。動物の行動が止まり、静止している状態を“すくみ行動”と定義し、コンピューターソフトを用いて1分間間隔で“すくみ行動”を自動的に記録された(Wemmie et al., PNAS, 2004)。その結果、一過性の低強度運動により、3日目にすくみ行動の有意に減少を示した。これは、一過性の低強度運動が恐怖記憶の消失効果があることを示している。また、この減少は一過性の低強度運動1時間後、海馬BDNFの急激な増加の関与を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画によると、平成24年に、私はすでに一過性の低強度運動が恐怖記憶の消失を加速させることを確認した。加えて、私は、一過性の低強度運動後の異なる時点でBDNFの発現を確認し、海馬BDNFが一過性の低強度運動直後と1時間に増加したことを明らかにした。この結果は、海馬BDNFが一過性の低強度運動後、恐怖記憶の消去プロセスに深く関連していることを示唆し分子メカニズムを解析するための基盤になる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、一過性の低強度運動によるどのような分子機構が恐怖記憶の除去に関わるか、その分子基盤を明らかにする。そのために、同じ運動プロトコル、行動試験を用い、運動と恐怖記憶除去に関わる海馬BDNF、TrkB、CREBおよび関連シナプス分子などをRT-PCRとウェスタンブロット法で検討する。さらに、BDNFシグナル阻害剤(e.g. K252a)の注入は一過性の低強度運動による恐怖記憶の除去にBDNFの作用を阻害することにより廃止することができるかどうかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年の研究結果から平成25年度は高額な抗体を多く必要とすることが予想されたため、予算を平成25年度へ繰越した。実験計画に基づき、平成25年度は実験動物およびBDNFシグナルの阻害剤(e.g. K252a)やBDNF・TrkB・CREB・シナプスと関連する分子の一次抗体、二次抗体、タンパク質/RNA抽出キットなど、分子機構を解析するための試薬を適宜購入する。繰越予算はその中でも高額なシナプス関連分子の抗体を複数購入にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)